2本で終わった経緯
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/11 09:05 UTC 版)
「山口組三代目 (映画)」の記事における「2本で終わった経緯」の解説
全国の映画館主からも続編の要望も出て、根っからの活動屋で、儲けのためなら手段を選ばない主義ともいわれた岡田ゆえ、続編の製作は当たり前と思われたが、「商売になるなら何でもやる東映の体質が問題」「儲かれば何をしてもいいという荒っぽさ」、などとマスコミからの猛烈な批判が浴びせられた。さらに新聞記者を大勢集めた前で「『ゴッドファーザー』がアメリカで出来て、日本でなぜ田岡一雄伝をやってはいけないんだ。説明してくれ」などと反論したことにより、さらに批判が増した。布村建元東映教育映画部長は、「岡田茂は真偽不詳虚実混交の風評之有りの人ですが、山口組三代目に片思い的に好かれてしまったように、修羅場になると生き生きする人物」と評している。 続編の製作は岡田社長の判断に委ねることになったが、当時の岡田は若手財界人のやり手として売り込み中でもあり、対応は行き詰った。また『山口組三代目』では芸能界の実名人物は広沢虎造どまりであったが、2部以降になれば美空ひばりがいやでも登場することになる。かとう哲也の再逮捕でイメージが傷ついたひばりが続編を許すはずがなく、一旦は続編をあきらめた。それまで当局はヤクザ映画に対して鷹揚で、昔は京都の太秦交番にピストルを借りに行ったこともあるくらいで、映画製作に関与するようなことはなかったが『山口組三代目』が大ヒットして、タイトルを見てびっくりした警察が、東映の作る実録ヤクザ映画に対してにわかに目を光らせるようになったといわれる。さらに、次回作制作阻止を狙った警察は、プロデューサーを務めていた田岡満を22件もの容疑で逮捕するが、岡田は続編制作を決定。全国防犯協会連合会から、第一部を製作する際、岡田が「山口組の映画は二度と作らない」と約束したと強行に反撥されたため、岡田も折れ、本来、『山口組三代目・襲名篇』と予定したタイトルは、タイトルから"山口組"を外し、『三代目襲名』と自主規制し、翌1974年8月に公開した。 この後、シリーズ三作目にあたる『山口組三代目・激突篇』も、岡田社長が田岡満が社長を務めるジャパン・トレードに原作料、製作協力の名目で約1億円を支払い映画化権を手に入れ、1975年の正月映画第一弾として製作を予定していた。原作料の相場は当時多くても500万円といわれ、1億円という金額は常識外と業界からも疑問視された。これに飯干晃一が「この映画にイチャモンはつけません、という協力に仕方もある」と余計な解説を加えた。警察側は「東映が山口組に金を払って宣伝映画を作っているのではないか」と、これを"金脈"と睨んだ。岡田は「田岡満氏は田岡組長の長男とはいえ組員ではない。ジャパン・トレード社はれっきとした芸能プロ。契約はれっきとした商行為で暴力団の資金源とはもってのほか」と反撥したが、同年11月26日に兵庫県警捜査四課が警視庁応援のもとに東映本社、同関西支社、俊藤浩滋宅、田岡組長宅、ジャパン・トレード、同東京事務所の6か所を一斉捜査し、関係書類等多数を押収した。実際に金を払っていたのは前売券を組に売りつけられていたヤクザの方だと判明すると、今度は商品法違反、東映と暴力団の癒着、資金源に利用されたなど、何かと嫌がらせを続けた。昔はヤクザが映画館に顔パスで入ってくるため、それをさせないために前売券を組に売ったもので、ヤクザの方が金を払った証拠が出て警察も八方塞がりになった。 田岡を「任侠の徒」として描いた『三代目襲名』に対し、山口組への対策を強化し始めていた警察は快く思わず、世間の良識派を挑発するような刺激的なヤクザ映画を連発する東映を「いつか潰してやる」と息巻いていた。警察とすれば潰滅を目標に掲げる山口組の映画が作られたことで面子をなくし、それが2本も作られたことで更に腹が立ち躍起になったといわれる。警察はこれを契機に岡田と田岡の関係を明らかにして岡田を引きずり下ろすことが狙いだった。岡田がムシャクシャした挙句、便所で浮かんだのが1975年に映画化された『県警対組織暴力』という映画のタイトル。山口組のシリーズは当初三部作の予定で、3作目は『山口組三代目・激突篇』として1975年正月の興行を予定していた。PTAから先に反対の声が上がり、警察も動いた。東証一部上場会社が、暴力団との関係で手入れを受けるというのは、あまり例がなく。岡田はこれでは社員にしめしがつかず、また世間を騒がせた責任をとるとして製作を断念、結果的に二部作になった。既に脚本もキャスティングも決まり、ポスターも刷り上がっていたため、製作中止で1億円以上の損害が出た。これは実録路線の実質上の中断を意味し、岡田にとっても大きな黒星となった。同時に岡田は「今後は山口組シリーズは一切作らない」と公表したが、「ヤクザ映画と手を切るのか」という質問に対しては「来年も東映の主流にする。でないとメシが食えませんからね」と話した。代わりに同じ高倉健主演で製作公開されたのが実録ではない任侠映画『日本任侠道 激突篇』である。
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