最小多項式 (線型代数学)
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線型代数学において、体 F 係数の n × n 行列 A の F 上の最小多項式(さいしょうたこうしき、英: minimal polynomial)とは、F-係数のモニック多項式 p(x) であって、p(A) が零行列となるようなものの中で次数最小のものを言う。q(A) = 0 となる F-係数多項式 q(x) は最小多項式 p(x) で割り切れる。
次の3つの主張は同値である:
A の最小多項式 p(x) における根 λ の重複度は、λ に対応する A のジョルダン細胞の最大次数を表す。
一般に、最小多項式は固有多項式と一致するとは限らない。例えば、4In を考える。(In は n 次単位行列。)この行列の固有多項式は (x − 4)n である。一方、4In − 4In = 0 であることから、最小多項式は x − 4 である。従って、n ≥ 2 ならば、4In の最小多項式と固有多項式は一致しない。
ケーリー・ハミルトンの定理と上の注意により、最小多項式は常に固有多項式を割り切ることが従う。
定義
体 F 上の有限次元ベクトル空間 V 上の線型変換 T に対し、
とおく。ここで F[x] は、F 上の一変数多項式環を表す。 は、F[x] の真のイデアルとなる。F は体だから F[x] は主イデアル整域であり、任意のイデアルは F の単元倍を除いて一意的な1つの多項式によって生成される。したがってとくに IT の生成元としてモニックな多項式をとることができ、これを T の最小多項式と言う。最小多項式は、 中のモニック多項式の中で次数が最小のものである。
応用
V 上の線型変換 T が対角化可能であることと、すべてのジョルダン細胞の次数が1であることとが同値である。従って、体 F 上の有限次元ベクトル空間 V の線型変換 T が対角化可能であるための必要十分条件は、T の最小多項式が F 上で一次式の積に分解し、すべての根の重複度が1であることである。
計算法の一例
体 F 上のベクトル空間 V とその線型変換 T および V の元 v に対して、
と定義する。これは、F[t] の自明でないイデアルとなる。 を、このイデアルを生成するモニック多項式とする。
この多項式は次の性質を満たす。
- は を含む。
- を、 が線型独立となるような最大の自然数とする。このとき、 ある が存在して、
-
- が成り立ち、さらに
- となる。
- V のひとつの基底 {v1, ..., vn} を取ったとき、T の最小多項式は、すべての たちの公約元である。
関連項目
参考文献
- 齋藤, 正彦 『線型代数入門』 東京大学出版会〈基礎数学1〉、1966年、初版。ISBN 978-4-13-062001-7。
- Lang, Serge (2002). Algebra. Graduate Texts in Mathematics. 211 (3rd rev. ed.). New York: Springer-Verlag. ISBN 978-1-4613-0041-0.
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