発行理由
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/15 19:40 UTC 版)
ヨーロッパの王国では、王室の慶事で記念貨幣が発行されることが多い。国王の即位および戴冠式、国王や皇太子の婚儀、国王夫妻の銀婚式や金婚式、国王の長期間の統治などが主な事由である。 世界で最初にオリンピック開催を記念した銀貨を発行したのはフィンランドのヘルシンキ大会であった。額面は500マルッカで1951年と1952年の年号銘があり、直径32mmで重量が12gであったが、銀比率が.500の低品位銀貨であった。1964年には日本で東京オリンピックの記念銀貨が発行され、人気が高まり発行による収益を大会運営費に当てるに至った。この成功をきっかけにその後1968年のメキシコオリンピックでも記念銀貨を多量に発行し、以降オリンピック大会開催毎に記念貨幣を発行し、その収益を大会運営費に当てることが定着した。 アメリカ合衆国では、1ドルと50セントの記念銀貨、5ドルや10ドルの記念金貨などを多く発行している。1976年の建国200年記念では通常貨のデザインを変更した1ドル、50セント、25セントの記念貨幣を発行したほか、偉人の生誕周年記念などの貨幣が見られる。なおアメリカの記念金貨は収集型金貨であり、たとえば5ドル金貨(重量8.39g、品位.900)は、一般への売り出し価格は200ドルであり、法定通貨としての額面よりも多額のプレミア価格が付けられている。 一般的にオリンピックやサッカーのワールドカップ、万国博覧会では開催国から記念貨幣が発行されることが通例となっているが、開催国以外の、場合によってはそのイベントに参加しない国までがコレクター目当てで便乗してこれらのイベントの記念貨幣を発行する場合もあり、記念切手もしくは特殊切手と同じような現象も生じている。また自国にはいない野生生物や外国の世界遺産を紹介するとして記念貨幣を発行されることも珍しいことではない。 このように現在の記念貨幣の概念は、慶事を祝うというもの以外に、シリーズでテーマを決めた硬貨を発行するなど、いささか記念という概念を逸脱するものが増えてきている。 近年では、従来の円形もしくは穴が開いている記念貨幣に加え、デザインの鉄道トンネルに穴が開いていたり、変形(国土の地図や楽器の形など)の記念貨幣も存在し、またカラーコイン(またはグラフィックコイン)と呼ばれる着色されたデザインを持つものがある。これは貨幣の表面に下地を塗りつけてオフセット印刷で色をつけて加工したものである。近年日本で発行されている1000円記念銀貨が該当する。さらには硬貨に宝石を埋め込んだもの、金属ではなくクリスタル製の硬貨なども出現した。これらは単なる装飾品に酷似しているが、法定通貨であるところが、メダルとは異なる。 国の大小を問わず、記念金貨を外貨獲得の手段のひとつとして用いられる場合も少なくない。日本でもオリンピック東京大会の1000円銀貨では1枚あたりの製造コストが約400円であり、オリンピック開催の資金源のひとつとなった(21世紀の現在も、古銭店では最低2.5倍、保存状態のいい物であれば4倍のプレミアムが上乗せされている)。また昭和天皇御在位60年記念10万円金貨では、製造コストが約4万円であり、実質発行枚数が約910万枚(発行額約9100億円)であったため、数千億円が国庫に入った。現在ではクック諸島やツバルといった国では、日本市場向けに日本のアニメーションのキャラクターをかたどった記念貨幣を発行しているほか、1989年にはリベリアから「各国元首記念シリーズ」のひとつとして昭和天皇の肖像入り記念貨幣(250ドル金貨、20ドル金貨、10ドル銀貨)を、2000年にはソマリアから「ミレニアムを象徴する人物シリーズ」のひとつとして昭和天皇の肖像入り記念貨幣(250シリング銀貨、25シリング白銅貨)を発行したことがある(参考)。 このように、近年では大量の記念貨幣が世界各国で発行されている。実際に世界的なコインカタログ"Standard Catalog Of World Coins"(アメリカのクラウゼ出版社"Krause Pubns Inc"刊)は19世紀以前と20世紀、そして21世紀の3冊セットである。すなわち2001年以降はそれだけ発行される記念貨幣は膨大であるといえる。
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