名前・方言名
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/16 16:54 UTC 版)
マツ(松)の由来は、「(神を)待つ」、「(神を)祀る」や「(緑を)保つ」が転じて出来たものであるなど諸説ある。後述のように東アジア圏では神の下りてくる樹や不老不死の象徴として珍重されることを考えると「待つ」から転じたという説がいかにもそれらしい。英語ではpineと呼ばれ、これはラテン語のpinus(この属の名前としても使われている)に由来する。ラテン語のpinusの由来はタール状のものを指すという。さらにラテン語pinusの由来はギリシア神話に出てくる妖精ピテュス (Πιτυς, Pitys) が由来という説もある。ピテュスは牧羊神パーンから追われた時、松に変身して逃げたという。 針葉樹を代表する樹木としてマツ属で無い樹木にも「マツ(松)」の名が充てられることがあり以下にその例を示す。いずれも針葉樹であるがマツ属ではない。同じような事例はスギ(Cryptomeria japonica、ヒノキ科)でも知られる。ヒマラヤスギ(Cedrus deodara)はヒノキ科ではなくマツ科の針葉樹であるし、ナンヨウスギ科(Araucariaceae)という一群も存在するがスギとは遠縁である。 トドマツ Abies sachalinensis 漢字表記は椴松。モミ属 (Abies) に属する。マツ属と違い枝は長枝だけしか持たない。球果は鱗片に突起状の構造(英:umbo)を持たず樹上で分解するなどの特徴を持つ。種小名sachalinensisはサハリンという意味で分布地に因む。日本では北海道を代表する針葉樹である。 湖畔に成立したトドマツ個体群(知床五湖) トドマツの葉は長枝に直接付く 分解中の球果。モミ属の球果は樹上に直立し樹上で分解する エゾマツ Picea jezoensis 漢字表記は蝦夷松。トウヒ属 (Picea) に属する。マツ属と違い枝は長枝だけしか持たない。球果の鱗片には突起状の構造(英:umbo)が発達しない。種小名jesoensisは蝦夷という意味で分布地に因む。トドマツと同じく北海道を代表する針葉樹である。アカエゾマツ(Picea glehnii)も同属。 エソマツの樹形 エゾマツの葉は長枝に直接付く トウヒ属の枝は葉枕という構造が発達し凹凸が著しい カラマツ Larix kaempferi 漢字表記は落葉松で、その名の通り冬に落葉する珍しい針葉樹(マツ属は常緑)。カラマツ属 (Larix) に属する。マツ属と同じく枝は長枝と短枝を持ち、短枝から葉を生やすが枝先の若い長枝にも葉を付ける。この点が短枝にしか葉を付けないマツ属とは異なっている。短枝に付く葉もマツ属とは印象がかなり異なる。球果はマツ属のものによく似ているが鱗片上に突起状の構造(英:umbo)は発達しない。長野県を中心とする本州中央部の山岳地帯を原産とするが寒冷地に適する造林樹種ということで北海道や東北地方にも広く植栽されている。樺太や千島列島に分布するグイマツ(Larix gmelinii)も同属。 カラマツは秋に黄葉し落葉する 短枝に多数が束生するカラマツの葉 カラマツの球果は突起(umbo)が発達しない ラクウショウ Taxodium distichum 漢字表記は落羽松。これも冬に落葉する針葉樹で葉が小枝と共に落ちる様子が羽に見えることに由来する。ヒノキ科に属しマツとは科単位で異なる。湿地でも生育できることからヌマスギ(沼杉)の別名を持ち分類的にはこちらの方が近い名前である。アメリカ南東部原産。 湿地に生えるラクウショウ(ヌマスギ) 紅葉するラクウショウ 膝根(knee)と呼ばれる呼吸根 鳥の羽のような葉 ベイマツ Pseudotsuga menziesii 漢字表記は米松。アメリカ原産のマツ科針葉樹。ベイマツは主として木材業界における名前であり、分類的にはトガサワラ属 (Pseudotsuga) に属する。アメリカトガサワラと呼ばれることもあり分類的にはこちらの方が近い名前である。日本にも紀伊半島および四国に同属のトガサワラ(Pseudotsuga japonica)が分布する。属名Pseudotsugaはツガ属(Tsuga)に似たという意味で形態的に似ていることによる。枝は長枝しか持たず、球果の鱗片には突起状の構造(英:umbo)が発達しない。 ベイマツの樹形 ベイマツの球果 また、マツの形態的特徴は樹木以外の生物の名前に使われることもある。たとえば鋭い葉はマツバギク(松葉菊、Lampranthus spectabilis、ハマミズナ科)やマツバボタン(松葉牡丹、Portulaca grandiflora、スベリヒユ科)に使われる。ごつごつした樹皮や球果からマツハダ、マツカサの名前を持つ生物も知られる。 マツバギク Lampranthus spectabilis マツバボタン (Portulaca grandiflora) ウロコマツカサ(Myripristis botche、キンメダイ科)
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