新エンゼル・プランとは? わかりやすく解説

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待機児童

(新エンゼル・プラン から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/08/07 08:49 UTC 版)

待機児童(たいきじどう)とは、日本において、子育て中の保護者保育所または学童保育施設に入所申請をしているにもかかわらず入所できず、入所待ちしている(待機)状態の児童をいう。

定義

保育所の待機児童は、入所・利用資格があるにもかかわらず、保育所が不足していたり定員が一杯であるために入所できずに入所を待っている児童のことと定義される[1]。古くは1960年代から1970年代にかけて第二次ベビーブームをうけた保育所不足の際に多数発生している(当時は同様の状態にある児童を「保留児」とも呼んだ[2])。1980年代には保育所不足はいったん沈静化したが、1990年代後半以降、特に大都市部で待機児童が増加している。

厚生労働省の統計では2003年度以降、“他に入所可能な保育所があるにもかかわらず第1希望の保育所に入所するために待機している児童”や“地方単独保育事業を利用しながら待機している児童”は、待機児童から除かれている。このため実質的な待機児童数は公表されている統計よりも多いとみられ、「潜在的待機児童」として取り上げることもある。

問題の概要

1990年代後半以降、一部の都市における待機児童数の急増が問題化している。2015年4月1日時点の待機児童数は全国で23,167人[3]で、10年前の2003年(26,383人)と比較すると数自体は減っている[4]が、2014年4月1日時点の21,371人[5]から5年ぶりの増加となった。その半年後の2015年10月1日時点では45,315人[3]と春より秋が多い傾向があり、年度内の変動も大きい。2013年時点で待機児童が最も多いのは東京都(8,117人)で、沖縄県は待機児童数で2位(2,216人)、待機児童率(保育所定員に対する待機児童の割合)で全国1位(6.35%)である。待機児童率1%以上が9都道府県存在し、東京都、沖縄県、宮城県の3都道府県が2.5%以上と他都道府県に比べて桁違いに高い。待機児童問題は都道府県により深刻さが大きく異なる[4]。待機児童がゼロの県は2015年4月1日時点で、11県だった(青森群馬新潟富山石川福井山梨長野鳥取香川宮崎)が、同年10月1日時点では富山・石川・福井・山梨・長野の5県にとどまっている[3]

2019年9月6日、厚生労働省は、認可保育施設に入れない待機児童は、同年4月1日時点で1万6772人になったと発表した[6]

なお学童保育(放課後児童クラブ・学童クラブ)においても待機児童が発生しており、その数は2015年5月1日時点で16,941人[7]であった。特に公立小学校では少子化や都市部のドーナツ化現象により学校統廃合が進行しており、公設学童クラブ(運営を民間に委託しているものを含む)において定員を大きく超えているケースが東京都中野区世田谷区八王子市等でみられる。待機児童がゼロの県は石川の1県のみだった[8]

人口の多い都心部を中心に待機児童が多い傾向にあるが、愛知県は東京や大阪と比較して待機児童が少ない傾向にある[9]

2019年9月30日、民間団体の「全国学童保育連絡協議会」は、「学童保育」(放課後児童クラブ)の待機児童が、同年5月1日時点で少なくとも1万8176人いると発表した[10]

問題の原因

人気のある都市への流入による人口集中が一因であると考えられるが、その他にも共働き家庭の増加や家庭環境の多様化など社会構造が大きく変化して夫婦共に時間の融通がない正社員の家庭が急増する中で、保育所の増設や受け入れ数増加など施設整備が立ち遅れたことなども原因である。高度経済成長期頃までは、いわゆる専業主婦モデルが最も豊かに経済成長させる仕組みだった[10]日本国憲法第14条(平等権)、女子差別撤廃条約男女雇用機会均等法育児休業制度等の理念や制度の普及により離職が減少し、出産後も正社員として働く女性の数は長期的にみると増加している[11]。既婚女性・乳幼児期子育て中の就業率は高度成長期でも50%以上だったが、時間に融通のきくパートタイムが圧倒多数だった[12]。一般的には、女性の社会進出、かつ正社員として働く女性が増えたことに加え、一人親家庭など日中の保育に欠ける家族形態があることが保育の需要増加の理由にあげられている。女性が働いて、夫が家庭で子育てに専念する「専業主夫」という形態もあるが、割合としては少数である。

また、本心では育児休業を延長するつもりで、その手続きに使うため、競争率が高い保育所へ敢えて申し込んで「落選通知」を得ようとする保護者が一部に存在している。こうした「落選狙い」組は統計上の待機児童数を増やしており、厚生労働省や各自治体が対策を検討・実施している[13]

住民の保育園反対

国や地方自治体は2010年代から特に待機児童対策に力を入れ、保育園の新設を検討するも、「静かな余生」を主張する高齢者など一部住民らの市民団体に騒音問題等により反対され自治体が断念するケースもある。保育所関係者はこのような反対者らを「理由をつけて建設中止を要求してくる」と批判している。為末大は「園児の声は無条件で騒音とは見なさないとする条例を作ってくれたら」と提唱し、国や自治体が一部の近隣住民の反対運動などは無視出来るような法令の制定にしてはどうか、と意見している程である。更に、いったんは当初の待機児童解消させても、そのような福祉が充実している自治体への他地域から移住者の増加、補助金の増加や入れ人数の拡大が「子どもを預けて働きたい」という「潜在的需要の掘り起こし」で待機児童が続々と出てくるなど結果的に「鼬ごっこ」になっている。そのため、国や自治体が力を入れてるのに減るどころか逆に希望者が増加する状況に地域住民の建設反対運動など解決するには難しい問題になっている[14][15][16][17][18][19][20][21][22]

