第1回の翻訳とは? わかりやすく解説

第1回の翻訳 (旧訳)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/07 10:27 UTC 版)

谷崎潤一郎訳源氏物語」の記事における「第1回の翻訳 (旧訳)」の解説

谷崎潤一郎による最初の翻訳は、1935年昭和10年9月に『源氏物語湖月抄』の本文元にして着手された。山田孝雄校閲を受けながら進められ1939年昭和14年1月から1941年昭和16年7月にかけて中央公論社から『潤一郎訳源氏物語』全26巻として刊行された。これは今日旧訳」「26巻本」などと呼ばれている。この現代語訳は、「源氏物語現代語訳」としては1912年明治45年)に出た最初与謝野晶子訳より約20年遅く完成公開されたものであるが、このときの与謝野訳はあくまで抄訳であり、省略のない完全な『源氏物語』現代語訳としては3番目(現存するものとしては2番目)の与謝野訳とほぼ同時期に公開されたものであり、公開当時与謝野訳よりもさまざまな形話題になったものであり、さまざまな論評なされている。 この翻訳出版時には潤一郎訳源氏物語」とされ、広告宣伝などでは「谷崎源氏」の呼称使用されている。なお、初期にはタイトルとして「昭和口訳源氏物語」や「今様源氏物語」 あるいは「近体源氏物語」や「昭和本源物語」(1936年昭和11年12月11日付け谷崎潤一郎山田孝雄宛書簡による) といったものも候補として挙げられていた。 この翻訳作成するに際して差し押さえを受けるほどに借金生活が恒常化していた谷崎は、中央公論社と「中央公論社予想される印税のうち2万程度生活費として先払いする代わりに谷崎側は源氏物語翻訳中他の仕事一切入れない」という約束をしている。実際に谷崎翻訳終了するまでの間は1936年昭和11年1月および同年7月改造社から刊行され雑誌改造』の第18巻第1号および第7号掲載された『猫と庄造と二人のをんな』を唯一の例外として、『源氏物語』翻訳作業専念している。これについては後述する。 1934年昭和9年2月16日付け中央公論社社長嶋中雄作宛て書簡において、谷崎は「五千円保証していただけるならまあやってみても宜しゅう御座います」としている。このような交渉結果1934年昭和9年)末ごろに谷崎訳業決意する谷崎は、この翻訳を行うにあたって山田孝雄校閲受けている。谷崎当初から翻訳にあたってしかるべき専門家校閲を受けることを願っており、その要望を受ける形で校閲者として山田孝雄という人物選定し、また山田校閲を受けるにあたって仲介中央公論社が行っている。1934年昭和9年12月4日中央公論社編集者雨宮庸蔵山田校閲依頼の手紙を出し1934年昭和9年12月6日山田雨宮承諾返事出している。1935年昭和10年5月谷崎山田校閲を受けることを正式に依頼するため、雨宮とともに仙台向かっている。1935年昭和10年9月谷崎による執筆開始され1936年昭和11年3月には山田による校閲が始まる。 執筆自体過程以下の通りである。谷崎最初に書き下ろした第1稿をもとに中央公論社ゲラ2部作成し1部谷崎に、1部山田に送る。山田送られゲラ徹底的な校閲を施す。山田校閲施したゲラ谷崎元に送られる谷崎山田から送られゲラをもとに徹底的な書き直し行って第2稿作成する。この第2稿第1稿同様に中央公論社ゲラ2部作成し1部谷崎に、1部山田に送る。これに対して山田校閲施したゲラ元に谷崎再度書き直し行って第3稿作成し、これが最終稿となった。なお、谷崎最初に書き下ろした第1稿は、現在も中央公論社金庫中に厳重に保管されているとされるが、谷崎の手元に置かれていた山田校閲施したゲラは、1945年昭和20年8月6日空襲による谷崎神戸自宅焼失ともなってすべて失われてしまったとされる(このことについて、現在富山市立図書館山田孝雄文庫所蔵されている、1945年昭和20年9月3日付け谷崎山田宛てた手紙において、山田校閲施し谷崎の手元に置かれていたゲラ全て焼失してしまったことを謝罪している)。1938年昭和13年9月9日谷崎第1稿3391脱稿する。この原稿完成は『東京朝日新聞』の(文芸ではなく社会面において報じられるこのようにして完成した潤一郎訳源氏物語』は1939年昭和14年1月刊行開始された。 谷崎自身作業にあたって当時最もよく使われ代表的な注釈書である吉澤義則の『対校源氏物語新釈』のほか、抄訳ではあるものの先行する現代日本語訳である与謝野晶子最初の翻訳アーサー・ウェイリー英訳といったさまざまな資料手許集めており、必要に応じて参照していたと見られるこのようにして完成した本は菊判和装本各巻平均160ページからなるもので、当時としてはかなり大きめである五号活字使用し、さらに活字4分の1ずつを下へずらす四分アキという方法字間広くとり、文字が一層大きく見えて読みやすくなるという贅沢な印刷行っていた。このため後に改訳行った際には、この旧訳書籍余白部分校閲者が意見書き込んだり、谷崎新たな訳文書き込んだりという方法をとることが出来た。この旧訳は、装幀違いによって「普及版」のほかに、1000限定桐箱入り豪華愛蔵版」があった。これは一括前金払いのみ80円、普及版各巻1円の計26円(一時払い23円)であった普及版には愛蔵版のような全冊を入れ桐箱用意されていなかったが、後に8円で普及版用の並製桐箱別売りされた。

※この「第1回の翻訳 (旧訳)」の解説は、「谷崎潤一郎訳源氏物語」の解説の一部です。
「第1回の翻訳 (旧訳)」を含む「谷崎潤一郎訳源氏物語」の記事については、「谷崎潤一郎訳源氏物語」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「第1回の翻訳」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ



英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「第1回の翻訳」の関連用語

第1回の翻訳のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



第1回の翻訳のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaの谷崎潤一郎訳源氏物語 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS