太陽と惑星の環境
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/22 02:28 UTC 版)
「太陽系の形成と進化」の記事における「太陽と惑星の環境」の解説
「恒星進化論」も参照 長いスケールで見ると、太陽系の最も大きな変化は、太陽自身の老化から来る。太陽が水素を燃料にして燃やしている間はより熱くなり、より速く燃料を消費するようになる。結果として、太陽は11億年に10%の割合でより明るくなる。これから10億年の間で、太陽の放射は増大し、ハビタブルゾーンは外側に遷移し、地球の気温は液体の水が存在できないほどまで上昇する。この時点までに、地上のほぼ全ての生物は絶滅することになる。 海の表面から潜在的な温室効果ガスである水が蒸発すると、気温の上昇が加速し、地上の生物の絶滅はもっと早くなる。この頃になると火星の表面の温度も上昇し、現在は表土の下で凍っている二酸化炭素と水が大気中に出てきて温室効果が発生し、現在の地球程度の温度になっている可能性もあるため、将来的には地球の生命にとって火星が代替の住居になるかもしれない。現在から35億年後までには、地球の表面の状況は、今日の金星と似たものになっていると考えられる。 そして現在から54億年後までには、太陽内部の温度が十分上昇し、ヘリウム中心核の外層部で水素核融合が起きるようになる。これにより恒星の外層が大きく膨れ、赤色巨星と呼ばれる段階になる。現在から75億年以内に、太陽の半径は現在の256倍にあたる1.2天文単位にまで達し、太陽の表面は現在よりもずっと低く2600K程度になり、光度は2700倍にもなる。また赤色巨星になると太陽風が極めて強くなり、太陽の質量の33%が吹き飛ばされる。この頃には、土星の衛星タイタンの温度が生物が住めるまで上昇する。 太陽が膨張すると、水星とおそらく金星は太陽に飲み込まれる。地球の運命ははっきりしないが、太陽は現在の地球の軌道程度までは膨張し、太陽の質量の減少に伴う重力の減少によって地球の軌道はより外側に逸れる。そのため金星と地球は太陽に飲み込まれることは免れるかもしれない。 水素の燃焼によって、太陽の核の質量は徐々に現在の太陽の質量の45%まで増加する。この時点では、密度と温度はヘリウムが核融合して炭素が生成するほどに高くなっており、ヘリウムフラッシュ現象が起こって、現在の250倍の半径から11倍にまで縮む。結果として、光度は現在の約3000から54倍にまで減少し、表面温度も4700Kまで上昇する。太陽は極水平分枝星になって、核では水素ではなくヘリウムを安定的に燃やすようになる。ヘリウムを燃料とする段階は1億年ほど続く。その後再び水素とヘリウムを燃料にするようになって2度目の膨張が生じ、漸近巨星分枝星になる。この段階では、光度は再び上昇し、現在の2090%、温度は3500Kになる。この段階は約3000万年続く。その後10万年は、残った物質を宇宙空間にばらまきながら惑星状星雲になる。放出される物質の中には、核反応で生じたヘリウムと炭素が含まれ、将来の恒星形成の材料になる。 太陽は比較的質量が小さいため、超新星爆発が起こらない比較的平和な過程で進むと考えられる。仮に太陽風の速度が増しても惑星を破壊する程にはならないが、太陽の質量の喪失が残った惑星の軌道を変え、惑星同士が衝突したり、太陽系から弾き出されたり、潮汐力で引き裂かれたりする可能性はある。その後、太陽の残った部分は、太陽質量の54%程度で半径は地球程度の非常に密度の高い白色矮星になる。当初、白色矮星は現在の太陽の100倍の明るさを持つ。フェルミ縮退した炭素と酸素から構成されるが、これらが核融合を起こす程には温度が上がらない。そのため白色矮星となった太陽は徐々に冷え、暗くなっていく。 太陽が死滅すると、惑星、彗星、小惑星等を重力で引き付ける力は弱くなる。残った惑星の軌道は遠ざかり、金星、地球、火星が生き残っていた場合にはその軌道は、それぞれ約1.4、1.9、2.8天文単位となる。その他の惑星も暗く冷たい残骸となり、いかなる生命も完全に存在しなくなる(ただし、太陽が死滅した後も地球上に生命が存在すると考える科学者は少数ながら存在する)。恒星の周りを回り続けるが、軌道は遠くなり太陽の重力も小さくなるため、その公転速度は遅くなる。さらに20億年後、太陽の温度が8000Kから6000K程度にまで低下すると、太陽の核を構成する炭素や酸素が凍って残った物質の90%までが結晶化する。最終的に1兆年後には、太陽は自ら輝くことを止め、黒色矮星になる。なお、太陽がどうやって膨張し太陽系がどのような影響を与えるのか正確に予測するのは困難とされる場合もある。
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