問題の経過

日本では少子化が進行しつつあり、労働力人口は将来確実に減少するため、日本政府は育児世代の女性を労働力として活用することを推進している[23]。また価値観や消費者ニーズが多様化しているために保護者の就労形態・就労時間も多様化しており、0-2歳児保育、長時間・夜間保育の拡充を求める意見[要出典]が多い。

1980年代までは保育所は3歳児以後の入所が中心となっており、0歳児保育(出産休暇期間後)や1歳児保育(育児休業期間後)に対応する事は難しかった。第二次ベビーブーム世代の卒園とその後の少子化により保育所定員は1981年をピークに減少、保育所数も1985年をピークに減少傾向にあった。

子育て世代の就労支援のため、政府は1994年以降「エンゼルプラン」をはじめとする保育所待機児童対策を打ち出した。2003年より待機児童数はいったん減少に転じたが、2009年には2002年当時の水準まで増加した。これは保育所の整備によって潜在的保育需要(働いてはいないが就労を希望する子育て世代)[24]が掘り起こされたことや、認可外保育施設利用者が認可保育所に入所を希望するようになったことが原因と考えられる。

内訳でみると、3歳以上児の待機児童数は1999年以降は減少を続けており、2009年には4,588名(1998年の約3分の1)となったのに対し、3歳未満児は2009年には2001年と同水準であることから、現在の待機児童は1歳児を中心とした低年齢児が多いといえる。

待機児童数の推移

保育所数・定員数の推移

保育所数・定員数の推移 (1985年~2001年)
1980 1981 1985 1990 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001
保育所数 22,899 22,703 22,526 22,488 22,438 22,387 22,332 22,270 22,195 22,218
定員数 2,168,811 2,078,765 1,979,459 1,934,670 1,922,835 1,917,206 1,915,599 1,913,951 1,917,536 1,923,157 1,937,132
保育所利用数 1,996,082 1,843,550 1,723,775 1,675,877 1,678,866 1,701,655 1,738,802 1,695,908 1,740,607 1,788,302 1,828,312
(内、3歳未満児) 480,520 503,163 526,730
(内、0歳児) 59,062 62,882 65,798
(内、1・2歳児) 421,458 440,281 460,932
(内、3歳以上児) 1,210,750 1,233,118 1,261,572
定員充足率 88.7% 87.1% 86.6% 87.3% 88.8% 90.8% 88.6% 90.8% 93.0% 94.4%
待機児童数 28,481 32,855 40,523 39,545 32,225 32,933 21,201
(内、3歳未満児) 25,601 21,111 21,999
(内、0歳児) 6,479 4,447 4,415
(内、1・2歳児) 19,122 16,664 17,584
(内、3歳以上児) 13,944 11,114 10,934
保育所数・定員数の推移 (2002年~2012年) [25] [26] [27] [28] [29] [30] [31] [32]
2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011[33] 2012
保育所数 22,272 22,355 22,490 22,570 22,699 22,848 22,909 22,925 23,068 23,385 23,711
定員数 1,957,626 1,990,295 2,028,045 2,052,729 2,079,406 2,105,453 2,120,889 2,132,081 2,157,890 2,204,393 2,240,178
保育所利用数 1,879,349 1,920,591 1,966,929 1,933,684 2,003,610 2,015,382 2,022,173 2,040,974 2,080,114 2,122,951 2,176,802
(内、3歳未満児) 572,863 594,759 618,175 632,011 640,293 654,754 676,590 709,399 742,085 773,311 798,625
(内、0歳児) 71,146 73,085 76,436 78,658 78,420 84,297 88,189 92,606 99,223 105,366 108,950
(内、1・2歳児) 501,717 521,674 541,739 553,353 561,873 570,457 588,401 616,793 642,862 667,945 689,675
(内、3歳以上児) 1,306,486 1,325,832 1,348,754 1,361,673 1,363,317 1,360,628 1,345,583 1,331,575 1,338,029 1,349,640 1,378,177
定員充足率 96.0% 96.5% 97.0% 97.1% 96.4% 95.7% 95.3% 95.7% 96.4% 96.3% 97.2%
待機児童数 25,447 26,383 24,245 23,338 19,794 17,926 19,550 25,384 26,275 25,556 24,825
(内、3歳未満児) 16,792 17,893 16,446 15,831 13,650 12,942 14,864 20,796 21,537 21,109 20,207
(内、0歳児) 2,915 2,932 2,417 2,417 1,981 2,069 2,404 3,304 3,708 3,560 3,170
(内、1・2歳児) 13,877 14,961 14,029 13,414 11,669 10,873 12,460 17,492 17,829 17,549 17,037
(内、3歳以上児) 8,655 8,490 7,799 7,507 6,144 4,984 4,686 4,588 4,738 4,447 4,618
保育計画策定都市数 119 95 94 81 74 84 101 101 94 107

