大道芸の主な作品
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/01 02:30 UTC 版)
路上パフォーマンスは、「時間、時間! 加納の時間!! IN (演技場所+西暦年号)」というタイトルがつけられ、大概は掴みで演じる準備体操の他に3作品を披露する(持ち時間30分の場合)。 代表作は、五輪真弓のヒット曲をBGMにしたコミックマイム「恋人よ」。 「枯葉散る夕暮れは、来る日の寒さを物語り…恋人よそばにいて…そして今日の別れ話が、冗談だよと笑って欲しい…」スローバラードのもの悲しいメロディと歌詞にのって、恋人募集中の女性が、前のめりに走りながら目当ての男性に交際を迫りゆく一途な情念(執念・怨念・狂気性)を縦糸に、断られた時の「やっぱり」感、投げやり感、女性特有の立ち直りの早さ、居直り感、ちゃっかり感等を横糸にユーモラスに、コミカルにつづれ織る。緩急と間合いを効かせた独創的(独走的)なコミックマイムで、片恋に生きる女の切なさと逞しさをパフォーマンスする。因みに本作「恋人よ」が加納大道芸作品の第一号(デビュー作)である。 「恋人よ」は、通常のマイム動作に加え、ハイライト シーン(恋人候補の男性に向かい一途に走る、3人目の候補者へ駆け寄る途中前のめりに倒れ込み超スローで3バウンドする)にスローモーションマイムを取り入れ、随所にシュールレアリスムを漂わせているが、シュール作品にありがちな難解さを排除し、わかり易いコメディとして仕上げたのが本作品の特徴。 加納大道芸の醍醐味について「理屈なしに面白い!」という人が多い。次に加納パフォーマンスの奥深さを挙げる人も多くいる。例えば、悲劇を題材(ヒット曲BGM)としつつ、悲劇性と対の関係にある人間の喜劇性(あるいはその逆)を、緻密な動作計算、時間配分、マイム振り割りを尽くしたうえで、繊細にして大胆に、奔放にして精巧に反対給付を表現する作風・芸風(ブラックユーモア・ブラックジョーク・ブラックコメディなパフォーマンス)が大人の琴線に触れている。また、加納自身のアヴァンギャルド(パンク)な風貌や風情、異彩な存在感や現場の空気感、端整で美形でありながら不良的でアンニュイな表情、ネタの自虐性やシニカル性、そして、大道へ打って出て未知との遭遇を苦楽する好奇心旺盛なパフォーマー魂(芸人根性)等を挙げる人も多い。複合的な視点からも、本作「恋人よ」が加納のパフォーマンスアート第二期(大道芸人・コミックマイム)の代表作とされている。 「恋人よ」の小道具は、マイクスタンド(マイクを地面間近にセット)、たて笛(リコーダー)、ウエストバッグ、枯葉、あんパン(ポッキー他のこともある)、「つきあって」「交際して」「お友達から」の台詞(セリフ)を記した逆カンペ、ほうき・チリトリ・可燃ゴミ箱(客いじり用)、マーブルチョコ等。 なお、本作品「恋人よ」には、日が暮れてからの演技(ナイター)用に、さらに怖い「恋人よ 丑の刻(うしのとき)バージョン」がある。いつもの青いジャージ衣装に加え、昔の「丑の刻参り」さながら、「丑」と記した白ハチマキの両脇に白いペンライトを差して(昔は逆さにかぶった五徳や鉢巻に蝋燭を差した)、点灯させながらイタコや巫女や霊媒師の如く恋人候補者に迫り来る。昼日中の演技よりもさらに突撃ストーカーの情念(怨念・狂気性)が増幅され、日没後の演出として、簡便にして効果的なアレンジが施されたオルタナティブなバージョンとなっている。
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