天賦人権論論争とは? わかりやすく解説

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天賦人権論論争

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/03 21:34 UTC 版)

民法典論争」の記事における「天賦人権論論争」の解説

貴族院論争初日田中法相渡正元断行論を述べた後、帝国大学総長加藤弘之演説加藤は、素人考え断りつつも、民法精神自然法大本とし、天賦人権人民付与される理由書書いてあると指摘一方憲法精神は、公権私権区別無く全て国家主権から生じると解されるから、民法憲法矛盾抵触する主張自然法説が西洋でも衰退しつつあることも指摘。これに対し貴族院保守党中正派を率い退役陸軍中将断行派の鳥尾小弥太演説天賦人権論是非にかかわらず人民相互権利私権)は人が人たるの所以から生じると反論大木文相加藤反論尾君が其方は余程弁駁なりましたから本官申上げませぬが、国家主権のために人民の権利動かし得らるると云ふことがござりませうか。独逸にさう云うことがござりませうか。…人民各個各個権利決し財産身体の保護上に於きましては則ち天然道理に拠たざるを得ないそれ故外国に対して交通出来るのでござります然るを国家のために権利を折らるると云ふやうなことであれば人民国家奴隷と云ふものであるが、なんぼ独逸でも日本でも左様なものではない。それ故裁判左様なことになれば畠山重忠板倉周防守か…独逸国に左様ことがあると云ふやうな御感触では甚だ入ったことであります。 — 大木喬任 普段口下手な大木が、この日に限っては堂々の演説をしたことは各新聞社好意的に報道した鳥尾小弥太については、延期派の谷干城同様の保守的グループ属しながら商法典論争延期派から民法断行派に転じたとみられているが、付和雷同傾向があったことや、政府から司法大臣の席を約束されていたという噂があったことが指摘されている。もっとも、商法典論争でも天皇の決定尊重する観点から断行派だったとの見方もある。なお本人大津事件の影響法治主義転じたためと主張している。商法棄権。 翌27日、谷は、大木天賦人権論儒教介した日本独自のものと指摘天賦人権云々議論…はどうも大木さんが間違っちょらうと思ふ。…大木君も尾君も…漢学主義の人であって中庸にある…天命則り性法率ふと云ふ、斯う云ふ所から来た人道論で決し西洋謂う人権論から来たのでは無かろう思ひます。…是は人権論の誤解ぢゃらうと思ふ。それで大木さんの御論は一向であったか我々にはわからなかった。 — 谷干城28日、谷から財政支援を受ける陸羯南の『日本』は、大木のみならず加藤をも批判国家主権歴史上重きを置く独逸主義に於て之あるも、国家ありて而後(しかるのち)に権利ありと云ふ説は、恐らくは独逸法理是認する所にあらじ。一切法律原注憲法も)宇宙自然の道理に近か寄らしむるは仏国主義に於て之れあるも夫の大木伯の説の如く独り私法のみ天然道理拠り規定すとは、是れ又た仏国法理にあらじ。 — 陸羯南天賦人権大木伯」 前述通り財産法につき前国家的な自然法強調するのがドイツ自然法学立場財産法家族法問わず自然法名目による国家からの成文法押し付け拒否するのがドイツ歴史法学立場である。 穂積八束も「臣民権利は…私法上の権利とは其効力を全く異にす」と述べ帝国憲法法理)、加藤のような素朴な公法私法一元論は採らない。 民商法典は…大木大臣の説明によれば天然道理拠れりと云ふ…而して法文其物を見れば慣習従ふ妨げず記し、又た慣習になき場合に非ざれば適用せずと記するは抑々何等矛盾ぞや…夫(そ)の自由主義執る自称する議員等が、私権保護の名に惑はされ…少人数専断成りたる此の大法典をば、一回吟味をも遂げず其の実施を賛成するは…何の心ぞや。 — 陸羯南法典是耶非」 大木については、明治初期以来の「絶対主義法治主義」の現れ解し詳細な大法典押し付け人民束縛することは私法でも変わらないので、延期派への反論として失当との批判もあるが(井ヶ田良治)、後年伊藤博文憲法解釈につき大木尾と類似の見解述べ、「何でも専制的のことでなければ日本国体に適はぬが如く思うてゐる」漢学者らを「大なる誤解」と批判したことから、加藤極度国家主義への反論としては妥当とする評価もある。

※この「天賦人権論論争」の解説は、「民法典論争」の解説の一部です。
「天賦人権論論争」を含む「民法典論争」の記事については、「民法典論争」の概要を参照ください。

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