保育計画策定都市(上位10都市)の変遷

保育計画策定都市(上位10都市)の変遷 (2001年~2008年)
2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008
1位 大阪府
大阪市
1,364人 大阪府
大阪市
1,337人 大阪府
大阪市
1,355人 神奈川県
横浜市
1,190人 大阪府
大阪市
904人 大阪府
大阪市
846人 大阪府
大阪市
744人 宮城県
仙台市
740人
2位 大阪府
東大阪市
1,076人 神奈川県
横浜市
1,140人 神奈川県
横浜市
1,123人 大阪府
大阪市
919人 大阪府
堺市
752人 兵庫県
神戸市
560人 神奈川県
横浜市
576人 神奈川県
横浜市
707人
3位 神奈川県
横浜市
1,040人 兵庫県
神戸市
1,076人 兵庫県
神戸市
934人 大阪府
堺市
868人 兵庫県
神戸市
652人 神奈川県
川崎市
480人 兵庫県
神戸市
489人 大阪府
大阪市
696人
4位 兵庫県
神戸市
778人 神奈川県
川崎市
705人 大阪府
堺市
832人 神奈川県
川崎市
755人 神奈川県
横浜市
643人 大阪府
堺市
463人 神奈川県
川崎市
465人 神奈川県
川崎市
583人
5位 神奈川県
川崎市
655人 大阪府
東大阪市
631人 神奈川県
川崎市
699人 兵庫県
神戸市
623人 神奈川県
川崎市
597人 福岡県
福岡市
403人 宮城県
仙台市
390人 兵庫県
神戸市
487人
6位 大阪府
堺市
626人 愛知県
名古屋市
618人 宮城県
仙台市
637人 大阪府
東大阪市
489人 福岡県
福岡市
432人 愛知県
名古屋市
362人 沖縄県
那覇市
379人 愛知県
名古屋市
428人
7位 宮城県
仙台市
488人 宮城県
仙台市
604人 愛知県
名古屋市
499人 宮城県
仙台市
462人 東京都
足立区
427人 神奈川県
横浜市
353人 東京都
江東区
千葉県
千葉市
352人 東京都
世田谷区
335人
8位 東京都
足立区
380人 大阪府
堺市
536人 大阪府
東大阪市
485人 愛知県
名古屋市
461人 愛知県
名古屋市
423人 鹿児島県
鹿児島市
350人 大阪府
堺市
349人
9位 東京都
世田谷区
360人 神奈川県
相模原市
452人 福岡県
福岡市
435人 福岡県
福岡市
447人 神奈川県
相模原市
383人 東京都
足立区
348人 愛知県
名古屋市
342人 東京都
八王子市
336人
10位 東京都
江東区
318人 福岡県
福岡市
433人 神奈川県
相模原市
402人 神奈川県
相模原市
410人 奈良県
奈良市
352人 愛知県
名古屋市
320人 東京都
八王子市
336人 大阪府
堺市
349人
保育計画策定都市(上位10都市)の変遷 (2009年~2012年)
2009 2010 2011 2012
1位 神奈川県
横浜市
1,290人 神奈川県
横浜市
1,552人 愛知県
名古屋市
1,275人 愛知県
名古屋市
1,032人
2位 神奈川県
川崎市
713人 神奈川県
川崎市
1,076人 神奈川県
横浜市
971人 北海道
札幌市
929人
3位 宮城県
仙台市
620人 北海道
札幌市
840人 北海道
札幌市
865人 福岡県
福岡市
893人
4位 東京都
世田谷区
613人 東京都
世田谷区
725人 神奈川県
川崎市
851人 東京都
世田谷区
786人
5位 大阪府
大阪市
608人 愛知県
名古屋市
598人 福岡県
福岡市
727人 大阪府
大阪市
664人
6位 愛知県
名古屋市
595人 宮城県
仙台市
594人 東京都
世田谷区
688人 神奈川県
川崎市
615人
7位 兵庫県
神戸市
483人 東京都
練馬区
552人 東京都
練馬区
564人 兵庫県
神戸市
531人
8位 東京都
板橋区
481人 神奈川県
相模原市
514人 宮城県
仙台市
498人 東京都
練馬区
523人
9位 福岡県
福岡市
473人 東京都
八王子市
496人 沖縄県
那覇市
493人 大阪府
堺市
457人
10位 東京都
八王子市
453人 福岡県
福岡市
489人 東京都
足立区
485人 沖縄県
那覇市
436人

国の対策

待機児童問題は国の少子化対策・子育て支援政策の中で継続的に対策が練られている。1994年に策定された厚生省(当時)の「エンゼルプラン」以後、1999年の「新エンゼルプラン」、2001年の「待機児童ゼロ作戦」、2004年の「子ども・子育て応援プラン」、2008年の「新待機児童ゼロ作戦」によって、保育所数・定員数ともに第二次ベビーブームや男女雇用機会均等法施行を受けた1980年代を上回った。保育所利用数は過去記録の更新を続けている。東京都独自の制度である認証保育所制度(2001年開始)や保育の資格を有する者が自宅で児童を預かる保育ママ制度(2001年に国の制度化、2008年11月に児童福祉法改正により法制化)、事業所内・病院内保育施設など保育の場そのものは整備されつつある。2013年、政府と厚生労働省は2015年の待機児童ゼロに向けて数値と時期を明示した政策を発表した[34]。2010年に待機児童数1位だった横浜市は2013年5月、同4月1日時点での待機児童ゼロを達成したと発表して大きな注目を浴びた[35]。しかし、注目されたことで逆に「預けられるのなら働きたい」と需要が掘り起こされ、利用申請が殺到し、翌2014年4月1日に待機児童が生じる事態になっている[36]

