旧GCOMについて
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「地球環境変動観測ミッション」の記事における「旧GCOMについて」の解説
1998年、当時の宇宙開発事業団(現在は宇宙航空研究開発機構=JAXAに統合)内部でADEOS-II(みどりII)やALOS(だいち)に続く地球観測衛星の研究が着手され、1999年8月には文部科学省宇宙開発委員会で地球観測変動観測ミッション(GCOM)の推進とオゾン観測センサODUSの研究開発が了承された。地球環境観測を扱う科学者コミュニティにおいても観測要求条件の検討がなされ、2000年1月にGCOMミッションの第一弾として、オゾン・温室効果ガス観測衛星(GCOM-A1)と気候変動観測衛星(GCOM-B1)が提案された。環境庁においても、温室効果ガスをより精密に測定するため、みどりIIに搭載されたILAS-IIの後継センサであるSOFISの開発研究が進められた。 2000年4月、NASDAはH-IIロケット8号機故障による運輸多目的衛星MTSAT-1の打ち上げ失敗の余波を受けて、GCOMとODUSの研究を一本化し、GCOM-A1、GCOM-B1衛星のセンサとして、GLI後継センサ(陸上エアロゾル・植生や、陸上・海洋観測全般を行う可視~熱赤外多波長光学センサ)、AMSR後継センサ(陸地・海洋上の水蒸気量や水分量、温度を観測するためのマイクロ波放射計)、新規開発のOPUSセンサ(オゾン・大気汚染物質の観測を行う紫外線分光計)の3つの開発に絞った。同時に海外からのセンサ提供も募集し、同年12月に欧州宇宙機関(ESA)開発のSWIFT(成層圏での大気汚染物質の移動を観測するためのセンサ)の搭載が決定された。 同年12月の宇宙開発事業団評価委員会第3回地球観測部会評価報告書において、GCOMの具体的目標として以下のものがあげられた。 地球観測の観測手法や成果物に関する世界標準を構築するようなリーダーシップを取る。 相互バックアップや不慮の事故に対するリスクの緩和のため、観測結果の成果物を他の宇宙機関や既存の計画との整合性を取る。 他の機関や研究者グループとの機関間・国際間協力を組織的に行うためのガイドラインを取りまとめる。 また、GCOM-A1とB1の衛星コンフィギュレーションについて、以下のように記載されている。 GCOM-A1 J-IIロケット(後にGXロケットに改称)で打ち上げられる1トンクラスの衛星。温室効果ガスを観測するSOFISセンサ、オゾンを観測するODUSセンサを搭載(この報告書ではまだOPUSではなくODUSとなっており、ESA提供のSWIFTセンサへの言及はない)。オゾン層保護のためにフロン等の排出規制を定めたモントリオール議定書、および、二酸化炭素排出量規制を定めた京都議定書に寄与することを目的とする。 GCOM-B1 H-IIAロケットで打ち上げられる2トンクラスの衛星。多波長光学センサGLIと2つのマイクロ波放射計(AMSRと海上風散乱計)を搭載。 GCOM-A1とB1でかなり異なる衛星を使用することから、ミッション間の共通性を高めるためB1を分割して、3つの1トンクラスの衛星に分けてる事も提案されている。同時に、B1の二つのマイクロ波センサでの同時観測というメリットが失われることも指摘している。 しかし、予算上の強い制約とミッションの重点化のため、GCOM-A1は2002年6~10月にかけて略称無しの「温室効果ガス観測技術衛星」と呼ばれはじめ、その後「GOSAT」という呼称に改められた。GOSATの主目的は京都議定書で定められた第1約束期間(2008年~2012年)における温室効果ガスの地域ごとの排出量の観測に特化され、GCOMからは独立したプロジェクトとなった。GOSATには当初SOFIS・OPUS・SWIFTの3種類のセンサが搭載される予定だったが、2003年、地上付近の二酸化炭素の分布をより精密に測定するため、SOFISセンサに変わって環境省が新規に開発する別方式のTANSO-FTSセンサが搭載されることになった。ミッションの重点化のため、オゾン観測用のOPUSセンサと、OPUSと同時に観測しなければ効果を発揮出来ないSWIFTセンサの搭載は中止された。GOSATはいぶきという名称で、2009年に打ち上げられた。 一方のGCOM-B1は、JAXAの地球観測衛星のロードマップからその名称が消えた。 2005年6月、宇宙開発委員会地球観測特別部会で「我が国の地球観測における衛星開発計画及びデータ利用の進め方について」の報告書がまとめられ、国際協力、観測データの活用、および国産衛星・センサによる日本の貢献という観点からその後の日本の地球観測衛星計画の方針が定められた。この報告書上に記されているADEOS-II後継機1および後継機2が現在のGCOM-W1およびGCOM-C1へつながる計画となった。
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