疣贅の治療
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/03 02:19 UTC 版)
治療は、病変部を除去しながら自己免疫や皮膚再生を活性化させて寛解させる。まれに、ウイルスに対する体内抗体ができることで自然軽快することがあり、その場合には跡が残ることはほとんどない(数年以内に自然に消える)。しかし、多くの場合、皮膚組織中に生じるため細胞性免疫は期待できない。大きくなったり、別の部位に感染することもある。 広範囲である場合や、治療に抵抗性がある場合、腫瘍の治療に加えて免疫力を低下させている基礎疾患も併せての治療を検討する必要がある。 2014年のイギリスのガイドラインでは、サリチル酸を最も推奨し、次に凍結療法が選択肢となる。 イボが少ない場合や、発症から1年未満、子供の場合、第一選択はサリチル酸、硝酸銀、グルタルアルデヒドとなる。第二選択肢は、凍結療法。科学的証拠は、サリチル酸と凍結療法のものが複数あり、両者に差はないとみられ、これらを併用した方が治癒率は高い。1つのランダム化比較試験は、週1での凍結療法による完全治癒率が56.7%に比較して、3週間に1度の免疫療法(カンジタ抗原の注射)では76.7%であった。 サリチル酸は痛みが少なく、角質を軟化させるため、皮膚を削ぎ落すことができる。サリチル酸は薬局でも買える。モノクロロ酢酸の外用も疣贅の変性・脱落に用いられる。 日本で健康保険が適用できる治療法は凍結療法となる。他に保険適用の治療法としては、薏苡仁(ヨクイニン)という漢方薬(ハトムギのエキス)の服用が挙げられる。 凍結療法は、液体窒素によって病変部の凍結、剥離を繰り返す方法である。超低温で瞬間的に組織を凍結させてウイルス感染した病変部を物理的に壊死させる。同時に周囲の皮下組織に炎症を生じさせ、炎症反応による抗ウイルス効果を期待するものである。処置の性質上、皮下の血管や神経の組織を損傷させるため一時的な激痛を伴うほか、場合によっては血腫を生じ、処置後も痛みを伴う。これは局部的な凍傷であり、痛みはほとんどは一両日中に治まる。壊死した皮膚が再生すると病変部とともに自然剥離する。しかし病変部が深い場合、皮下組織から上皮細胞が再生と剥離を待って、あるいは深い病変部を露出させ、同じ箇所を病変部がなくなるまで再度処置を繰り返す必要があり、定期的な通院が必要になる。この場合、効果に個人差こそあるが、およそ数週から数年以上の長い日数をかける場合がある。処置による痛みが激しい場合や水ぶくれが肥大した場合は外科的治療や麻酔も併用される。 現在に至るも根治的な飲み薬や塗り薬は見つかっておらず、疣贅を生じるタイプのHPVワクチンも開発されていない。確立されていない様々な治療法が古くから試みられ、一定の効果が認められる治療法がある一方で、信心やまじない、迷信の類も世の東西を問わずに昔から存在している。(小説トム・ソーヤーの冒険」にはいぼとりのまじないの話が出てくる。日本では、いぼとり地蔵や、いぼ神社が各地に存在している) 薏苡仁は、漢方薬・飲み薬。はと麦の成分であり、37.6%の人で疣贅がなくなったという研究結果がある。 上に挙げたもので、取り扱いが少ないもの。 グルタルアルデヒドは細胞を腐食する薬剤で、疣の盛り上がりを平坦にする。実験試薬で、取り扱う施設は数少ない。製薬会社によってステリハイドなどの商品名で販売されている。健康保険適用外。 その他の治療法を記す。 局所免疫療法 - 皮膚にかぶれを惹起させる薬剤を反復塗布することによって、局所の免疫を賦活する作用がある。取り扱い施設は少ない。薬剤としてはスクアレン酸ジブチルエステル(SADBE)やジフェニルシクロプロペノン(DPCP)が一般的に用いられる。健康保険適用外。 レーザー治療 - 痛みを伴うので麻酔が必須である。疣感染組織を直接的に除去する治療法。施行している施設は少なく、組織の瘢痕化が残り疣は治ったが硬いままとなる危険性もある。一度ではなく反復治療が必要な場合も多い。健康保険が適用されるかどうかは疣の種類とレーザーの種類によって規定されている。たとえばルビーレーザーは疣の種類によって保険が適用されるが炭酸ガスレーザーは健康保険の適用外となる。 外科手術 - 悪性腫瘍の可能性も否定出来ない場合に行われることもあるが、原則として行われない。その理由として患部にウイルスが残っていると容易に再発してしまう点、傷跡が残る可能性がある点が挙げられる。健康保険が適用される。 ビタミンD3軟膏を密封包帯し、副作用は生じにくい。 米国皮膚科学会による家庭用治療としては、サリチル酸が最も一般的な処置方法だとしているが、イボにダクトテープを貼り数日ごとに取り替える方法も紹介している。
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