行列の分類
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/17 06:59 UTC 版)
「ペロン=フロベニウスの定理」の記事における「行列の分類」の解説
正方行列 A (必ずしも正あるいは実でなくてもよい) が既約(irreducible)であるとは、以下の(互いに同値な)定義で述べられている性質が成立することを言う。 定義 1:A は非自明な不変座標部分空間を持たない。ここで、非自明な座標部分空間とは、任意の基底ベクトルの真部分集合によって張られる線型部分空間を意味する。より明確に言うと、基底ベクトル ei1 , ..., eik, n > k > 0 によって張られる任意の線型部分空間に対し、作用 A を施した像は同じ部分空間には含まれない、ということを意味する。 定義 2:A は置換行列 P によって上三角ブロック行列に相似変換されることはない: P A P − 1 ≠ ( E F 0 G ) . {\displaystyle PAP^{-1}\neq {\begin{pmatrix}E&F\\0&G\end{pmatrix}}.} ここで E と G は非自明な(すなわち、行列次数がゼロではない)正方行列である。 A が非負行列である場合には、次の異なる定義が存在する: 定義 3:添字 i と j の全てのペアに対し、(Am)ij が 0 とならないようなある自然数 m が存在する。 定義 4:行列 A に関連する有向グラフ GA を考える。そのグラフは A のサイズ n と等しい数の頂点を持ち、Aij > 0 である場合に頂点 i から頂点 j への辺が存在するものとする。このとき、行列 A が既約であるための必要十分条件は、その対応するグラフ GA が強連結であることである。 既約でない行列は、可約(reducible)と呼ばれる。 A を非負行列とする。添字 i を固定したとき、その添字の周期(period of index)を、(Am)ii > 0 が成立するような全ての自然数 m の最大公約数として定義する。A が既約であるとき、全ての添字の周期は等しく、それは A の周期と呼ばれる。実際、A が既約であるとき、その周期は、グラフ GA に含まれる全ての有向閉路の長さの最大公約数として定義される(Kitchens の 16 ページを参照)。 その周期はまた、非原始性の添字(index of imprimitivity)、または周期性の位数(order of cyclicity)などと呼ばれる。 周期が 1 であるとき、行列 A は非振動的(aperiodic)と呼ばれる。 行列 A は、非負かつ m 次のべきが正となるようなある自然数 m が存在するとき、原始的(primitive)であると呼ばれる。行列が原始的であることと、非負既約かつ非振動的であること、は同値であることは証明されている。 正の正方行列は原始的であり、原始的な行列は既約である。正行列に対するペロン=フロベニウスの定理の全ての内容は、原始的な行列に対してもやはり真である。しかし、一般的な非負既約行列 A は、A のスペクトル半径と絶対値が等しくなるような固有値を複数個持つ場合もあるので、したがって正行列に対する定理も状況に応じて修正する必要がある。実際、そのような固有値の数は、行列の周期と等しいことが知られている。非負行列に対する結果は、1912年、フロベニウスによって初めて与えられた。
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