比較における問題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/31 08:50 UTC 版)
「ビッグマック指数」の記事における「比較における問題」の解説
実際のビッグマック(及び他のすべてのサンドイッチ)は世界各国で異なった重量、栄養価、サイズで提供されている。例えばオーストラリアのビッグマックはカナダ版に比べカロリーが22%少なく、メキシコ版に比べ重量が8%軽くなっている。また途上国では、ビッグマック=高級品という感覚もある。ベトナムでは、屋台のサンドイッチ(バインミー)に比べて4倍ぐらいする。 この比較では「指数」という言葉を使うが、本来の意味の指数(無単位)ではない。単位は各国の通貨単位である。たとえば、日本では「円」、韓国では「ウォン」、中国では「元」を単位とする。当然、単位の異なる各国のビッグマック指数を比較しても、何の意味もない。ビッグマック指数(≒実効レート)が意味を持つのは、一つの国においてのことである。ある国において、「現在の為替レートと比べて実効レートがどのくらいあるか」という比較でのみ、意味を持つ。そのため、A国のビッグマックをドルや円に換算した値段とB国のそれとを列挙して、為替の評価ではなく、経済力や物価などを比較するのは誤りである。 また、この数字には、消費税(付加価値税)が含まれているので、各国で比較する場合には、その分を除いて計算しないと、意味がない。たとえば、欧州諸国では 20%程度の消費税がかかるので、それを勘案する必要がある。 さらにはビッグマック指数は、物価感覚の比較の簡便で実用的方法ではあるが、たった1品目では厳密な比較ができない。例えばビッグマックの価格と最低賃金を用いて計算した場合、ビッグマック1つ分のお金を稼ぐのに必要な労働時間が世界一短いのは、香港である(2018年)。また、ファストフード店が激しい価格競争に晒されているかそうでないか、原材料の牛肉や小麦に対する補助金制度といった各国独自の特殊な事情が絡む。またより精確な指標とするには同国内でも時代ごとに異なる一つ当たりの価格からグラム換算、炭水化物:油脂比率を含めたカロリー換算、たんぱく質など栄養価換算も考慮して計算しなくてはならなくなる。 隣国で石油大国でありながらサウジアラビアとクウェートのビッグマックの値段は両極端でサウジアラビアが約70円強なのに対してクウェートでは約800円弱と10倍以上も開いている。これはサウジアラビアのマクドナルドが国の補助金を受けているために極端に安いのに対して、材料のほとんど全てを輸入に頼っていて食料品価格の平均が高いクウェートでは高くなるためで、先進国以外では経済指標として機能しない。また、金融危機の影響でマクドナルドが全店撤退してしまったアイスランドでは、測定不能になっている。 1個のビッグマックを購入するのに必要な労働時間のトップ10都市は以下の通りである(2018年4月現在)。 香港 11.8分 台北(台湾) 12.0分 東京(日本) 12.2分 ルクセンブルク 13.1分 オークランド(ニュージーランド) 13.3分 チューリッヒ(スイス) 13.4分 ロサンゼルス(アメリカ) 13.6分 マイアミ(アメリカ) 13.9分 シカゴ(アメリカ) 14.0分 シドニー(オーストラリア) 14.5分 2013年現在、エコノミスト誌はビッグマック指数のほか、トール・ラテ指数(スターバックス指数、2004年から)やコカ・コーラマップなどの指数も発表している。円についてはトール・ラテ指数の場合、ビッグマック指数とは逆に、さらに円安の余地があることになり、ビッグマック指数とは結果が大きく異なっている。オーストラリア・コモンウェルス銀行の株式仲買部門であるコモンウェルス証券(CommSec)は、iPod指数を提唱(2007年)している。
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