紙本著色牧馬図とは? わかりやすく解説

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紙本著色牧馬図〈長谷川信春筆/六曲屏風〉

主名称: 紙本著色牧馬図〈長谷川信春筆/六曲屏風
指定番号 2014
枝番 0
指定年月日 2005.06.09(平成17.06.09)
国宝重文区分 重要文化財
部門種別 絵画
ト書
員数 一双
時代区分 室町安土桃山
年代
検索年代
解説文:  本図は、両隻の下隅料紙一部削り取った痕がある。現状では款記印章見られないが、『増訂古画備考』に、当初袋形信春印が捺されていたと記されており、この損傷が、同印の捺されていた箇所考えられるまた、作風からも、長谷川等伯とうはく】(一五三九一六一〇)が信春しんしゅん】と称した若年期制作として、広く認められている。
 制作時期としては、まず、袋形信春使用時期下限現在のところ不明である。また、従来は、能登から京都移住した時期として、本法寺日堯上人像が制作され元亀三年一五七二)ころと考えられてきたが、近年能登京都往還時期設定し京都への定住従来より下る天正期(一五七三~九二)とする考え方提出されている。
 本図場合は、片ぼかしの土坡【どは】と流水主体とする未整理景観描写景物画面充満させるのような特異な構図感覚樹木の皴、形態把握等に見る漢画技法未熟さ、両隻の端に金泥源氏雲表されていることなどから、かなり早期制作である可能性が高いであろう画題の上で、放牧された馬を広い山野に追いかけ自在に馬を操る武士の勇壮さをとらえることに関心を示すこと、武士の着衣華美なものでないことからも、京都より地方武家嗜好に応じていると想像され京都画壇本格的にふれる以前の作と推定される
 さりながら、右隻左端の二柳樹三宝院柳の間四季図を彷彿とさせ、左隻右寄り草花描写や、草木色彩感覚は、智積院障壁画秋草にも通じるなど、後の代表作共通する要素見受けられ等伯の著彩画独特の特質は、若年期から体得されていたものがあることを示唆する点で、本図は貴重である。
 図様構成には、先述のようにいまだ生硬なものがあるが、細部描写注目すると、大画面ありながら細密画のような繊細な描写優れており、殊に細い先や先端を描く線質は細く鋭く伸びやかであることも注目される
 本図独自の特色は、草木表現のほかにも躍動的な人物描写認められる信春能登時代遺品絵仏師性格強く認められるのであり、本図のような風俗画は他に知られていない。馬を自在に操って野馬捕らえようとする武士たちは、皆生生きした視線対象注ぎ、力を込めた腕や足の筋肉盛り上がり肥痩抑揚富んだ線描的確に表し、馬をめぐって腕を競う武士の活気満ちた風俗表現成立している。
 近世初期には多様な風俗屏風成立した。その中にあっても、厩図、調馬図、犬追物図とも異なる、本図のような武家風俗図は類例がない。画壇主導した狩野派による風俗画の最も早い作例としては、狩野永徳による洛中洛外図永禄八年一五六五)の作とする有力な説があり、狩野秀頼筆の観楓図もこれと前後する時期の作と思われる制作元亀以前遡る可能性がある本図また、近世初期盛行する風俗画先駆ける作例として、絵画史的意義大きい。



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