B. C. 的背景
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/07 16:45 UTC 版)
「膜電位感受性色素」の記事における「B. C. 的背景」の解説
生物学、医学における光学的観察あるいは光学的測定の歴史は古いが、神経系の研究へもかなり早くから導入されている。・1848年にはすでに F. Ehrenbergが神経線維に2つの異なった屈折率があることを見いだしたことを Francis O. Schmitt (1939) が Physiological Reviews誌に発表した総説に引用している。・さらに、1865年には、Klebsが神経線維のミエリン鞘の偏光性についての論文を発表している。・この線に沿った研究は、やや間を置いて、1920〜30年代に F. O. Schmittらによってとりあげられた (Schmitt, 1939)。これらの研究は、複屈折や偏光性を測定することによって、神経線維やミエリン鞘の微細構造を調べようとしたものである (Schmitt, 1939 ; Schmitt and Bear, 1939)。しかしながら、1940年代の後半になると、この方向での研究は途切れてしまっている。これは、電子顕微鏡の開発によって微細構造についての研究法がそちらへ移ったためと思われる。一方、19世紀の終わりごろには、神経活動と関係づけたもう1つの方向での光学的研究がみられる。・Hodge (1892)は、スズメ、ハト、ツバメの生体染色を施した脊髄神経節を連続的に電気刺激して、刺激前後の神経細胞、細胞核、液胞の形や、さらにそれらの色素 (osmic acid) による染まり具合を光学顕微鏡で詳細に観察し比較している。・同じ時期に、Mann (1894) もまた同様の実験をウサギ、イヌの交感神経節を用いて行い、神経活動に伴って細胞や核の大きさが増大すること、またそれらと Methyl blue や Eosinなどとの親和性が変化することを観察している。これらの研究で注目すべきことは、実験を行うにあたって、彼らが、ニューロン活動の根底にあるエネルギー消費が、何らかの形で神経細胞の形態あるいは神経組織の性状の変化に反映されるはずであるという考えを念頭においていることである。・さらに生体染色法を用いて、神経活動に伴う神経組織の色素による染まり具合を観察している(Lillie, 1969)。その後、今世紀に入って、神経活動とより密接に関連づけた光学的測定がなされている。・その先駆的役割を果たしたのは、F. O. Schmittと O. H. Schmitt (1940) である。彼らは、偏光顕微鏡に光電子増倍管を取り付けて、ヤリイカ (Loligo pealei) の巨大神経線維の電気的興奮に伴う複屈折の変化の測定を初めて試みたが、光学的変化を記録することはできなかった。これは、彼らが用いた当時の装置では感度が不足していたことに起因するもので、彼らも論文の末尾で、この失敗は用いられた測定装値の感度が充分でなかったためであり、もっと性能のよい装置を用いれば記録できるはずであると言及している。・また、もしカニの歩行脚神経を用いておれば、彼らの感度でも光学的変化は記録できたという可能性については、L. B. Cohen (1973) によって指摘されている。このSchmittらの研究に続いて神経活動の光学的研究は1950年前後に活発に行われている。その中心となったのは、D. K. Hill, R. D. Keynes, J. M. Tobiasである。・まず、HillとKeynes (1949) は、不成功に終わったSchmittらの試みをうける形で、カニ (shore crab : Carcinus maenus) の歩行脚神経幹を電気刺激して引き起こされる神経線維の不透明度 (opacity) の変化の測定を行った。彼らの実験では、タングステンランプから神経線維を垂直方向に白色光で照射し、スリットを通して、神経線維からの透過光 (transmitted light) をフォトセルで直接detectしている。これが、現在われわれが用いている光学測定の原型といえる。彼らはこの実験で、1秒当たり50回の電気刺激を5秒から10秒間続け、それに伴う神経線維のopacityの増大を記録することに成功した。神経刺激に伴う光学的変化の記録としては、これがおそらく最初のものである。・さらに、Hill (1950) は測定装置に改良を加え、カニ (Maia squinado) の歩行脚神経線維を電気刺激 (50~100/secで約5~10秒) することによって、透過光強度(光散乱:light scattering)が増大することを見いだした。彼は、細胞外液の浸透圧を変えたときの神経線維の透過光の変化も調べ、その結果と照らし合わせて、測定された光散乱の変化は神経線維の直径が大きくなったことによることを示唆した。・Hill (1950)は同様の実験を、イカ (Sepia officialis) の単一巨大神経線維でも行い、この場合も、電気刺激によって光散乱が増加することを見いだし、これも神経線維の直径が大きくなったこと(容積の増大)に起因することを示唆した。そして、直径220μmの神経線維を連続して1万回の電気刺激をおこなったとき引き起こされる直径の変化は、約 0.1 であると見積もっている。・この結果は、その後、Cohenら (1971) の実験によっても支持され、さらに、Terakawa (1988) の、ひと工夫された方法での追試でも確かめられている。・J. M. Tobiasら (Tobias, 1952 ; Bryant and Tobias, 1952 ; Tobias and Nelson, 1959) も神経活動に伴う光散乱変化を測定している。Tobias (1952) は刺激電極の陽極側では光散乱強度は小さくなり、陰極側では大きくなることを示し、それは陽極側での神経線維の収縮、陰極側での膨潤に対応することを示している。なお、この時期における光学的測定についてはTobias (1959) による総括的なレビューにまとめられている。ところが、1950年代の中ごろから1960年代の終わりごろまで、このような光学的測定はほとんど中断された状態になっている。これは、LingとGerard (1949) に始まる微小電極法の導入により、これを用いた電気生理学的研究が神経生理学の中心となったためであろう。
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