最小多項式 (線型代数学)とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > 百科事典 > 最小多項式 (線型代数学)の意味・解説 

最小多項式 (線型代数学)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2016/09/29 14:50 UTC 版)

線型代数学において、 F 係数の n × n 行列 AF 上の最小多項式(さいしょうたこうしき、: minimal polynomial)とは、F-係数のモニック多項式 p(x) であって、p(A) が零行列となるようなものの中で次数最小のものを言う。q(A) = 0 となる F-係数多項式 q(x) は最小多項式 p(x) で割り切れる。

次の3つの主張は同値である:

  1. λ ∈ F は、A の最小多項式 p(x) の根である。
  2. λ ∈ F は、A固有多項式の根である。
  3. λ ∈ F は、A固有値である。

A の最小多項式 p(x) における根 λ の重複度は、λ に対応する A のジョルダン細胞の最大次数を表す。

一般に、最小多項式は固有多項式と一致するとは限らない。例えば、4In を考える。(Inn 次単位行列。)この行列の固有多項式は (x − 4)n である。一方、4In − 4In = 0 であることから、最小多項式は x − 4 である。従って、n ≥ 2 ならば、4In の最小多項式と固有多項式は一致しない。

ケーリー・ハミルトンの定理と上の注意により、最小多項式は常に固有多項式を割り切ることが従う。

定義

F 上の有限次元ベクトル空間 V 上の線型変換 T に対し、

とおく。ここで F[x] は、F 上の一変数多項式環を表す。 は、F[x] の真のイデアルとなる。F は体だから F[x] は主イデアル整域であり、任意のイデアルは F の単元倍を除いて一意的な1つの多項式によって生成される。したがってとくに IT の生成元としてモニックな多項式をとることができ、これを T最小多項式と言う。最小多項式は、 中のモニック多項式の中で次数が最小のものである。

応用

V 上の線型変換 T が対角化可能であることと、すべてのジョルダン細胞の次数が1であることとが同値である。従って、体 F 上の有限次元ベクトル空間 V の線型変換 T が対角化可能であるための必要十分条件は、T の最小多項式が F 上で一次式の積に分解し、すべての根の重複度が1であることである。

計算法の一例

F 上のベクトル空間 V とその線型変換 T および V の元 v に対して、

と定義する。これは、F[t] の自明でないイデアルとなる。 を、このイデアルを生成するモニック多項式とする。

この多項式は次の性質を満たす。

  • を含む。
  • を、線型独立となるような最大の自然数とする。このとき、 ある が存在して、
が成り立ち、さらに
となる。
  • V のひとつの基底 {v1, ..., vn} を取ったとき、T の最小多項式は、すべての たちの公約元である。

関連項目

参考文献




英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「最小多項式 (線型代数学)」の関連用語

最小多項式 (線型代数学)のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



最小多項式 (線型代数学)のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの最小多項式 (線型代数学) (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS