建築要件とは? わかりやすく解説

建築要件

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/01 04:52 UTC 版)

世界平和記念聖堂」の記事における「建築要件」の解説

ラッサール神父今井兼次相談の上で、建築要件として募集要項掲げデザインの方向性次のように明確に決めた世界平和の礎に其の生命捧げた人々記念する為、旧広島カトリック聖堂跡に、本教会は新しく此の聖堂建築計画した此の計画世界平和象徴としてローマ法王ピオ十二世賛成受けたのみならず日本内外多く人々に強い感動与えている。本計画に於ては優れた日本的性格発揮すると共に戦後日本新し時代応ず提案望んでいる。此の主旨に基いて下記要項掲げる。1. 聖堂様式日本的性格尊重し、最も健全な意味でのモダン・スタイルである事、従って日本及び海外純粋な古典様式避くべきである。2. 聖堂外観内部は共に必ず宗教的印象与えなければならない。3. 聖堂記念建築としての荘厳性を持つものでなければならない。以上のモダーン日本的宗教的記念的と云う要求調和させる事が此の競技設計主眼である。 — 平和記念広島カトリック聖堂建築競技設計図集(広島カトリック教会編 / 洪洋社・1949年)より引用 まず明確にモダン・スタイル」であることと謳われているのは、ラッサール神父近代兵器破壊力惨禍直接経験したにもかかわらず科学技術進歩自体人類使命であり、むしろそれは人類にとっての誇りでもあると考えていたからである。 宗教的荘厳性と記念碑性は、施設まずもって原爆犠牲者慰霊するものであり、か史上まれに見る原爆被爆という事績を記念し人々絶えずその記憶呼び起こさせるものでなければならないことから必然的に導き出される条件である。また人類近代文明物質主義的な悪に打ち勝って真に平和な精神文明築いて行くための基礎となるような場は、建築民族国家宗教超えて全世界人々引き付ける普遍性をそこに感じさせるものでもなければならないそれゆえ特定の文明宗教容易く連想させる歴史主義的な引用避けるべきとされ、もとよりモダニズム建築インターナショナル・スタイルなものではあるが、モダンデザインにありがちな箱ものであっても、またアバンギャルド方向性での逸脱であってもならないがゆえに、そこを「最も健全な意味でのモダン・スタイルである事」と断っているのである。 しかし一方でまた、その建築日本的性格持ってなければならないともする日本的とあるのは、ラッサール神父が後に日本帰化して愛宮真備名乗ったように、彼が土着化意識していたからであり、また何よりもラッサール神父自身日本文化日本文明に対して、いまだ世界知られていないのような秘められた可能性があると信じていたからである。 終戦と共に日本新し時代はじまった新しき日本建設されなければならないが、この新たなる日本は古い日本深くその基礎持ちながら誕生する必要がある日本文化には世界知られずにいる貴い珠玉存在している。その価値ある宝を失ってならないフェニックスがいつもその灰から生まれかわると同じように、この日本古来の宝が新し日本清新な姿で復活しなければならない。…… — ラッサール神父談「世界平和記念聖堂 献堂50周年ニュース vol.1 7月号 」(2004年7月1日発行)より抜粋 世界平和高みへと新たな精神文明創出してゆく自覚をもった日本人出現期待し日本文明精神性による創造力信じてそれを希望し、それによって日本人繰り返し励ましたかったからだとも考えられるのである。単に西洋キリスト教会からの押しつけではなく日本人がこの教会自分たちのものでもあるとも感じて日本人自発的な参加意識促す必要もあったからである。それをもって日本的性格表現するのである。 このあちらを立てればこちらが立たず、こちらを立てればあちらが立たずといった、相矛盾する建築要項にある「モダン・日本的・宗教的記念的」という4条件は、ラッサール神父理念基づいて今井兼次との相談の上決まったものと考えられているが、ラッサール神父求め建築像が精神史において、このような文明史的な射程をもっていたことにより、デザイン的に矛盾する高度な条件課せられ、それゆえ日本近代建築史上初め世界の目を意識したコンペともなりかつまたこれが尋常でない数の応募と、尋常でない審査結果と、その後尋常でない成り行きとを生じさせて、結果的にそれらが設計者村野藤吾をして、建築家として渾身のパフォーマンス引き出させることになったのである

※この「建築要件」の解説は、「世界平和記念聖堂」の解説の一部です。
「建築要件」を含む「世界平和記念聖堂」の記事については、「世界平和記念聖堂」の概要を参照ください。

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