定期検査の短縮化(1990年代)
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「福島第一原子力発電所」の記事における「定期検査の短縮化(1990年代)」の解説
運転開始から20年程の年月が経過したことで、本発電所の定期検査工程は、トラブルや改造工事の入らない場合でも標準で90日余りを擁していたものが、機械化の進展、実績の積み重ねなどにより1990年代にはBWR-4で76日に短縮されていた。1990年代、本発電所の稼働率は順調に推移し、当時の世界的な平均値と比較しても高位の値を記録していたが一方で、世界原子力発電事業者協会(英語版)からの情報で海外では30-40日程度で検査を実施する事例についても知ることとなり、東京電力は現状の信頼性を確保することは前提としつつ、各原子力発電所にて定期検査日程を60日に短縮する目標を掲げ、一部のプラントで実施に移した。最初に実施されたのは1995年に本発電所4号機のケースである。 各工程での短縮は下記のように計画された。 標準定期検査と短縮定期検査の比較(4号機、BWR-4、第13回定期検査)クリティカル工程標準→短縮(単位:日)サブクリティカル工程標準→短縮(単位:日)サブクリティカル工程標準→短縮(単位:日)原子炉解放8→6 水圧制御ユニット点検28→24 海水系機器点検前半27→28及び後半28→22 燃料移動6→5 LPRM、CR取替4→3 CRD点検13→10 CRDエアーベント2→2 燃料装荷6→5 炉心確認4→3 原子炉復旧10→8 RPV L/T2→2 PCV復旧5→2 PCV L/T6→5 起動前試験7→7 系統構成4→2.5 起動3→2.5 全工程日数76→60 今後継続して実施することを前提としているため3交替作業はとらず、一部に2交替作業を導入するに留めた。短縮に当たっての課題は、初期のプラントであるため機器点検スペースが手狭で、設備も後発プラントに比較すると整っていない条件がネックとなり、下記のポイントを主として解決した。 スクリーン装置、循環水ポンプ (CWP)、残留熱除去系海水ポンプ (RHRSP) 機材分解用の門型クレーンが設置されていないため移動式クレーンを持ち込む必要があるが、ポンプのつり上げ、吊り込み作業などと干渉する。このため、人力での運搬可能な軽量足場を採用してクレーンの使用工程を短縮したり、仮設ハウスを設置して機器点検に供することで悪天候による工程遅延を防止、クレーン自体の工程表を作成してその管理の元に作業を実施した。取水路とは従来手作業で洗浄していたものをジェット水での洗浄に置き換えた。ジェット水洗浄の実施結果は良好だったため、爾後他の海水系ポンプ (ASWP, CWP) にも拡大適用することとした。また仮設ハウスを設置してスクリーン装置内の機器を点検することで、2月下旬のような風雪交じりの悪天候下にも作業を継続出来、工程遅延を防止した。 水圧制御ユニット (HCU) 点検エリアが狭隘で作業人員に制約があるため、一部機器を丸ごと予備品に交換する予防保全的な内容に改めることで工程を短縮した。HCUのように取替方式を採用した個所は作業の簡略化と信頼性向上を両立して達成した。 構外工場の活用 海水系機器の一部を発電所郊外の工場に持ち込んで点検することとし、他の作業との干渉を回避した。作業環境も大幅に改善されたがデメリットとして車で10分ほどの距離にあるため、連絡の苦労が増加したという。 その他 直接工程短縮には繋がっていないものの、間接的な短縮効果を発揮した措置としては、防護管理区域内に打ち合わせ・食事用スペースやトイレを仮設して従来事務所へ移動していた時間短縮を図り、EHCサーボ弁にも入替方式を採用、主蒸気隔離弁、タービン主要弁は点検周期を見直して点検台数を削減した。
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