歴史資料としての価値とは? わかりやすく解説

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歴史資料としての価値

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/09 15:01 UTC 版)

吾妻鏡」の記事における「歴史資料としての価値」の解説

最後に明治以降研究者が、この『吾妻鏡』歴史資料してどのように評価してきたかをまとめておく。 星野恒 星野恒1889年の『史学雑誌創刊号載せた吾妻鏡考』が近代史学における吾妻鏡研究出発点となった。そこにおいて、星野『平家物語』などの「物語」と異なり、「鎌倉幕府日記であって信用のおけること、そして幕府記録嚆矢(こうし)であり、武家制度法令政治経済理解する上で必須の史料位置づけた。 原勝郎 それに対して原勝郎は「其記事比較正確にして且社會諸般事項に亘り、豐富な材料供給すること多く他に類をみざるところなり」としながらも、すくなくとも前半は「日記」とは思えないこと、そしてそれを全面的に信用することに対して疑問投げかける吾妻鏡史料としての価値は「主として守護地頭其他の法制に關係ある事實」にあるとする。それらの多く政所問注所に関係ある諸家筆録その他の記録であろうし、それらに政治的曲筆入り込む可能性少ないだろう、しかし北条氏正当化する為の曲筆多く政治史材料としては信憑すべき直接史料とはみなし難いとした。 和田英松 和田英松前半どころかその全てが後の編纂物であって日記」(リアルタイム記録)ではないとする。しかしこれは鎌倉時代中葉に、幕府公私日記文書によって編纂したものであって史料としての価値日記に劣ることあらざるべし」とする。またその編纂意図については「幕府記録統一して先例調査機関備えんが為」であったではないかとした。 八代国治 八代国治は『吾妻鏡研究』において、和田同様に全てが後の編纂物とし、更に「切り張りの誤」「生存者死者となす」「死者生存者となす」「偽文書採録」など「記事の誤」を徹底的に指摘し、原と同じよう政権闘争に関する史料としては、一等史料として信用しいとする。その一方で幕府政所問注所、及びこれに関係する者たちの日記記録文書、及び京都公家日記などの資料によって編纂した部分大部分占め、その編纂も幼稚で余り「斧削」を加えていない、従って曲筆偽文書意図的な顕彰注意深く取り除けば鎌倉時代根本資料として恐らくはこれに匹敵するものはあるまいとする。 佐藤進一 和田英松八代国治研究大正初期のものだが、戦後1955年佐藤進一池内義資編の『中世法史料集』の態度は「対応資料見出せない場合には一切吾妻鏡採録せず、後日研究俟つことにした」という非常に慎重なものであった。それは八代いうところの上述誤謬を糾し、粗漏除き」という作業如何に難しいかを物語っている。実際に『吾妻鏡』記述根拠とした「守護・地頭成立1185年説」がひっくり返ったのは、先に紹介した通りこの『中世法史料集編纂より後に起こったのである益田宗 益田宗は、北条本は「いわゆる北条本に過ぎないこと、現存する吾妻鏡写本寄せ集め本にすぎず、写本本文系統論は成立しえないことなどを指摘した。また八代国治編纂二段階説を否定して、その成立はほぼ14世紀初頭とし、当時幕府事務官僚に集められ様々な種類原史料がベースとなっていると見るべきであること、同じ理由京都西国起こったことなどは欠けていることが多いこと。そしてその編纂時期以前に既に北条得宗専制期であるため「北条氏はばかる記述」もあることに注意が必要であるが、しかしその曲筆は必ずしも編纂者の手によるという訳ではなく、編纂者自身がそう聞かされていた、集めた史料にはそう書かれていたと見る方が正しかろうとする。しかしそうした「本書短所は、短所なりに価値をもつものであって、必ずしも本書の価値低めるものでは」なく、鎌倉幕府研究更には武家社会解明には不可欠文献であるとする。 五味文彦 近年『吾妻鏡』研究大きな仕事をしたのは五味文彦であるが、五味は『中世法史料集』の態度紹介しながら、それでも『吾妻鏡』は、実に豊かな法令含んでいるという。五味は、原史料の見通しをつけることができれば編纂あり方誤謬あり方自然にわかってくるだろう、そうすれば八代がその著書最後に述べたように、鎌倉時代根本資料として有益な情報抽出出来るはずだとする。

※この「歴史資料としての価値」の解説は、「吾妻鏡」の解説の一部です。
「歴史資料としての価値」を含む「吾妻鏡」の記事については、「吾妻鏡」の概要を参照ください。

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