エンゼルプラン

少子化対策として、1994年12月に文部省・厚生省・労働省・建設省(いずれも当時)が合同で制定した子育て支援施策[施策 1][施策 2]。「低年齢児(0〜2歳児)保育、延長保育、一時的保育の拡充等ニーズの高い保育サービスの整備を図るとともに、保育所制度の改善・見直しを含めた保育システムの多様化・弾力化を進める」「保育所が乳児保育、相談指導等多様なニーズに対応できるよう施設・設備の改善・整備を図る」「低年齢児の受入の促進及び開所時間延長の促進のため保育所の人的な充実を図るとともに乳児や第3子以上の多子世帯等の保育料の軽減を図る」と謳い、具体的には1999年度末の目標を「3歳未満児の保育所収容数60万人、延長保育実施7,000ヶ所、一時保育実施3,000ヶ所、多機能保育所1,500ヶ所」とした。

新エンゼルプラン

エンゼルプランを承継する計画として1999年12月に制定[施策 3]。「多様な需要に応える保育サービスの推進」が打ち出された。2004年度末の目標を「3歳未満児の保育収容数68万人、延長保育実施10,000ヶ所、一時保育実施3,000ヶ所、多機能保育所2,000ヶ所、休日保育300ヶ所、病後児保育500ヶ所」とした。

待機児童ゼロ作戦

2001年7月に制定[施策 4]。待機児童の解消を目指すと明記され、特に都市部の保育施設を重点整備するとした。公設保育施設の運営を民間事業者に委託する公設民営型を推進し、学校の空き教室や駅など拠点施設の保育への活用の支援・助成が打ち出された。2004年度末までに「児童受け入れ数15万人増加させる」とした。

少子化対策プラスワン

2002年9月に厚生労働省が立案[施策 5]。パートタイム労働者のための特定保育事業の創設、民間事業者の参入規制の緩和、幼稚園における預かり保育の推進などを策定した。

次世代育成支援に関する当面の取組方針

従来の取り組みに加えた取り組みとして2003年3月に立案[施策 6]。一定の待機児童を有する市町村及び都道府県に対し、保育計画を策定するよう法制化して義務付けた。

子ども・子育て応援プラン

新エンゼルプランを受けたものとして2004年12月に制定された[施策 7]。2009年度末の目標を「一時保育実施9,500ヶ所、延長保育実施16,200ヶ所、休日保育2,200ヶ所、夜間保育140ヶ所、保育所受け入れ児童数拡大215万人」とした。

新待機児童ゼロ作戦

2008年2月に制定[施策 8]。量的な整備拡充だけでなく、子どもの健やかな育成と保護者の安心確保のために質的なサービス拡充の保障を謳った。2018年度末までに3歳未満児への保育サービス提供割合を38%に拡大(現行20%)すること、保育サービス利用児童数を100万人増やすことを目標とした。

次世代育成支援のための新たな制度体系の設計に向けて

2009年2月に厚生労働省の少子化対策特別部会が取りまとめた第1次報告[施策 9]。保育所事業への市町村の実施責務を明示し、市町村が個別ケースの保育の必要性や優先的利用ケース(母子家庭や虐待ケース等)の要否を認定するとした一方、保育契約は利用者が保育所と直接締結するとし、受け入れの応諾等は保育所に義務化した。また、保育の質を保障するため利用料は所得によらず公定価格とすること等が明記された。

子ども・子育てビジョン

子ども手当の導入や高校教育の実質無償化等の実施に向けて、保育サービス等を含めた総合的な「子ども・子育てビジョン」を2010年2月に制定[施策 10]。幼児教育と保育の総合的な提供、いわゆる「幼保一体化」が盛り込まれた。2014年度末の目標を「平日昼間の保育サービス利用241万人、3歳未満児の利用102万人、延長・夜間等保育サービス96万人、病児・病後児保育200万人日(のべ日数)」とし、2012年度末までに認定こども園を2,000ヶ所以上設置するとした。

企業主導型保育施設

公営の施設だと、大阪府などでかつて問題になった異常に高い給与[37]や放漫経営のために、民間経営への補助金とは比較にならない莫大な税金が大量投入され続ける慢性的な赤字施設になることが多い[要出典]。更に民間経営であっても専業保育園は運営者らのみが高い収益によって儲けていても、国や地方自治体からの補助金の使途を監査しにくい業務システムで問題がある。そのため、売り手市場になった昨今、人手不足になった民間企業側と公営のためにおこる無駄と不足・設置反対住民による遅延を危惧する政府側の利害が一致した制度である企業主導型保育施設を設けることを推奨する計画を立てている。三菱UFJリサーチ&コンサルティングは公営保育園や専業保育園ではなく、そもそもの待機児童問題の原因ともいえる市場競争が起きないことも解決する企業主導型保育施設が2017年以降は次第に主流になっていくだろうと述べている[38]。2018年には岐阜県では人手不足を背景に、従業員のための企業主導型保育施設を設置する民間企業が急増している[39]

