国産ジェット機

国産ジェット機、この言葉には大きな思い入れがあります。わが国唯一の国産旅客機「YS−11」。よくいく図書館のすぐそばに「YS−11」が展示されていて、年に何回か内部に入れるのですが、客席の狭さ、操縦席の計器類など以前興味深く見させてもらいました。また昔仕事で関係していた方がボランティアで解説しているようで、とても面白い話を伺いました。そのYS−11が惜しまれつつ国内定期便から引退した昨年秋、新たな国産ジェット機が大きな話題となりました。本田技研工業(以下Honda)の小型ビジネスジェット機「HondaJet(ホンダジェット)」です。
本稿は左記本田技研工業(株)のプレスリリースをもとに引用(一部引用)して作成しています。
Hondaの全額出資子会社で、2006年8月に設立されたホンダ エアクラフト カンパニー(Honda Aircraft Company:藤野道格社長はこれまでの開発責任者)は、昨年10月米国フロリダ州オーランドで開催された世界最大のビジネス航空機ショー「ナショナル ビジネス アビエーション アソシエーション(NBAA)」で、小型ビジネスジェット機「HondaJet」の受注を開始すると発表しました。標準装備での販売価格は365万ドル(約4億3800万円)。2010年から年間約70機の量産を計画していますが、すでに約100件の予約申し込みがあったとのことで、米国内どこからでも90分以内の飛行圏内にサービス網を構築するとのことです。
Hondaの福井威夫社長は「空への情熱がHondaJetをここまで導いてきた。これからは、確固たる事業の構築によってHondaJetをお客様の手に届けていくことになる。われわれのゴールは常に、お客様に新しい価値を提供することで、HondaJetはこの
目的にそった新しいチャレンジのひとつである」などと同事業に期待を示しました。
搭載する新エンジン「HF120」を開発したのはGE Honda エアロ・エンジンズ(注参照)。従来の「HF118」はHondaの独自開発でしたが、新エンジンは提携先の米ゼネラル・エレクトリック(GE)と共同開発したもの。同エンジンはHondaJetのほか、米スペクトラム・エアロノーティカル製の新型ビジネスジェット機Freedomにも供給されます。
主な特徴として、先ず挙げられるのが革新的なレイアウトともいえるOTWEM(Over-the-Wing-Engine-Mount)。エンジンを主翼上面の最適位置に配置することで、高速域での空力特性を向上させつつ、胴体からエンジン支持構造を廃止し、キャビンの拡大に成功しました。また自然層流設計を取り入れ、翼や胴体先端部の形状を最適化することで、抵抗を低減、燃費向上に寄与しています。さらに胴体は、ハニカムサンドウィッチ構造と一体成形構造を複合したハイブリッド構造を採用した全複合材製で、クラス最大の胴体内容積と小型軽量性を両立させています。
エンジンは二基のGE Honda製HF120ターボファンエンジンを搭載。最高速度420ノット(約778km/h)、最大運用高度4万3千フィート(13,106m)。航続距離は1,180ノーティカルマイル(約2,185km)。燃費は他の小型ジェット機より30〜35%優れ、キャビン長はひとクラス上のビジネスジェットよりもさらに1フィート(約30cm)ほど長く、化粧室も設置されています。
一方、三菱重工業などが経済産業省の肝いりで開発を進める国産ジェット旅客機「ミツビシ・ジェット(MJ)」の前途は未だ「視界不良」状態。07年度末に事業化の可否を決めるとのことですが、1200億円という巨額な開発資金に加え、事業としての採算性の問題など、超えなければならないハードルがいくつもあります。「MJ」は、開発費や事業費を合わせた総費用は4000億から5000億円にもなります。20年から30年の寿命といわれる航空機は、開発資金や事業費の回収に通常5年以上かかる息の長いビジネス。開発した機体を国内外の航空会社に売り込むためには、国の支援が欠かせない産業ともいえます。
そういったことからも、小型ジェット機とはいえ、国家予算などの補助を受けずにジェットエンジンと機体を一社で自主開発したのは世界でも稀なことです。近年、わが国製品をめぐって欠陥製品報道が相次ぎ、海外においても「メード・イン・ジャパン」への信頼は大きく揺らいでいます。Hondaが基礎研究所を立ち上げたのは1986年4月。先の「情熱や事業の構築、新しい価値」への取り組みに、夢を実現するものづくりの原点を見るようです。
注:
GE Honda エアロ・エンジンズは、2004年にゼネラル・エレクトリック・カンパニー(GE)とHondaとの合弁会社。HF120エンジンの推力クラスで、年間400機以上の市場があると見込まれています。
(掲載日:2007/01/26)
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