基本形状別
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/06 21:16 UTC 版)
ばねの形状で分類した代表的種類を以下に示す。これらは主に金属を材料にするばねである。金属の内、特に鋼が材料として使われるが、鋼自体は硬いため力を加えられても目でわかるように大きな変形はしない。そのため、力が加わる板や棒を長くすることによって微小な変形を集めて、ばね全体としての大きな変形を生み出している。 コイルばね 細長い線状の材料を螺旋(らせん)状に巻いたばね。様々な種類のばねの中で最も一般的な形状のものである。受ける荷重の種類によって、さらに「圧縮コイルばね」「引張コイルばね」「ねじりコイルばね」といった種類に分けられる。圧縮コイルばね コイルばねの内、圧縮の荷重を受けて用いられるばね。ばねの中でも最も広く使用されている種類である。円筒状のコイルばねが最も一般的だが、円錐状や樽形に巻いたものなど様々な種類がある。コイル状にする素線自体には、主にねじりモーメントが加わり、素線がねじり変形を起こすことで、ばねが全体として伸び縮みする。ばねが変形するときの単位体積当たりの弾性エネルギー(エネルギー吸収効率)は他のばね部品と比較して大きく、取り付けに必要な空間は比較的小さくて済む。 引張コイルばね コイルばねの内、コイルの端にフックが存在し、引張(引っ張り)の荷重を受けるばね。圧縮コイルばねと同じく、素線自体は主にねじり変形を起こし、全体が伸びる。圧縮コイルばねに次いで広く用いられているばねである。一般的な引張りコイルばねは、外部から荷重がかかっていない状態でもコイル同士が密着しており、この状態でもコイル同士が密着しようとする力が働いている。端のフック形状には用途に合わせて様々な形状がある。 ねじりコイルばね コイルばねの内、コイル中心軸まわりにねじりモーメントを受けるばね。コイルの端に荷重を受ける腕を持ち、コイルを巻き込んだり巻き戻したりする方向に変形させる。ばねの素線自体には曲げ応力が加わり、荷重による弾性エネルギーは曲げ弾性エネルギーとして蓄えられる。部品を回転運動をさせる箇所などで用いられる。 板ばね 板材を用いたばねの総称。板の曲げ変形を利用してばねとして作用する。たわみが小さい範囲であれば、はりの曲げ理論をそのまま使って変形などが計算ができる。「重ね板ばね」「薄板ばね」といった種類に分けられる。重ね板ばね 複数の板材を重ねた板ばね。中央を分厚くするように板を重ねることで、ばね内に発生する曲げ応力の均一化を図っている。自動車や鉄道車両の懸架装置用に使われるのがほとんどである。板材同士が接触して摩擦することで振動の減衰に寄与する。一方で、板間の摩擦が固有振動数を高くし、実際の車両においては乗り心地に悪影響することもある。 薄板ばね 板ばねの内、薄い板材を用いたばねの総称。形状は多種多様で、定まった形はない。厳密な定義は特にないが、2 mm 程度までの厚みのものを薄板ばねと呼ぶことが多い。 主に小型機器で用いられる。 トーションバー 棒状のばね。棒の一端を固定して他端をねじりを加え、棒をねじり変形させることでばね作用させる。棒の断面形状は、ねじりに対して効率のよい円形が一般的である。吸収エネルギー効率が高く、形状が簡単なため、実際のばね特性が計算と一致しやすい。 渦巻ばね 板を渦巻状に巻いたばね。特に、薄板を用いた渦巻きばねは「ぜんまい」とも呼ばれる。一端にトルクや力を加えることで、板が曲げ変形してばねとして作用する。狭い空間内で比較的多くのエネルギーを蓄えることができ、製作が容易などの利点を持つ。大きく「接触形」と「非接触形」に分けられる。接触形渦巻ばね 渦巻きばねの内、隣接する板同士が接触するもの。この接触形渦巻きばねのことを「ぜんまい」と呼ぶこともある。ばねを巻き上げていくとき、密着していた板が解けていくため、ばね定数が変化していく特性を持つ。板同士が密着しているため、そこで摩擦が発生してヒステリシスを持つばね特性となる。 非接触形渦巻ばね 渦巻きばねの内、隣接する板同士が離れたもの。板間摩擦がないため、ばね特性を比較的正確に計算できる長所がある。一方で渦巻ばねを巻ける回数は少ないという点がある。 竹の子ばね 長方形断面の板状の素材を円錐状に巻いたばね。分類としては、圧縮コイルばねの一種である円すいコイルばねに相当し、円すいコイルばねの素線が板に変わったものといえる。たわみが一定以上増すとばね定数が次第に増す非線形特性があり、なおかつ比較的小さな形状で大きな荷重を受けることができる。 皿ばね 底のない皿のような形状にしたばね。皿ばねの円錐上側部分と下側部分に荷重を加え、高さを低くする方向にたわませることでばね作用が得られる。非線形特性のばねであり、形状の寸法比を変えることで様々なばね特性が得られる。皿ばね同士を組み合せることにより、さらに様々なばね特性が得られ、全体としてのばね高さも変えることができる。 輪ばね 内輪と外輪という2種類の輪を交互に重ね合わせたばね。内輪は外側に斜面を持ち、外輪は内側に斜面を持ち、重ね合わされた内輪と外輪に荷重が加わると、内輪は縮まり、外輪は広がるように変形して、全体として縮む。合わさった面間で摩擦が働き、大きなエネルギーを吸収することができる。 線細工ばね 線状の材料をばね作用を得ることができるようにした部品の総称。用途に応じて様々な形のものが作られ、特に定まった形状はない。静的な荷重がかかるような使われ方が多い。荷重が小さい範囲で使うことが多いため、ばね特性を厳密に出すことを求めないことも多い。 ファスナーばね ばね作用を利用した締結部品の総称。ばね座金、止め輪、スプリングピンなどが含まれる。様々な種類が存在する。 メッシュばね 細い線材を布生地のように編んだばね。「メッシュスプリング」とも呼ぶ。編み方はメリヤス編みとなっており、編み込んで帯状とした材料を円筒状やドーナツ形にして使われる。クッション材として使われ、ばね特性が大きなヒステリシスを持っていることから振動吸収の性能が高い。
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