訴訟

東大阪保育所入所裁判

  • 平成10年10月 東大阪市において父母8組が原告となり、保育所入所保留処分の取消を求める行政訴訟を起こした。
東大阪市では、毎年数百名の待機児童があったが、公立保育所は昭和52年、私立保育所は昭和59年を最後に新設がなかった。
翌11年の3月までに、原告たちの養育する児童は全員保育所に入所した。
  • 平成11年3月 訴えの内容を10年度の保育所入所保留処分の違法による損害賠償を求める国家賠償請求に変更した。原告は3組となった。
  • 平成14年6月、大阪地裁は、東大阪市の行政手続が行政手続法第5条3項(審査基準の公開)、同法第8条1項(処分理由の提示)、行政不服審査法第25条1項ただし書(審査請求人の口述機会)、同法41条1項(裁決理由の通知)に違反したとして、原告らに15万円ずつ(総額90万円)の慰謝料の支払を東大阪市に命じた。[40]

脚注・出典

  1. ^ 庄司洋子他編『福祉社会辞典』p.668, 弘文堂, 1999年.
  2. ^ 待機児童とは何か(PDF), 『現代社会における保育所入所待機問題』第1章, 大畑陽平(京都学園大学), 2012年.
  3. ^ a b c 厚労省 平成27年4月の保育園等の待機児童数とその後
  4. ^ a b 保育所整備と待機児童解消及び出生率向上の関係分析(PDF), 三重県戦略企画部統計課, 2014年4月.
  5. ^ 厚労省 保育所関連状況取りまとめ(平成26年4月1日)
  6. ^ “待機児童、最少って… 残る1万人超「無償化より園を」:朝日新聞デジタル”. (2019年9月9日). https://www.asahi.com/articles/ASM96571MM96UTFK013.html 
  7. ^ 産経ニュース 学童保育の待機児童、最多の1万6941人 厚労省「6年生まで対象拡大など影響」 厚生労働省,2015年12月18日発表
  8. ^ 厚労省 平成27年 放課後児童健全育成事業(放課後児童クラブ)の実施状況(5月1日現在)
  9. ^ mw.nikkei.com/sp/#!/article/DGXLASFD02H2T_S6A900C1L91000/
  10. ^ 実際に都市部では専業主婦がいるサラリーマン家庭が多かった。ただし、農漁村や商家など自営業者では家業で働くことが通例であった。
  11. ^ 厚生労働省 (2008年3月28日). “「平成19年版 働く女性の実情」” (PDF). 図表1-1-6 勤続年数階級別一般労働者構成比の推移. pp. 4頁. 2009年2月20日閲覧。
  12. ^ 平成23年版働く女性の実情, 厚生労働省
  13. ^ 保育所あえて「落選狙い」育休延長目的で横行/厚労省 応募本気度 確認制を検討『読売新聞』朝刊2018年10月21日(社会面)。
  14. ^ [1]
  15. ^ [2]
  16. ^ [3]
  17. ^ [4]
  18. ^ [5]
  19. ^ [6]
  20. ^ [7]
  21. ^ [8]
  22. ^ [9]
  23. ^ 社会保障審議会少子化対策特別部会 (2009年2月24日). “次世代育成支援のための新たな制度体系の設計に向けて” (PDF). 労働市場参加が進まない場合の労働力の推移. pp. 10頁. 2009年6月30日閲覧。
  24. ^ 社会保障審議会少子化対策特別部会 (2009年2月24日). “次世代育成支援のための新たな制度体系の設計に向けて” (PDF). 子どものいる女性の就労希望. pp. 9頁. 2009年6月30日閲覧。
  25. ^ 保育所待機児童数(平成24年10月), 厚生労働省, 2013年3月
  26. ^ 保育所関連状況取りまとめ(平成24年4月1日), 厚生労働省, 2012年9月
  27. ^ 保育所待機児童数(平成23年10月), 厚生労働省
  28. ^ 保育所関連状況取りまとめ(平成23年4月1日), 厚生労働省
  29. ^ 保育所待機児童数(平成22年10月), 厚生労働省
  30. ^ 保育所関連状況取りまとめ(平成22年4月1日), 厚生労働省
  31. ^ 保育所待機児童数(平成21年10月), 厚生労働省
  32. ^ 保育所関連状況取りまとめ(平成21年4月1日), 厚生労働省
  33. ^ 東日本大震災の影響により、岩手県陸前高田市・大槌町、宮城県山元町・女川町・南三陸町、福島県浪江町、広野町、富岡町については未集計
  34. ^ 待機児童の速やかな解消に向けて, 厚生労働省, 2013年3月21日.
  35. ^ 平成25年4月1日現在の保育所待機児童数について, 横浜市子ども青少年局, 2013年5月20日.
  36. ^ 横浜市の待機児童、2年連続ゼロはならず 注目され殺到, 朝日新聞2014年5月20日付(2014年7月11日閲覧).
  37. ^ 給食おばちゃん、道路指導員、役所、保育士、看護師、教師など。
  38. ^ 「2017年 日本はこうなる」 p14,三菱UFJリサーチ&コンサルティング ,2016年
  39. ^ 従業員向け企業保育所 県内急増 9市に24施設
  40. ^ 大阪地方裁判所 (2002年6月28日). “平成10(行ウ)62 損害賠償請求事件” (PDF). 2009年6月23日閲覧。

