日本でのメディアミックス
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「メディアミックス」の記事における「日本でのメディアミックス」の解説
日本においては、1973年に小松左京の小説『日本沈没』が光文社より刊行直後から間髪を入れずに映画、ラジオドラマ、テレビドラマ等様々な形態で相次いで制作され、それらが相乗効果を生んでベストセラーとなったケースが大規模メディアミックスの嚆矢といえるが、代表的な成功例として挙げられるのは、その後角川書店が1970年代後半に自社発行書籍(小説作品)の映画化を行い、その原作作品を映画イメージと連動させた新装カバーを付けて売り込み業績を伸ばしたことで「メディアミックス」という言葉と共に注目された広告手法である。これらの手法は当時、角川商法などと呼ばれたが、角川は出版という宣伝メディアを持っていたため、大規模な広告展開が出来た。現在でも角川書店とその関連会社(アスキー・メディアワークス、富士見書房など)は「日本のメディアミックス商業展開の元祖的存在」として取り上げられることが多い。ただし、自社の書籍を映画化するという手法は徳間書店がそれよりも早く試みており、こちらを元祖だとする見方もある。 メディアミックスのような事例は日本でも昔からあり、例えば『月形半平太』などの作者行友李風が小説「修羅八荒」を大正14年(1925年)10月27日から、大正15年(1926年)8月12日まで大阪・東京朝日新聞で250回連載したが、連載終了前に松竹蒲田、日活、マキノ映画が参戦した三社による映画の競作が行われ、さらにラジオ劇、レコード化、浪曲化、舞台劇にも連載終了前に波及した。当時はこうしたケースも珍しくなかったといわれる。 1970年代前半には、当時の岡田茂東映社長が、日本映画の将来の見通しが暗かったことから、経営多角化の一つとして、1973年に出版事業に乗り出し、黒崎出版と提携して『テレビランド』を創刊したり、徳間書店社長・徳間康快と組んで『アサヒ芸能』と原作を連動させ、映画『山口組三代目』を製作したり、成人向け劇画雑誌『コミック&コミック』を創刊したことがあり、この『コミック&コミック』で岡田と徳間が構想した目玉企画が、東映の映画監督が原作を担当した劇画作品を雑誌に連載した後、映画化するというもので、この雑誌で連載された鈴木則文監督の『聖獣学園』が映画化された。当時『アサヒ芸能』の特集部に在籍した鈴木敏夫は『コミック&コミック』で、東映の気難しい監督たちと若手劇画家を繋ぐ調整役だったといわれる。大塚英志は「映画と劇画を平然と往復しようとする大胆な感覚は、以降のスマートなメディアミックスを先取りしており野心的。岡田茂と徳間康快という二人の怪物による"劇画"と"映画"という『コミック&コミック』の近さは、やはり『ナウシカ』における"まんが"から"映画"への近さの問題と地続きだと私には思える」などと論じている。 1970年代後半には、自主映画、CMディレクター出身の大林宣彦が東宝で映画『HOUSE』を撮ろうとして、企画としては1975年に東宝の会議を通ったものの、撮影所の助監督経験のない大林が監督することに、当時の東宝の助監督たちが猛反対し、その後2年の間、映画製作は始まらず。この事態に業を煮やした大林は「『HOUSE』映画化を実験するキャンペーン」と銘打って、映画製作より先に『HOUSE』ブームを起こしてやろうと積極的にメディアに露出したり、『HOUSE』をラジオドラマにしたり、コミック化、ノベライズなど、大林主導で「メディアミックス」を仕掛けていき、これらが功を奏して知名度が上がって話題となり、東宝も企画を進めざるを得なくなって、2年後の1977年にようやく本体の映画化が決まったことがあった。既存の映画界とは別のところで仕事をしていた大林と角川春樹は、ほぼ同時期にそれぞれの方法で「メディアミックス」を仕掛けていた。これを「メディアミックス」の先駆と評価する見方もある。大林の「メディアミックス」の成功は、助監督経験のない、撮影所育ちでない映画監督の出現という映画界に新しい流れを生み出している。大林と角川が「メディアミックス」のヒントを得たのは、ともに1970年のアメリカ映画『ある愛の詩』である。 1980年代には月刊少年キャプテン(徳間書店)、月刊コミックコンプ(角川書店)、月刊コミックNORA(学習研究社)などのいわゆるマイナー系の漫画雑誌が登場し、やがてメディアミックス企画の漫画を多数連載することになる。
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