経済社会開発
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/10 02:47 UTC 版)
世界の人々の経済的・社会的福祉の実現は、国連の主要な目的の一つである。そのための開発の必要性、特に先進工業国と開発途上国との格差を埋めることの重要性は、1961年に始まった数次の国連開発の十年を機に強く表明されるようになった。1995年にコペンハーゲンで行われた世界社会開発サミットで、国際社会が貧困、失業、社会の崩壊といった問題と戦う必要性が訴えられたのをはじめとして、1990年代には多くの開発関係の世界会議が開催された。2000年9月の特別総会(ミレニアム・サミット)で採択された国連ミレニアム宣言は、開発の問題に重点を置き、具体的な開発目標を設定した。同宣言と、1990年代の国際会議やサミットで採択された国際開発目標とを統合し、2015年までに達成すべき目標としてまとめたのがミレニアム開発目標 (MDGs) である。すなわち、(1)極度の貧困と飢餓を撲滅すること、(2)普遍的な初等教育を達成すること、(3)ジェンダーの平等を推進し、女性の地位向上を図ること、(4)乳幼児死亡率を下げること、(5)妊産婦の健康を改善すること、(6)HIV/エイズ、マラリア、その他の病気と戦うこと、(7)環境の持続可能性を確保すること、(8)開発のためのグローバル・パートナーシップを推進することが目標とされた。その後、これらの目標は2015年9月の総会で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の中核であり、2030年までに達成すべき目標として新たに設定された持続可能な開発目標 (SDGs) に継承されている。 国連機関の経済社会活動を調整する主要な機関は経済社会理事会であり、その諮問機関として、専門家からなる開発政策委員会が置かれている。事務局では、経済社会局が経済社会政策の分析・調整等を行っている。国連開発計画 (UNDP) は、開発途上国の開発を担当する機関であり、2005年に国連システムが開発援助活動に費やした金額は137億ドルであった。 経済開発 貧困の削減については、特に後発開発途上国 (LDC) 50か国への経済的支援が重要な課題である。1970年、総会は政府開発援助 (ODA) の目標をGNP(後にGNI)の0.7%と定めたが、1990年代にODAは急減し、2002年メキシコのモンテレイで開かれた国連開発資金国際会議でこれを増加することが合意された。2006年、開発援助委員会 (DAC) 加盟国におけるODA額は、GNI合計額の0.3%に当たる1039億ドルとなっている。国連機関の中では、国連開発計画 (UNDP) がミレニアム開発目標の達成のため各国への政策助言等を行っているほか、世界銀行グループ、国際通貨基金 (IMF)、国連貿易開発会議 (UNCTAD) といった諸機関が、政策アドバイス、技術提供、資金提供(融資等)を行っている。 社会開発 国連は健康、教育、家族計画、住宅、衛生に関する各国政府の努力を支援してきた。飢餓との戦いでは国連食糧農業機関 (FAO) や世界食糧計画 (WFP)、教育に関しては国連教育科学文化機関(ユネスコ)、健康に関しては国連児童基金(ユニセフ)、国際連合人口基金 (UNFPA)、世界保健機関 (WHO) など、多くの機関がこの分野に関わっている。 持続可能な開発 国連は開発によってもたらされる環境問題にも取り組んでいる。1972年にストックホルムで開かれた国連人間環境会議の終了後、国連環境計画 (UNEP) が設立された。UNEPは、世界の環境状況を評価し、1983年、総会は世界環境開発委員会を設置し、同委員会は1987年の報告の中で持続可能な開発という概念を提唱した。それを踏まえた総会の要請により、1992年、リオデジャネイロで環境と開発に関する国際連合会議(地球サミット)が開かれ、地球規模の行動計画としてアジェンダ21が採択された。それを受けて、総会は、同年、持続可能な開発委員会を設置した。2002年には、アジェンダの実施状況を点検するためヨハネスブルクで持続可能な開発に関する世界首脳会議が開かれ、持続可能な開発に関するヨハネスブルク宣言が採択された。国連機関の中では、UNEPのほか、世界気象機関 (WMO)、両機関が設立した気候変動に関する政府間パネル (IPCC) などが、地球温暖化、砂漠化、生物多様性、酸性雨、有害廃棄物・化学物質、海洋汚染、水資源、エネルギー、放射能など、数々の環境問題に携わっている。
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