待機児童解消施策

  1. ^ 文部省・厚生省・労働省・建設省 (1994年12月16日). “今後の子育て支援のための施策の基本的方向について”. 2009年7月21日閲覧。
  2. ^ 大蔵・厚生・自治3大臣合意 (1994年12月18日). “当面の緊急保育対策等を推進するための基本的考え方”. 2009年7月21日閲覧。
  3. ^ 大蔵・文部・厚生・労働・建設・自治6大臣合意 (1999年12月19日). “重点的に推進すべき少子化対策の具体的実施計画について”. 2009年7月21日閲覧。
  4. ^ 閣議決定 (2001年7月6日). “仕事と子育ての両立支援策の方針について”. 待機児童ゼロ作戦 -最小コストで最良・最大のサービスを-. 2009年7月21日閲覧。
  5. ^ 厚生労働省 (2002年9月20日). “少子化対策プラスワン ―少子化対策の一層の充実に関する提案―”. 2009年8月29日閲覧。
  6. ^ 少子化対策推進関係閣僚会議 (2003年3月14日). “次世代育成支援に関する当面の取組方針”. 2009年8月29日閲覧。
  7. ^ 少子化社会対策会議決定 (2004年12月24日). “少子化社会対策大綱に基づく重点施策の具体的実施計画について”. 2009年7月21日閲覧。
  8. ^ 厚生労働省 (2008年2月27日). “「新待機児童ゼロ作戦」について” (PDF). 2009年7月21日閲覧。
  9. ^ 厚生労働省社会保障審議会少子化対策特別部会 (2009年2月21日). “社会保障審議会少子化対策特別部会 第1次報告 -次世代育成支援のための新たな制度体系の設計に向けて-”. 2009年8月29日閲覧。
  10. ^ 子ども・子育てビジョン~子どもの笑顔があふれる社会のために~” (PDF). 内閣府政策統括官(共生社会政策担当) (2010年1月29日). 2010年4月1日閲覧。

関連項目

外部リンク


新エンゼルプラン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/05/21 02:22 UTC 版)

新エンゼルプランは、1999年12月19日に、大蔵文部厚生労働建設自治の6大臣合意で策定された少子化対策の2004年度目標の実施計画の通称。「重点的に推進すべき少子化対策の具体的実施計画について」が正式名称。少子化傾向を食い止めるため、共働き家庭の育児を援護するなどさまざまな施策が盛り込まれてきたが、一度も成功したことがない。

この項で「エンゼルプラン」、「新新エンゼルプラン」(「子ども・子育て応援プラン」)などについても記述する。

エンゼルプラン

1994年(平成6年)に文部・厚生・労働・建設各大臣(当時)の合意により、1995年から実施された「子育て支援のための総合計画」のこと。少子化の進展を受け、政府の政策の柱とされている。低年齢児を受け入れるための保育所の増設、時間延長・休日保育などが盛り込まれている[1]

平成5年のわが国の出生数は、118万人であり、これは、戦争直後(昭和22年)の268万人の半分以下である。また、女性が一生の間に生む子どもの数を示す合計特殊出生率は1.46と史上最低を記録した。少子化については、子ども同士のふれあいの減少等により自主性や社会性が育ちにくいといった影響や、年金などの社会保障費用に係る現役世代の負担の増大、若年労働力の減少等による社会の活力の低下等の影響が懸念されている。こうした状況を踏まえ、少子化の原因や背景となる要因に対応して子ども自身が健やかに育っていける社会、子育てに喜びや楽しみを持ち安心して子どもを生み育てることができる社会を形成していくことが必要である。子育てはとかく夫婦や家庭の問題ととられがちであるが、その様々な制約要因を除外していくことは、国や地方自治体はもとより、企業・職場や地域社会の役割でもある。そうした観点から子育て支援社会の構築を目指すことが要請されている[2]

1999年度には、計画の見直しがなされ、「新エンゼルプラン」が策定された[1]

新エンゼルプラン

2000年に発表された、子育てを支援するための計画。「少子化対策推進基本方針」にもとづく重点施策の具体的実施計画として大蔵・文部・労働・建設・自治の6大臣の合意により策定された。「重点的に推進すべき少子化対策の具体的実施計画について」が正式名称[3]

少子化対策については、これまで、「今後の子育て支援のための施策の基本的方向について」(平成6年12月文部・厚生・労働・建設4大臣合意)及びその施策の具体化の一環としての「当面の緊急保育対策等を推進するための基本的考え方」(平成6年12月大蔵・厚生・自治3大臣合意)等に基づき、その推進を図ってきたところであるが、今般、「少子化対策推進関係閣僚会議」で決定された「少子化対策推進基本方針」において、重点的に実施すべき対策の具体的実施計画を取りまとめることとされたことから、このプランを策定する[4]

