長編の公募新人賞
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公募の新人賞では、1955年に創設された江戸川乱歩賞(日本推理作家協会主催、講談社・フジテレビ後援)が最も歴史が長い。江戸川乱歩賞は第3回(1957年)より長編推理小説を公募する新人賞となっており、多くの作家を生みだしている。ほかに著名な推理作家の名を冠した長編の公募新人賞に横溝正史ミステリ大賞(角川書店主催、1981年 - )、鮎川哲也賞(東京創元社主催、1990年 - )がある。3賞とも長編の推理小説を募集するものだが、鮎川哲也賞は特に本格推理小説を志す新人のための賞である。なお、3賞とも初期には江戸川乱歩、横溝正史、鮎川哲也本人が最終選考に参加していた。 ほかに、長編推理小説を募集する新人賞に、日本ミステリー文学大賞新人賞(光文文化財団主催、刊行は光文社、1998年 - )、ばらのまち福山ミステリー文学新人賞(広島県福山市主催、刊行は講談社・光文社・原書房、2008年 - )がある。日本ミステリー文学大賞新人賞は、推理小説のアンソロジーの編集や推理小説に関するさまざまな企画を行う推理小説専門図書館「ミステリー文学資料館」を運営する光文文化財団が主催する賞である。一方、ばらのまち福山ミステリー文学新人賞は、推理作家島田荘司の出身地である広島県福山市が主催する賞で、最終選考は島田荘司が1人で行う。後者は、応募要項に本格推理小説を募集すると明記している点が特徴である。 以上の5つ(乱歩賞、横溝賞、鮎川賞、日本ミステリー文学大賞新人賞、ばらのまち福山ミステリー文学新人賞)は、最終選考委員を推理作家が務めるものである。一方、『このミステリーがすごい!』大賞(宝島社、NECビッグローブ株式会社、メモリーテック株式会社主催、2002年 - )は、評論家が最終選考委員を務める。この賞は、1988年から推理小説のランキング本『このミステリーがすごい!』を刊行している宝島社が創設した公募の新人賞で、賞金は現行の推理小説の公募新人賞では最も高額の1200万円である。 また、以上の6つの賞以外に、2010年には早川書房と早川記念文学振興財団が主催するアガサ・クリスティー賞も新設された。 メフィスト賞(1996年 - )は講談社の文芸誌『メフィスト』で募集される賞で、長編に限らず短編でも場合によっては選考対象になる(蘇部健一)。募集要項では「広義のエンタメ作品」としているが、推理小説やミステリ要素が強い作品の受賞が多い。選考は下読みを介さずに編集者だけで行う。募集・選考は随時行われるため、1年間に複数の作品が刊行される。講談社では、講談社BOX新人賞、講談社Birthなど同じく編集者が直接選考する賞を創設しており、この2つでも推理小説が選ばれることがあるが、その割合はメフィストよりもさらに低い。 上に挙げた乱歩賞、横溝賞、鮎川賞以外にも、日本の推理作家の名を冠した公募の新人賞として、島田荘司推理小説賞(2009年 - )があるが、これは日本ではなく台湾で実施されているもので、中国語で書かれた長編推理小説を対象とする公募新人賞である。受賞作は日本語に翻訳され、文藝春秋から刊行される。また、日本文学振興会が主催する松本清張賞(1994年 - 、刊行は文藝春秋)は、推理小説から歴史小説・時代小説まで幅広いジャンルで活躍した作家松本清張の業績を記念したもので、以前は推理小説または歴史・時代小説を公募する新人賞だったが、第11回(2004年)からはジャンルを問わずエンターテインメント作品を募集する賞になっている(松本清張賞は、第5回(1998年)までは短編の賞)。 長編の公募新人賞賞名開始年主催(出版社)最終選考委員正賞副賞(賞金)江戸川乱歩賞 1955年 日本推理作家協会(講談社) 今野敏、京極夏彦、桐野夏生、石田衣良、有栖川有栖 江戸川乱歩像 1000万円 横溝正史ミステリ&ホラー大賞 1981年 角川書店 綾辻行人、有栖川有栖、黒川博行、辻村深月、道尾秀介 金田一耕助像 500万円 鮎川哲也賞 1990年 東京創元社 笠井潔、北村薫、島田荘司、山田正紀 コナン・ドイル像 印税全額 日本ミステリー文学大賞新人賞 1998年 光文文化財団(光文社) 綾辻行人、石田衣良、近藤史恵、藤田宜永 シエラザード像 500万円 『このミステリーがすごい!』大賞 2002年 宝島社など計3社 大森望、香山二三郎、茶木則雄、吉野仁 - 1200万円 ばらのまち福山ミステリー文学新人賞 2008年 広島県福山市(講談社・光文社・原書房) 島田荘司 トロフィー 印税全額 アガサ・クリスティー賞 2011年 早川書房、早川記念文学振興財団 東直己、北上次郎、鴻巣友季子、ハヤカワミステリマガジン編集長 100万円 新潮ミステリー大賞 2014年 新潮社 伊坂幸太郎、貴志祐介、道尾秀介 300万円 松本清張賞(推理小説に限らない) 1994年 日本文学振興会(文藝春秋) 石田衣良、角田光代、北村薫、桜庭一樹、葉室麟 時計 500万円 メフィスト賞(推理小説に限らない) 1996年 講談社文芸図書第三出版部 講談社文芸図書第三出版部編集部員 シャーロック・ホームズ像 印税全額 (年は、募集を開始した年ではなく、最初に結果発表・授賞が行われた年。選考委員や正賞・副賞は最新のもの。締切や枚数、結果発表の時期など詳細は各ページを参照のこと。) 江戸川乱歩賞の過去の結果は、選評・受賞のことばも含めすべて日本推理作家協会公式サイトで見ることができる(最新の選評は『小説現代』7月号に掲載される)。横溝賞の選評は『野性時代』4月号、鮎川賞の選評は『ミステリーズ!』10月刊行号、日本ミステリー文学大賞新人賞の選評は『小説宝石』12月号、松本清張賞の選評は『オール讀物』6月号、メフィスト賞の選評は『メフィスト』に毎号掲載される(応募作全て)。『このミステリーがすごい!』大賞は公式サイトで過去の選評と受賞者コメントを、福山ミステリー文学新人賞は公式サイトで最新回の選評を公開している。
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