燃料高騰と復活(21世紀~)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/10 06:58 UTC 版)
「帆船」の記事における「燃料高騰と復活(21世紀~)」の解説
21世紀に入ってスタークリッパー社が、前述のプロイセン号をモデルにした5本マスト・シップ型の大型帆船「ロイヤル・クリッパー」を初めとする3隻の帆走クルーズ客船をカリブ海域に投入している。 現代でも帆船の特性に由来するルール『スターボード艇優先の原則』が国際法として継承されている。 燃料高騰への対応 貨物船としては、オイルショック以降燃料節約を目的にした半帆走商船の研究が進み、1980年代には新愛徳丸など複数の半帆走貨物船が就役したが、初期投資や維持コストの高さ、積載量が減り運用効率が低いことなどから、短命に終わった。 その後も原油高騰のあおりを受けた2007年以降、コンピュータで制御する大きな凧を装備したタンカーが運航されるようになった。このような機帆船は、第一次オイルショックの際にも検討されていたが、帆を操作する熟練した船員が多数必要であり、これが人件費を抑えようとする船主との思惑と一致しないという問題点が存在した。現在は風向風速計からえられたデータをコンピュータで解析、帆を電動モータで正確に制御することにより船員を最小限にして、最大で燃費を15~30%程度改善する効果があるとされる。これらの省エネルギーを目的とした帆船は、補助動力として風を利用しており、予定航海日数を厳守するべくヨットレースのように向かい風を利用してジグザグ航行を行ってまで燃料節約を行わない。 2008年にはフランスの海運業者Compagnie de transport maritime à la voile社(CTMV)によって、ワインの商用輸送が再開された。CTMVは108隻の古い帆走船を所有しており、その速度は8ノット程度ではあるが、環境問題に関するアピールや燃料代の節約になっている。 その後も帆走を推進力の一部とした、帆船と汽船のハイブリッド船の開発は続いている。2009年には、東京大学と海運会社による硬翼帆を使った省エネルギー帆船の研究「ウインドチャレンジャー計画」が始まった。2018年には商船三井と大島造船所に継承され、2020年12月10日に東北電力と商船三井による硬翼帆の石炭運搬船を大島造船所で建造することが発表された。 セーリングとしての帆船 実用船としては一般的ではなくなったが、欧米ではセーリングは文化として根付いており、現代風のセーリングクルーザーを用いたセーリングだけでなく、かつて活躍した(中型程度の)商用帆船やセーリング・フィッシング・ボート(漁業用帆船)などがいくつも(微)改修されてレジャー目的で大切に乗り続けられている。また、セーリングをする人々の間では特に有名なアメリカスカップやジ・オーシャンレースなどのヨットレースが盛んに行われており、オリンピックのセーリング競技も行われ、これらに参加する帆船の帆は人力で操作するものの、船体は最新の流体力学による知見と炭素繊維などのハイテク素材を利用して開発されている。 伝統文化としての帆船 北海道の野付湾では、ホッカイエビ漁の際に住処となるアマモを傷つけないようにエンジンを停止して帆走のみで漁を行う打瀬網漁が伝統行事として続いており、地元の観光資源にもなっている。 練習船としての帆船 汽船が主流である21世紀でも、航海や操船の訓練のために帆船が運用される例は多い。日本では、航海訓練所(現・海技教育機構)の帆走練習船日本丸・海王丸が更新され、21世紀に入っても運用されている。各国の海軍でも士官教育のため帆走の練習艦を運用することは多く、アメリカ沿岸警備隊ではドイツから戦後賠償として取得されたバーク(イーグル)を士官学校の海洋実習船として利用している。
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