絵画史的意義とは? わかりやすく解説

絵画史的意義

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/04 00:20 UTC 版)

フィンセント・ファン・ゴッホ」の記事における「絵画史的意義」の解説

西洋美術史」も参照 ファン・ゴッホは、ゴーギャンセザンヌ後期)、オディロン・ルドンとともにポスト印象派後期印象派)に位置付けられている。ポスト印象派メンバーは、多かれ少なかれ印象派美学影響の下に育った画家たちではあるが、その芸術観はむしろ反印象派というべきものであったルノワールモネといった印象派は、太陽の光受けて微妙なニュアンス富んだ多彩な輝きを示す自然を、忠実にキャンバスの上再現することを目指した。そのために絵具できるだけ混ぜない明るい色のまま使い小さな筆触タッチ)でキャンバスの上並置する「筆触分割」という手法編み出し伝統的な遠近法明暗法、肉付法否定した点で、アカデミズム絵画から敵視されたが、広い意味でギュスターヴ・クールベ以来写実主義突き詰めようとするものであった。これに対しポスト印象派画家たちは、印象派余りに感覚主義的な世界飽きたらず、別の秩序探求したといえるゴーギャンルドン代表される象徴主義は、絵画とは単に眼に見え世界そのまま再現するだけではなく、眼に見えない世界内面世界、魂の領域にまで探求の眼を向けるところに本質的な役割があると考えたファン・ゴッホも、ゴーギャンルドンと同様、人間の心が単に外界の姿を映し出す白紙タブラ・ラーサ)ではないことを明確に意識していた。色彩によって画家主観表出することを絵画課題ととらえる点では、ドラクロワロマン主義継承するものであったファン・ゴッホは、晩年3年間において、赤や緑や黄色といった強烈な色彩の持つ表現力発見し、それを、悲しみ恐れ喜び絶望などの情念人間の心の深淵表現するものとして用いた。彼自身テオの手紙で、「自分眼の前にあるものを正確に写し取ろうとするよりも、僕は自分自身強く表現するために色彩もっと自由に使う。」と宣言し例え友人画家の肖像画を描く際にも、自分彼に対して持っている敬意愛情を絵に込めたいと思い、まずは対象忠実に描くが、その後自由な色彩になってブロンドの髪を誇張してオレンジクロム色や淡いレモン色にし、背景実際平凡なではなく一番強烈な青で無限を描くと述べている。別の手紙でも、二つ補色結婚によって二人の恋人たちの愛を表現すること。……星によって希望表現すること。夕日輝きによって人間情熱表現すること。それは表面的な写実ではないが、それこそ真に実在するものではないだろうか。」と書いている。 こうした姿勢は既に20世紀初頭の表現主義予告するものであった1890年代ファン・ゴッホゴーギャンセザンヌといったポスト印象派画家一般社会からは顧みられていなかったが、若い画家たち感受性強く訴えかける力を持ちナビ派はじめとする彼ら世紀末芸術画家は、印象派感覚主義反発して「魂の神秘」の追求向かった。その流れ20世紀初頭のドイツオーストリアにおいて感情激し表現鋭敏な社会的意識特徴とするドイツ表現主義受け継がれ表現主義画家たちは、ファン・ゴッホや、フェルディナント・ホドラーエドヴァルド・ムンクなどの世紀末芸術画家傾倒したエミール・ノルデエルンスト・ルートヴィヒ・キルヒナー多くドイツ・オーストリア画家が、ファン・ゴッホ色彩筆触構図を採り入れた作品残しており、エゴン・シーレリヒャルト・ゲルストルなど、ファン・ゴッホ作品だけでなくその苦難人生自分重ね合わせる画家もいた。同様の表現主義傾向同時期のフランスではフォーヴィスムとして現れたが、その形成に特に重要な役割果たしたのが、色彩形態によって内面情念表現しようとしたファン・ゴッホであった1901年ファン・ゴッホ回顧展訪れたモーリス・ド・ヴラマンクは、後に、「自分はこの日、父親よりもファン・ゴッホ大切に思った。」という有名な言葉残しており、伝統への反抗精神あふれた彼が公然と影響認めたのはファン・ゴッホだけであった彼の絵には、ファン・ゴッホ渦巻き思わせるような同心円状の粗いタッチや、炎のような大胆な描線による激し色彩表現生まれた。さらに、印象派写実主義疑問投げかけたファン・ゴッホゴーギャンらは、色彩形態それ自体表現力注目した点で、後の抽象絵画にもつながる要素持っていたといえる

※この「絵画史的意義」の解説は、「フィンセント・ファン・ゴッホ」の解説の一部です。
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