現代的な吸血鬼の特徴
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/01 02:32 UTC 版)
腕力は人間を超え、体の大きさを自由に変えたり、コウモリや狼などの動物、霧や蒸気に変身でき、どんな場所にも入り込む。また、催眠術やフクロウ、コウモリ、狼、狐、昆虫といった動物、嵐や雷などを操るとされる。トランシルヴァニアの伝説を元にしたブラム・ストーカーの小説『ドラキュラ』は現代の吸血鬼のイメージに強い影響を及ぼしており、従って東ヨーロッパの吸血鬼は現代のそれに近い。『ドラキュラ』の登場人物の一人であるヴァン・ヘルシング教授は、吸血鬼を「怪力無双、変幻自在、神出鬼没」と称する。 現代の吸血鬼が持つという特徴の源泉は東ヨーロッパにあった吸血鬼に限られない様々な魔物が持っていた特徴にある。教皇ベネディクトゥス14世はキリスト教啓蒙のために土着信仰を弾圧したが、それが却って埋もれていた魔物の説話を広めることになった。キリスト教布教以前に信じられていた魔物の特徴は以下のようなものである。 日光を嫌う(人工光には強い)ため、昼間は墓地や洞窟などに身を隠す(日光を浴びると灰になるというのは近年の映画作品において作られた設定である) 緩い水流や穏やかな海面を歩いて渡る ニンニクや匂いの強い香草等を苦手とするニンニクはエジプトでは広く悪に対して効果があると伝承されており、それが世界各地に広まった。中国やマレーシアでは額に、フィリピンでは脇の下に擦り込み、スラブではドアや窓、首にかける。 杭を心臓に打ち込めば死亡する(杭となる木は主にトネリコ、ビャクシン、クロウメモドキ、セイヨウサンザシ等が使われるほか、ロシアではポプラが用いられることもある) 鏡にみせかけの姿が映らない 瞳が赤い 美しい女性ばかりを好んで血を吸う 赤ワインや生肉などを血の代用品としている これらは吸血鬼の特徴に引き継がれ、ドラキュラ伯の逸話と結び付けられてヴァンパイア像の源泉になった。 吸血鬼とコウモリの関連は、大航海時代以降にアメリカ大陸熱帯雨林地域を踏破し太平洋を目指したスペイン人が発見した動物の血を吸うコウモリの種類を吸血コウモリ(ヴァンパイア)と名付けたことに由来する。 19世紀のロマン主義文学は、吸血鬼を異端として描き、その印象を確立する大きな役割を担った。その中でもシェリダン・レ・ファニュの小説『カーミラ』は女性の吸血鬼を描き「(女吸血鬼は)魅惑的でしたたか」という特徴を与えた。この影響からそのような性質の女性にヴァンプという俗称をつけるようになった。 ブラム・ストーカーの小説『ドラキュラ』は、ドイツなどヨーロッパにあった怪奇小説(ゴシック・ノヴェル)で描かれた魔物の特徴を取り込みつつ、キリスト教的な要素も加えて巧みに吸血鬼像を創り出した。前者からは「初めて訪問した家では、その家人に招かれなければ侵入できない」とし、後者の例である「十字架を非常に嫌う。護符や聖餅も同様に、打ち払う効果を持つ」「十字架、聖水、イコンのような宗教的象徴は、それ自体には効能が無くそれを持つ者の信仰が重要であり、また力のある吸血鬼には通用しないことがある」という部分は当時のヨーロッパでは常識とも受け止められていた考えである。 その他に以下のような特徴が挙げられる。 吸血鬼についての報告は複数の被害者の主観から語られるのみで、一向に詳細が見えてこない。吸血鬼とは実態が無い存在であり、それは吸血鬼の力と符合している。 種などを見るとその粒を集めなければ気が済まない、縄の結び目を解こうと躍起になるという習性を利用したものとされる。 映画・漫画・小説などで吸血鬼は棺桶で寝起きするというのが定番のようになっている。
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