重点的に取り組む8つの目標は、

  1. 「保育サービス等子育て支援サービスの充実」
  2. 「仕事と子育ての両立のための雇用環境の整備」
  3. 「働き方についての固定的な性別役割分業や職場優先の企業風土の是正」
  4. 「母子保健医療体制の整備」
  5. 「地域で子どもを育てる教育環境の整備」
  6. 「子どもたちがのびのび育つ教育環境の実現」
  7. 「教育に伴う経済的負担の軽減」
  8. 「住まいづくりやまちづくりによる子育ての支援」。

また数値目標も設定されている。すでに94年に、子育て支援施策の10か年基本計画案として発表された通称「エンゼルプラン」とその数値目標を盛り込んだ緊急保育対策等5か年事業を引き継いでいるため、新エンゼルプランと呼ばれている。89年の1.57ショックに始まる少子化への国の危機意識が背景にあり、保育サービス分野だけでも、0〜2歳の低年齢児保育、保育時間延長・休日・病児など多様な保育ニーズへの対応や専業主婦家庭も視野に入れた一時保育サービスの整備が掲げられている。男女共同での子育てを阻害する性別役割分 業観や労働環境の伝統的な側面にまで言及しているのは画期的であるが、その実効性と具現化が課題である[5]

2005年度からは、少子化社会対策大綱にもとづく「子ども・子育て応援プラン」(新新エンゼルプラン)が実施された[3]

待機児童ゼロ作戦

2001年に厚生労働省が発表。国の認可する保育園に入りたくても定員のために入れず、基準を満たさない保育施設などを利用している児童を待機児童と言う。待機児童が2001年の時点で約3万5000人おり、仕事と子育ての両立を図るうえで問題となっていた。そこで、この作戦では、2002年までに5万人、2004年までにさらに10万人、合わせて15万人の受け入れ児童数の増加を目指すとした[6]

厚生労働省はその際、待機児童の定義を改めて、地方自治体や民間が運営する保育施設を利用している児童をカウントしないことにした。つまり、どこの保育所にも入れず家にいる児童を待機児童としたのである。しかし、待機児童数は(従来の定義でも新しい定義でも)減少せず、むしろ増加した。また、基準を緩和して認可する・既存の保育園に定員以上詰め込むなどして強引に待機児童を減らそうとしたため、保育施設の質の低下も問題となった[6]

なお、厚生労働省は2008年に新待機児童ゼロ作戦を発表した。2017年までに保育所などでの受け入れ児童数を100万人増やすという数値目標とともに、福田首相(当時)の指示で家庭福祉員(自宅で子供を預かる保育ママ)の充実を図るなどの目標が盛り込まれた[6]

少子化対策プラスワン

2002年、厚生労働省が新エンゼルプランに上乗せする形で発表。子育て期間における残業時間の縮減・子供が生まれたら父親の誰もが最低5日間の休暇取得・男性の育児休業取得率10%の目標など、男性の働き方を見直し、育児参加を求める内容が盛り込まれた[6]

少子化社会対策基本法

2003年制定。子供が心身ともに健やかに育ち、子供を生み育てる者が真に誇りと喜びを感じることができる社会を実現し、少子化に歯止めをかけるため、国・地方団体・事業主・国民それぞれの責務を明記した[6]

これに基づいて策定されたのが、子供・子育て応援プランである。それまでの政府の対策が保険事業に集中していたのに対し、「若者の自立とたくましい子供の育ち」などを重点課題として掲げ、若者の教育や働き方の見直しなどを含めた内容となった[6]

次世代育成支援対策推進法

2003年制定。子供を安心して生み育てることができる環境の整備を基本理念として、国・地方団体・企業のそれぞれに行動計画(2005~2015年の11年間)を策定することを義務づけた。各自治体の計画では、児童手当てや1人親家庭の自立支援などが盛り込まれている[6]

子ども・子育て応援プラン

2005年度からは、「少子化社会対策大綱」にもとづく「子ども・子育て応援プラン」(新新エンゼルプラン)となった[3]

少子化社会対策基本法に基づき、国の基本施策として、「少子化社会対策大綱」(平成16年6月4日閣議決定)を策定し、少子化の流れを変えるための施策を強力に推進することとしているが、本大綱に盛り込まれた施策について、その効果的な推進を図るため、重点施策の具体的実施計画として、この「少子化社会対策大綱に基づく重点施策の具体的実施計画について」を策定する。本計画では、大綱に盛り込まれた施策のうち、地方公共団体や企業等とともに計画的に取り組む必要があるものについて、平成21年度までの5年間に講ずる具体的な施策内容と目標を掲げるとともに、施策の実施によって子どもが健康に育つ社会、子どもを生み、育てることに喜びを感じることができる社会への転換がどのように進んでいるのかが分かるよう、概ね10年後を展望した、目指すべき社会の姿を掲げ、それに向けて、この5年間に施策を重点的に取り組んでいくこととする。今後、本計画に基づき、夢と希望にあふれる若者が育まれ、家庭を築き、安心と喜びを持って子育てに当たっていくことを社会全体で応援する環境が整ってきたという実感の持てるよう、内容や効果を評価しながら、政府を挙げて取組を強力に進めていく[7]

