複雑な知的生命体にとっての意義
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/02 06:57 UTC 版)
「ハビタブルゾーン」の記事における「複雑な知的生命体にとっての意義」の解説
レアアース仮説では複雑で知的な生命体は非常に稀であり、ハビタブルゾーンはそれにおいて重要な要素の一つであると主張している。2004年にWardとBrownleeが出版した書籍によると、ハビタブルゾーンと天体の表面にある液体の水は生命体を維持するための主要な要素だけでなく、多細胞生物の出現と進化に必要な二次的条件を支えるための要素でもあるとされている。居住性をもたらすには、地質学(プレートテクトニクスの維持における液体の水の役割)と生化学(大気の酸素化に必要な光合成を支える放射エネルギーの役割)の両方の二次的要素が必要となる。しかし一方で、2002年にイアン・スチュアートとJack Cohenが記した著書「Evolving the Alien」では知的生命体はハビタブルゾーンの外側でも出現し得ると主張している。ハビタブルゾーン外での知的生命体は代わりの生化学どころか、核反応からでさえ、地下環境で進化する可能性がある。 地球上では、いくつかの複雑な多細胞生物(または真核生物)がハビタブルゾーン外の状態を乗り切れる可能性があることが確認されている。地熱エネルギーは古代の迂回的な生態系を維持し、Riftia pachyptila(シボグリヌム科)のような複雑で大型の生命体の存在を支えている。ハビタブルゾーンの外側にある、エウロパやエンケラドゥスのような固体の地殻の下で加熱された海でも同様の環境になっているかもしれない。真核生物を含む多数の微生物が擬似条件下、および地球低軌道上で研究実験が行われている。例としてオニクマムシは、水の沸点を超えるような極端に高い温度下や冷たい真空の宇宙空間でも耐えることができる。さらに、チズゴケやXanthoria elegans(チャシブゴケ菌綱)といった植物は、表面に液体の水が存在するには不十分なほど薄い大気圧下や、放射エネルギーがほとんどの植物が光合成に必要とする量よりもはるかに少ない環境下でも生存することが判明している。菌類のCryomyces antarcticusやDothideomycetes(共にクロイボタケ綱)もまた、火星のような環境下でも生存して繁殖することができる。 ヒトを含む動物認識(英語版)を持つことが知られている種は大量のエネルギーを必要とし、大気中に豊富に含まれている酸素と放射エネルギーから合成された多くの化学エネルギーの利用可能性を含む特定の条件下に適応している。人類が他の惑星を植民化するのであれば、ハビタブルゾーン内にある真のアースアナログは地球に最も自然環境が近い生息地をもたらす惑星となる可能性が高い。この概念は1964年のStephen H. Doleによる研究で基礎づけられている。惑星に適切な温度、重力、大気圧、そして水があれば、宇宙服やスペースコロニーの必要性が排除され、地球上の複雑な生命体がその惑星で繁栄する可能性がある。 ハビタブルゾーン内にある惑星は、地球以外の場所で知的生命体を探している研究者にとっては依然として最も重要な関心事となっている。この銀河系内にある知的文明の数を推定するために時々使用されるドレイクの方程式では、各恒星のハビタブルゾーンを公転する惑星質量天体の平均数を示すneという因子が含まれている。この値が低いとレアアース仮説を支持するものになり、知的生命体が宇宙では珍しいものであると仮定される。逆に値が高いとニコラウス・コペルニクスが唱えたコペルニクスの原理(平凡の原理)の根拠を示すものとなる。1971年のフランク・ドレイクとバーナード・オリバーによるNASAの報告では、ヒドロキシ基と水の成分である水素のスペクトルにおける吸収線に基づいた「水の穴(Water hole)」を地球外生命体とのコミュニケーション手段に明白かつ適切なバンドとして提案し、それ以来この提案は地球外知的生命体の探求に関わる天文学者たちによって広く採用されてきた。Jill TarterやMargaret Turnbullなどによれば、ハビタブルゾーン候補は「狭い滝壺」を探すための最優先目標であるとしている。 ハビタブルゾーンは複雑な生命体の生息地として最も可能性が高い領域と考えられているので、アクティブSETI(METI)での取り組みは惑星を持つ可能性が高い惑星系に焦点を当てている。例えば2001年に送信された電波信号ティーンエイジメッセージ(Teen Age Message)と2003年に送信されたコズミックコール2(Cosmic Call 2)は、木星規模の惑星を3つ持ち、ハビタブルゾーン内に地球型惑星を持つ可能性があるおおぐま座47番星系に向かって発信された。ティーンエイジメッセージはハビタブルゾーン内に巨大ガス惑星を持つかに座55番星にも発信された。2008年に送信されたメッセージフロムアース(A Message From Earth)および2009年に送信されたハローフロムアース(Hello From Earth)は、ハビタブルゾーン内にcとd、そして未確認のgの3つの惑星を持つグリーゼ581系に発信された。
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