庁舎制導入の経緯
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2010年(平成22年)4月30日まで行われていた庁舎制は、つくば市役所の大きな特徴であるが、この庁舎制の採用はつくば市誕生の経緯と密接に関係している。 つくば市は筑波郡谷田部町・大穂町・豊里町・新治郡桜村が新設合併(対等合併)して1987年(昭和62年)11月30日に誕生した市である(筑波町と茎崎町は後に編入)。この合併は地域住民の望んだものというよりは、国や茨城県の要請によるところが大きい。筑波研究学園都市の建設自体が始めから一体的な都市の運営を前提としており、茨城県も国際科学技術博覧会(つくば科学万博)開幕を控えた1980年(昭和55年)以降、当時の竹内藤男茨城県知事が合併を促す発言を茨城県議会にて行っている。これに対して1981年(昭和56年)に筑波大学が行った住民意識調査では65.7パーセントが合併に賛成とする結果が出たが、時の谷田部町長は「避けて通れないが、今はその時期ではない」として合併に反対する姿勢を表明した。これにより、つくば市の誕生は万博の開幕には間に合わず、知事は1987年(昭和62年)6月21日に周辺町村長を集めて再度合併を要請した。この要請は同年11月20日までの合併を迫るもので、知事が示したスケジュールは4か月で合併協議から自治省(当時)による告示まで持ち込む、という慌ただしいものであった。この慌ただしさは多数の混乱を招き、谷田部町と大穂町の2町による先行合併が取り沙汰されると、大穂町議会に反対派住民が乱入して筑波警察署から警察官が駆け付けるという騒動が発生した。更に筑波町でも反対派住民が議会に乱入、筑波町長が辞意を表明するに至った。 以上を踏まえ、法定の「筑波研究学園都市関係町村合併協議会」は1987年(昭和62年)10月26日に谷田部町・大穂町・豊里町・桜村の3町1村で設立され、10月31日には合併協定書の調印が土浦市で行われた。短期の議論の中で協議会はつくば市役所について次のように決定した。 新市の事務所は、仮に筑南地方広域行政事務組合第1圏民センターに置くものとし、恒久的な事務所の位置は、新市発足後適当な時期に定める。 — 筑波研究学園都市4町村合併協定書 4 新市の事務所 (1)新市に、本庁、支所及び出張所を置く。(2)本庁においては、全市的立場から処理する事務を所掌する。支所では、現在の役場で処理している事務から本庁で処理すべき事務を除いた全ての事務を所掌し、出張所では、現在の支所で処理している事務を所掌する。 — 筑波研究学園都市4町村合併協定書 9 組織機構の取扱い こうしてつくば市は1987年(昭和62年)11月30日に誕生し、各町村役場はほぼそのままの機能を維持して新市の支所となった。また、各支所には副市長が置かれ、旧町村単位で予算も付けられた。翌年1月31日には筑波町を編入、筑波町役場は、そのまま筑波支所となった。 しかし、これでは合併のメリットである「行政の効率化」は図れないとして、早くも1988年(昭和63年)12月には機構が見直され、統合庁舎設置を目指した「庁舎建設準備室」が設置されたほか、一部の組織の本庁への統合が実施された。1990年(平成2年)6月には竹園地区を新庁舎建設候補地として公表した。そして、1991年(平成3年)4月1日、大規模な機構改革が実施され、各支所は「庁舎」に改称、各庁舎に市役所の機能を割り振る分庁方式が導入され、窓口サービスを扱う「支所」が併設された。導入理由として市は「現在の本庁舎では、全部の組織を吸収できないため、平成六年度予定の新庁舎完成までは、旧支所に振り分けて対応します」として、暫定的な措置である旨を表明した。これは各町村ごとの予算枠廃止に伴うものである。当時の各庁舎への部局の割り当ては以下の通り。なお、この時見送られた「農業委員会」の一本化は、同年5月8日に実施され、大穂庁舎に事務局が置かれた。 庁舎設置機構本庁舎 市長公室、企画部、都市開発部、常磐新線建設推進室、庁舎建設準備室 谷田部 総務部、財務部、出納室、市議会事務局、選挙管理委員会事務局、公平委員会事務局 桜 市民部、福祉部、水道課、教育委員会 豊里 保健衛生部 大穂 経済部 筑波 建設部、下水道部、監査委員事務局 その後、1994年(平成6年)に予定されていた新庁舎の竹園地区への設置計画は頓挫し、暫定措置である分庁方式は維持されることとなった。2002年(平成14年)11月1日には茎崎町を編入したことに伴い、茎崎庁舎にも市役所の一部機能が割り振られた。旧筑南水道企業団の庁舎も市有となり、春日庁舎として水道部がおかれた。
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