1995年度から政府による本格的な子育て支援政策として実施されているエンゼルプラン(5年ごとに策定)の、3期目となる2005年度からのプラン。00年度に始められた新エンゼルプランは、保育関係施設・サービス充実に対する支援を中心とした対策であったが、少子化の進行を食い止める決め手にならなかった。子ども・子育てプランでは、少子化社会対策基本法(03年7月成立)に基づく少子化対策大綱で示された、(1)若者の自立、(2)職場・働き方の見直し、(3)子供や家庭の大切さへの理解、(4)地域の子育て支援、などを重点的な課題として施策と目標を設定、子育て世代の働き方と若者自立策に対策を拡大している。さらに、次世代育成支援対策推進法の行動計画と関連付けるものとされ、100%の企業での育児休業制度の定着、30代男性の労働時間の短縮と育児休業取得率引き上げ(10%まで)、女性の育児休業取得率引き上げ(80%まで)、などが目指されている。学生に対しては就業体験の推進や若年者試行雇用の拡大などが織り込まれている[8]

子ども・子育てビジョン

民主党政権のもと、「子ども・子育てビジョン」が行われた[3]

子どもを大切にする社会をつくりたいと思います。それはわたしたち人間すべてが子どもである時代を経て、大人へと成長する存在だからです。子どもは社会の希望であり、未来の力です。子どもの笑顔があふれる社会は個人の希望や夢を大切にする社会です。だからこそ社会全体で子どもと子育てを応援していきたいと思います。子どもにとって安全で安心な社会は、すべての人にとっても安全で安心な社会でもあります。キッズデザインの普及や、質の高い子どもの居場所づくりは、日本経済の活力にもなりえるのです。わたしたちは子どもが社会の主体的な一員であると位置づけ、その子どもと子育てを国、地方、企業(職域)、地域、NPO、家庭、個人など社会全体で応援する姿勢を明確に打ち出すことで、豊かな日本社会をつくり続けていきたいと考えています。また近年、家庭や家族の形態、親の就業の有無や状況、個人のライフスタイルは実に多様化しています。離婚や死別によるひとり親家庭、虐待を受けた子どもたち、障害のある子どもたち、定住外国人の子どもたち、など特別な支援が必要な子どもが増えています。「教育の格差」「子どもの貧困」の問題が懸念されている時代だからこそ、格差や貧困をなくし、その連鎖を防止していくことがわたしたちに求められています。わたしたちは、子どもの権利条約も踏まえ、すべての子どもたちが尊重され、その育ちが等しく確実に保障されるよう取り組まなくてはなりません[9]

待機児童解消加速化プラン

保育所に入れない待機児童の解消に向け、安倍首相が4月に発表した。2014年度末までを「緊急集中取組期間」として保育所の定員を20万人分増やし、その後の3年間でさらに20万人増やすことで、保育ニーズのピークを迎える2017年度末までに待機児童ゼロを目指す。安倍首相は「3年間抱っこし放題での職場復帰を総合的に支援する」とも発言し、現在は最長で1年半の育休期間を3年間に延長するよう経済団体に要請した[10]

子ども・子育て支援新制度

平成24年8月に成立した「子ども・子育て支援法」、「認定こども園法の一部改正」、「子ども・子育て支援法及び認定こども園法の一部改正法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」の子ども・子育て関連3法に基づく制度のことをいう。新制度は平成27年4月に本格施行を予定している[11]

脚注

  1. ^ a b 清水書院『用語集 倫理 最新第2版』234頁「エンゼルプラン」
  2. ^ 「今後の子育て支援のための施策の基本的方向について」(平成6年12月16日 文部・厚生・労働・建設省)
  3. ^ a b c d 清水書院『用語集 倫理 最新第2版』234頁「新エンゼルプラン」
  4. ^ 「重点的に推進すべき少子化対策の具体的実施計画について 策定の趣旨」
  5. ^ コトバンク > 知恵蔵2014 > 新エンゼルプランとは 中谷茂一 聖学院大学助教授 / 2008年
  6. ^ a b c d e f g 旺文社『2010~2011 小論文 時事テーマとキーワード 看護医療編』別冊 12 少子高齢化する社会 政府の少子化対策
  7. ^ 「少子化社会対策大綱に基づく重点施策の具体的実施計画について 策定の趣旨」
  8. ^ コトバンク > 知恵蔵2014 > 子ども・子育て応援プランとは 小川直宏 日本大学教授 / 2007年
  9. ^ 「子ども・子育てビジョン ~子どもの笑顔があふれる社会のために~ 子どもが主人公(チルドレン・ファースト)」
  10. ^ コトバンク > 朝日新聞掲載「キーワード」 > 待機児童解消加速化プランとは 2013-06-25 朝日新聞 朝刊 滋賀全県 1地方
  11. ^ 「子ども・子育て支援新制度 制度の概要」

関連項目

参考資料


新エンゼルプラン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/01/08 20:59 UTC 版)

待機児童」の記事における「新エンゼルプラン」の解説

エンゼルプラン承継する計画として1999年12月制定。「多様な需要応える保育サービス推進」が打ち出された。2004年度末の目標を「3歳未満児の保育収容数68万人延長保育実施10,000ヶ所、一時保育実施3,000ヶ所、多機能保育所2,000ヶ所、休日保育300ヶ所、病後保育500ヶ所」とした。

※この「新エンゼルプラン」の解説は、「待機児童」の解説の一部です。
「新エンゼルプラン」を含む「待機児童」の記事については、「待機児童」の概要を参照ください。

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