学校段階
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/18 14:33 UTC 版)
日本の学校制度では行なわれる教育のレベル別に初等教育・中等教育・高等教育に3分類されることが多い。これらはそれぞれ6年間程度の課程が割り当てられている。この分類により、それぞれの学校で行なわれる教育の段階が明確になっている。 実はこれらの用語そのものは、教育基本法や学校教育法には登場しない。あくまで行政や教育学で慣習的に使われている用語である。一方、学校教育法にはこれとは別に学校で行なわれる教育の段階を表す用語が登場する。例えば、旧学校教育法の「中等普通教育」などである。これらの条文の表記と、本稿で述べている3段階区分は必ずしも一致しない。 初等教育・中等教育・高等教育の3分類によれば小学校は初等教育に分類され、中学校と高等学校は中等教育に分類され、大学は高等教育に分類される。しかし21世紀初頭までの学校教育法の条文において、小学校は「初等普通教育」を施し、中学校は「中等普通教育」を施し、高等学校は「高等普通教育および専門教育」を施すと規定されていた。このようになった背景は、現在の高等学校(新制高等学校)の母体となった旧制中学校および旧制高等女学校は「高等普通教育」を施し旧制実業学校は「実業教育」を施すと、法令で規定されていたためである。このように高等学校は教育制度学上では中等教育に分類されていたが、法規上は高等普通教育に分類されていたことに注意すべきである。なお、現在の学校教育法では、小学校で行う教育は「義務教育として行われる普通教育のうち基礎的なもの」と、中学校で行う教育は「義務教育として行われる普通教育」と、高等学校で行う教育は「高度な普通教育および専門教育」と規定されている。 一方、20世紀末期に中等教育学校の制度が新設された。これは前期課程が中学校段階、後期課程が高等学校段階の学校であり後期課程は「高等普通教育および専門教育」を施すとされた。後期課程に限って眺めれば同等の学校が一方で「高等学校」と名乗り、一方で「中等教育学校」と名乗るという違和感のある状態が生まれた。無論それ以前も高等学校が中等教育に分類されるという混乱した状態が続いていたが「中等教育」は学校教育法における正式な規定ではなかったし、学校名に「中等」を冠するものはなかったため表面的には理解しやすかった。こうなった遠因は、前述の通り戦後の学制改革で、旧制中学校などの旧制中等学校を「(新制)高等学校」に改組したことから始まっている。なお学制改革の前は旧制中等学校が中等教育、旧制高等学校が高等教育に分類されていた。 第二次世界大戦後まもなくのころは中学校から高等学校への進学率も低く、高等学校は上級の教育課程とも捉えることが可能でもあった。しかし、高等学校への進学率が9割を超えはじめ、大学への進学者も増加の一途をたどり高等学校が日本国内で普及した学校となり「準義務教育」とまで評されるようになると高等学校とはいうものの、「高等」の語が意味する正確なニュアンスは教育界を除けば必ずしも統一的ではなくなった。 そんな中で「中等教育学校」が誕生し、高等学校はそれの後半とほぼ同じ教育課程が適用されるため、高等学校は中等教育の一部であるということを学校教育法の条文によって捉えることもできるようになった。そして公立の中等教育学校を各地に新設したり、既存の高等学校を中等教育学校に改組したりしており、国立・私立の中高一貫校の中にも中等教育学校に改組するところがある。このようにして一部の高等学校は中等教育学校に変わりつつあるが、現時点では圧倒的に中等教育学校よりも高等学校の方が多数である。 もし「高等学校」という学校種が廃止され全て「中等教育学校の後期課程」となったり、あるいは「後期中等学校」と改称されたりしたら高等学校という一つの学校種が「中等」と「高等」の2つの段階に区分されるといった齟齬はなくなる(なお、すでに学校教育法からは「高等普通教育」の文字は消えている)。しかし現時点では立法・行政においてはそういった構想は発表されておらず、近い将来にそうなることは現実的な話ではない。ただし、現在においても文部科学省による公式な英語表記で高等学校は「High School」(高等学校)ではなく、「Upper Secondary School」(後期中等学校)となっている。 日本においては高校までの多くの生徒の年齢が18歳以下であり、学年と年齢の結びつきが強い(年齢主義)。こういった状況のもとでは大部分の中学校や高等学校では社会経験などの豊富な生徒が来ることは望めないため、どうしても中学校や高等学校で扱う教育は限定的なものなることが見られる。また高等学校までの就学率が95%を超えており、学問・学業に向いた生徒だけではなく同年代のあらゆる人(特別支援学校に在籍する人を除く)を入れることになるのもその状況を後押しする。なお、フランスやドイツなどの諸外国においては課程主義を基準とした進級制度を取っており(特にフランスでは小学校でも成績によって留年する例も多い)、日本の中学校や高等学校に相当する学校においても教育水準・学習水準は一定以上に保たれている。このように、中学校・高等学校の選抜度が高く教育水準が高い地域と、年齢主義であり全入制に近い地域では、高等学校の教育と言っても内実には大きな差がある。
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