直交行列
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/09/11 14:37 UTC 版)
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直交行列(ちょっこうぎょうれつ, 英: orthogonal matrix)とは、転置行列と逆行列が等しくなる正方行列のこと。つまり n×n の行列 M の転置行列を MT と表すときに、 MTM = M MT = E を満たすような M のこと。ただし、 E は n 次の単位行列であり、 E 自身も直交行列である。
有限次元実計量ベクトル空間の直交変換は、ある正規直交基底に関して実直交行列(成分が全て実数の直交行列)によって定まる線形変換である。ただし、直交変換とは(必ずしも有限次元でない)実計量ベクトル空間 V において内積を変えない(等長性をもつ)線形変換 f のことである。すなわち、 v, w を V の任意のベクトルとするときに、(f(v), f(w)) = (v, w) が成り立つ。ただし、(•, •) は内積を表す。
定義
n 次正方行列 M の 転置行列 MT が Mの逆行列になっているとき、すなわち MT = M-1 を満たすとき、M は直交行列であるという。
直交行列は内積を保つ線型変換としても定義できる。実計量ベクトル空間 V の任意のベクトル v, w に対し、内積を (v, w) = vTw とする。v, w が行列 M により Mv, Mw に変換されたとき、内積は
となるので、行列 M が直交行列であるのは計量ベクトル空間 V の内積を変えないとき、かつそのときに限る。
直交行列は正則行列であり、直交行列は積や逆について閉じている。n 次直交行列全体の集合を n 次直交群といい、O(n) と書く。行列式の値が1となる直交行列全体の集合を特殊直交群といい、SO(n) と書く。
例
回転行列
2次元ユークリッド空間において、原点を中心に角 θ の回転をあらわす2次直交行列は以下で表される。
置換行列
2次の正方行列において、1行目と2行目を置換させる置換行列は以下で表される。
反射行列
単位ベクトル u に直交する超平面についての鏡映を与える反射行列(ハウスホルダー行列)H は、以下の式で与えられ、直交行列となる(I は単位行列)。
性質
- 直交行列の行列式の値は ±1 である。実際、行列 A が直交行列なら行列式の性質から
-
- となる。逆は必ずしも真ではない。
- ユニタリ行列である。従って対角化可能である。
- n 次行列 A を n 個の列ベクトル(行ベクトル) を並べたものとみなしたとき、直交行列の定義 AAT=E は が正規直交基底になる条件と同値である。
- n 次の直交行列 A 、n 次の列ベクトル x が与えられた時、ノルムを ‖•‖ で表せば、 ‖Ax‖ = ‖x‖ である。したがって A の対応する作用素ノルムは ‖ A ‖ = 1 である。
参考文献
- 齋藤正彦『線型代数入門』東京大学出版会〈基礎数学 1〉、1982年(原著1966年)。ISBN 978-4-13-062001-7。
- 佐武一郎『線型代数学』裳華房〈数学選書 1〉、1974年。
ISBN 978-4-7853-1301-2。
- 佐武一郎『線型代数学』(新装版)裳華房〈数学選書 1〉、2015年。 ISBN 978-4-7853-1316-6。
- Strang, Gilbert (2007), Computational Science and Engineering, Wellesley-Cambridge Press,
ISBN 978-0-9614088-1-7
- ギルバート・ストラング『ストラング:計算理工学』今井桂子・岡本久 監訳幹事、近代科学社〈世界標準MIT教科書〉、2017年。 ISBN 978-4-7649-0423-1 。
関連項目
- 回転行列: 直交行列
- カルタン・デュドネの定理: 直交変換は超平面による鏡映の合成である
- 置換行列: 直交行列
- 特異値分解: あらゆる行列を直交行列と特異値による対角行列へ分解 A = UΣVT
- ユニタリ行列: エルミート内積に関して上と類似の性質を持つ行列
- QR分解: 正方行列から直交行列を作る手法
外部リンク
- 『直交行列』 - コトバンク
- 『直交行列の5つの定義と性質の証明』 - 高校数学の美しい物語
- Rowland, Todd and Weisstein, Eric W.. "Orthogonal Matrix". MathWorld (英語).
動画
直交行列
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/03/20 00:27 UTC 版)
上で述べた行列全体の成す集合 M(v,θ) の上に行列の乗法を考えたものは回転群 SO(3) である。 もっと一般に、任意次元における座標回転は直交行列によって表される。n-次元直交行列で真の回転を表すもの(行列式 1 のもの)全体の成す集合に、行列の乗法を入れたものは特殊直交群 SO(n) を成す。 直交行列は実成分で考えるが、その複素行列における対応物としてユニタリ行列がある。与えられた次元 n を持つユニタリ行列全体の成す集合は n-次ユニタリ群 U(n) を成し、またその部分群として、真の回転を表すもの全体は n-次特殊ユニタリ群 SU(n) を成す。SU(2) の元は量子力学においてスピンの回転に用いられる。
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