積荷による差異
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/18 13:55 UTC 版)
積載装置と積荷が直接的に接触するため、比重・腐食性の有無など、積荷の物理的性質・化学的性質に応じて構造は異なる。このため、各車両には特定の品目だけを積載する「専用種別」が定められる。例えばタキ1000形は「ガソリン」専用車であり、タキ5450形は「液化塩素」の専用車である。「石油類」はひとつの専用種別として標記されるが、沸点の低い軽油・灯油を輸送する車種と、沸点の高い重油を輸送する車種では、荷卸装置や安全装置など細部の構造が異なる。 日常の運用では、タンク内を洗浄したうえで他の積荷の輸送に転用することもある(臨時専用種別)。例としては、ガソリン専用車を重油輸送車とする転用例が多数存在する(逆は不可)。 積荷の性質に応じた構造例と日本における車両形式の例を以下に示す。 一般液体 上:タキ40000形(ガソリン専用)下:タキ43000形(石油類専用) 台枠上にタンク体を搭載し、上部マンホールから積荷を注入しタンク下部の取卸口から排出する。漏洩時の危険度が比較的小さい積荷に適用される、一般的な仕様である。 例:ガソリン(タキ9900形・タキ64000形・タキ1000形(JR貨物)) 石油類(タキ44000形・タキ45000形) アルコール(タキ3500形・タキ7250形) 腐食性物質 上:タキ29100形(濃硝酸専用)下:タム8000形(過酸化水素専用) 強酸・強アルカリなど。タンク体を積荷と反応しない材質(ステンレスやアルミニウムなど)で製作したり、積荷の排出を空気圧による「上出し方式」とするなど、腐食・漏洩事故の防止対策がなされる。 例:濃硫酸(タキ5750形・タキ46000形) 濃硝酸(タム100形・タキ7500形・タキ29100形) カセイソーダ液(タキ2600形・タキ7750形) 液化ガス 上:タキ5450形(液化塩素専用)下:タキ18600形(液化アンモニア専用) 高圧低温下で液化したガスを輸送する車両は、タンク体を高圧に耐える圧力容器として設計し、取卸口は密閉度の高い構造になっている。タンク外部は温度上昇を防ぐために遮熱板(キセ・ジャケット)で覆われ、タンク体との間には断熱材を充填する。 例:液化塩素(タム8500形・タキ5450形) LPガス (タサ5700形・タキ25000形) 液化アンモニア(タキ4100形・タキ18600形) 粉体 液体よりも流動性に劣るため、取卸方法に工夫がなされる。タンク下部から内部に空気を噴出させ、摩擦をなくして流し出すものや、上部積込口から直接真空吸引するものがある。 例:セメント(タキ7300形・タキ3800形・タキ1900形・タキ12200形) アルミナ(タキ2000形・タキ6400形) 食品 積荷の変質を防ぐ対策がなされ、タンク体にステンレスなど反応しにくい材質を用いたものや、温度上昇を防ぐ遮熱板を設けたものがある。 例:小麦粉(タキ24700形) 醤油(タキ24900形) 酒類(タキ13800形) 定温輸送品 融点の高い物質を輸送する車両は、積荷を液体の状態に保ったまま輸送するための構造を付加する。タンク体を二重構造とし、間隙にグラスウールやウレタンフォームなどの断熱材を充填する。 例:液体硫黄(タキ23600形) アスファルト(タキ9200形・タキ11700形) カプロラクタム(タキ14800形・タキ17500形) 特殊品目 急激な反応を防ぐため水を張って空気を遮断するもの(二硫化炭素)、粉塵爆発防止のため温水を注入し半溶解状態で取り出すもの(塩素酸ソーダ)、高温で溶融させた積荷を積載後に冷却・凝固させ、取卸時に再度加温液化させるもの(金属ナトリウム)などがある。 例:二硫化炭素(タム200形) 塩素酸ソーダ(タキ21300形) 金属ナトリウム(タキ17600形)
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