単独での活動
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/08/20 15:13 UTC 版)
「ソフィー・ブランシャール」の記事における「単独での活動」の解説
ソフィーは夫と同様にパラシュートの実験を行なった(自身がパラシュート降下したこともあれば犬をパラシュート降下させたこともあり、見世物の一環としてパラシュート付き花火を打ち上げたこともある)が、その主たる興味は気球による飛行にあった。アンドレ=ジャック・ガルヌランとその親族たち(妻、娘、姪)もパラシュートの実演で名を成した。特に姪のエリザ・ガルヌラン (Élisa Garnerin) は女性飛行士としてブランシャール夫人の最大のライバルであった。 夫の死亡時、ブランシャール夫婦にはまだ借金が残っていた。そのため、ソフィーは可能な限り経費節減に努めた。彼女が使った気球は水素気球で、熱気球とは違い燃料を置く必要がないため、吊り篭は最小限の大きさに切り詰められた。ガス気球を使うことは、空中で火を管理する煩わしさからの自由も意味した。彼女は小柄で体重も軽かったため、気球に詰める水素ガスは少量で済んだ。とはいえブランシャール夫人が熱気球も使っていた(少なくとも所有していた)ことは確かである。イギリス人フランシス・マチェローニ (Francis Maceroni) 大佐は、1811年に彼女から40ポンドで熱気球を買い入れたことを回想録に書きとめている。 ソフィー・ブランシャールはナポレオンのお気に入りとなり、1804年にはアンドレ=ジャック・ガルヌランの後任に指名された。ガルヌランは、パリで行なわれたナポレオンの戴冠式で無人気球の操縦をしくじったために失脚したのである(なおその時の気球はローマまで飛んで行ってブラッチャーノ湖に墜落し、ナポレオンの浪費に関するジョークの格好の題材となった)。ナポレオンからソフィーに与えられた肩書きが何であったかははっきりしない。皇帝が彼女を「公式な祭日のための飛行士」 ("Aéronaute des Fêtes Officielles") に任命し、大きな行事の際に気球のショーを企画する職務を与えたことは確かであるが、それだけではなく「気球大臣」に取り上げたようである。この役職上、ブランシャール夫人は「気球によるイギリス侵攻」のプランを提出したことが記録されている。 1810年6月24日、ナポレオンとマリア・ルイーザの結婚を祝い、近衛隊がパリのシャン・ド・マルス公園で祝賀会を開催した。ソフィーはここで気球を飛ばした。ナポレオン2世が誕生した際にもシャン・ド・マルスから飛び立ち、その旨を告げるパンフレットを空から撒いた。1811年6月11日、ナポレオン2世の洗礼を祝ってサン・クルー城 (Château de Saint-Cloud) で開催された公式祝賀会では、気球からの打ち上げ花火を披露した。1811年8月15日、ミラノで行なわれた"Féte de l’Emperor"(皇帝の祭日)でも同じ芸を見せた。1811年にはジョアシャン・ミュラ(ナポレオンの義弟にしてナポリ王)による閲兵式に同行し、悪天候の中をナポリのカンポ・ディ・マルテ (Campo di Marte) から飛んだ。ルイ18世が王位に就き(→フランス復古王政)、1814年5月4日にパリ入りした時、その凱旋行進の一環としてポンヌフで気球を飛ばした。ルイ王はブランシャール夫人の芸に大層感じ入り、彼女を「復古王政の公式飛行士」と呼んだ(ちなみにルイはプロヴァンス伯時代には気球家ピラートル・ド・ロジェのパトロンであった)。 ヨーロッパ中に名を知られたブランシャール夫人は、見世物飛行の際にはいつも多くの観客を集めた。1810年9月16日の晩、フランクフルトにてカール・マリア・フォン・ヴェーバーのオペラ "Silvana" の初公演を失敗させたのは明らかに彼女である。市民たちはほとんどが彼女の飛行を見に行き、オペラに行ったのはごく少数であった。ソフィー・ブランシャールはイタリアでも多くの興行を打った。1811年にはローマから飛び立ち、1万2千フィート (3.6km) の高度に達したが、本人の主張によれば、彼女はタリアコッツォに着陸するまで昏睡状態で飛行していたとのことである。同年、ヴァンセンヌ近郊で雹から逃れるために上昇した際にも気を失い、結果として14時間半も滞空することとなった。ソフィーは気球によるアルプス越えも行なっている。1812年4月26日に行なったトリノへの飛行中には、手や顔から氷柱が出来るほどの寒気に苦しめられた。ナントから飛んだ1817年9月21日には(これは彼女の53回目の飛行である)、沼地に不時着するという失敗を犯した。気球が木にひっかかったため籠がひっくり返り、夫人は索具に絡まれたまま水面に落下し、すぐに救助隊が来なければ溺死するところであった。
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