現代的な基準外の国家
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/26 08:20 UTC 版)
要件を満たさない支配機構や政治共同体も存在しうる。国家は近代の歴史的産物(近代国家も参照)であり、それ以前には存在しなかった。例えば前近代社会において、しばしば多くの国家が多様な自治的組織を持つ多種多様な人間集団、すなわち社団の複合体として成立し、中央政府機構はこれら社団に特権を付与することで階層秩序を維持していた。こうした国家体制を社団国家と称し、日本の幕藩体制やフランスのアンシャン・レジームが典型例として挙げられる。例えば、幕藩体制において公家の団体である朝廷とその首長の天皇は幕府の首長に征夷大将軍の官位を与えることで権威を保証し、幕府は大名や旗本の領国経営組織という武士の団体に主従制に基づく特権を付与して臣従と忠誠を求め、幕府や大名領国のような領主権力は百姓の団体である惣村や町人の団体である町(ちょう)に身分特権と自治権を付与することで民政を行っていた。そこには如何なる排他的な主権者も見出すことはできない。 こうした社団国家においては個々の社団が中央政府機構からの離脱や復帰を行う現象が見られ、また江戸時代の琉球王国が日本と中華帝国(明もしくは清)に両属の態度をとっていたように国民の固定化は不完全であった。当然、社団の離脱、復帰に伴い領域も変動しえた。 さらに権力に関しても、幕藩体制における各藩が独自の軍事機構を持ち、幕府の藩内内政への干渉権が大幅に制限されていたように、決して主権的ではなかった。 現代社会において近代国家の表看板を掲げていても、2021年にターリバーンが実効支配する前のアフガニスタンのように内部の実情は複数の自立的共同体が必ずしも国家機構の主権下に服さずに国家体制の構成要素となっている国家は存続している。今日の国際関係は、近代的主権国家間の関係を前提として成立しており、こうした国家の存在は様々な紛争の火種を内包している。さらに、この問題は同時に、近代的主権国家の歴史的な特殊性の問題点を投げかけているともいえる。
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