シルヴェスターの慣性法則
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/07/31 10:02 UTC 版)
線型代数学におけるシルヴェスターの慣性法則(シルヴェスターのかんせいほうそく、英: Sylvester's law of inertia)は実二次形式の係数行列の基底変換で不変なある種の性質を記述する。
具体的に二次形式を定義する対称行列 A と D = SAS⊤ が対角行列となる正則行列 S に対して、D の主対角線に並ぶ正の成分の数および負の成分の数は S に依らず同じである。
名称は、(Sylvester 1852) においてこの性質を証明したジェームス・ジョセフ・シルベスターに因む[1]。
定理の主張
n次正方行列 A は実成分を持つ対称行列とする。同じサイズの正則行列 S は A を別の n次対称行列 B = SAS⊤ へ変換するものとする。ここに S⊤ は S の転置行列である。即ち、行列 A と B は合同とする。A が Rn の適当な二次形式の係数行列ならば B は同じ二次形式に S の定める基底変換を行って得られる二次形式の係数行列である。
対称行列 A はこの仕方で必ず対角成分が 0, +1, −1 の何れかであるような対角行列 D に変換することができる。シルヴェスターの慣性法則はこのような各種の対角成分の数が(行列 S の取り方に依らない)A の不変量であることを述べる。
+1 の数 n+ を A の正の慣性指数 (positive index of inertia) と言い、−1 の数 n−1 を負の慣性指数 (negative index of inertia) と呼ぶ。0 の数 n0 は A の核の次元であり、A の余階数(退化次数)である。これらは明らかに
シルヴェスターの慣性法則
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/03/17 17:09 UTC 版)
シルヴェスターの慣性法則によれば、実対称双線型形式としての内積 g の符号数は基底の取り方に依らない。さらに言えば、計量 g が符号数 (p, q, r) を持つとき、 gab = +1 (a = b = 1, …, p), gab = −1 (a = b = p + 1, …, p + q), gab = 0 (それ以外) となるような基底が必ずとれる。これにより、等長同型(英語版) (V1, g1) → (V2, g2) が存在するための必要十分条件がg1 および g2 の符号数が等しいことであることが従う。同様にして、合同な行列の符号数は互いに等しく、合同を除いた行列の分類ができる。言葉を替えれば、二階共変対称テンソルの空間 S2V∗ への一般線型群 GL(V) の作用に関する軌道上で符号数は一定であり、これらの軌道を分類する。
※この「シルヴェスターの慣性法則」の解説は、「符号数」の解説の一部です。
「シルヴェスターの慣性法則」を含む「符号数」の記事については、「符号数」の概要を参照ください。
- シルヴェスターの慣性法則のページへのリンク