労働改造生産
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/14 06:16 UTC 版)
「労働改造生産は国家の経済建設に寄与するもので、国家の生産、建設の総合計画に含まれるべき項目である。」(労働改造条例三十条)改革開放以降、共産主義イデオロギーの崩壊に伴い、労働改造機関の政治思想の矯正目的は薄れ、代わりに興った経済成長至上主義のもと、被収容者の無償の作業によって製造された「労働改造製品」は国内外市場に流通するようになり、労改機関、監獄管理局、司法部など、関連する機関はそこから莫大な利益を獲得している。 改革開放政策導入後、それまで計画経済に依存していた国有企業は、市場経済に移行する過程でそれまで保持していた独占的地位が低下し多くが経営難に陥った。労改企業の一つである監獄企業は、特殊な企業形態ゆえ、80年代には半数以上の監獄企業が上納する利益を持たず、総崩れともいえる状況が起きた。1994年には全国の監獄工業生産損失額は1.5億元に達した。 経営難にあえぐ労改企業を支援するために1994年に法人税徴収免除政策、1998年に増値税還付政策が公布され、税制上の優遇措置が講じられた。監獄の経費保障を確立するために、1994年に施行された「監獄法」では、刑務所の運営経費は国家予算に計上され、国が刑務作業に必要な生産設備と生産経費を供給すると定めた。また利益隠蔽、損失拡大の要因だった利益の一定比率を上納し、損失は補填される「請負制」を廃止し、国有資産委託経営により監獄企業の財産権を明確化した。具体的には省級監獄管理局が国家を代表して監獄企業の出資者となり、経営、指導、監査の権限を有し、国有資産の資産価値の維持・向上の責任を負うものと定めた。刑務官のぬるま湯体質を変えるために、基本給とは別に企業業績を反映したインセンティブ制度を導入するなど、成果主義人事制度を確立した。それでも長期赤字を計上し、負債を多く抱える収益改善の見込みがない監獄企業については、計画倒産させる方針を2004年に打ち出した。 監獄形態と企業形態が合わさった「監企合一」は監獄の矯正目的と企業の営利目的が混在した状態で本来の刑務所の責務と逸し、また不透明ゆえ、腐敗の温床になり易いなどの問題を抱えていた。2003年に「全額保障、監企分離(監獄形態と企業形態の分離)、収支決算報告の分離、規範に基づく運営」を目標とする監獄制度改革が施行され、2008年から全国範囲で実施されることになった。これらの政策によって、総崩れともいえる状況に陥っていた監獄企業経済は、赤字体質から黒字体質に転換した。2012年司法部部長(法務大臣に相当)・呉愛英氏は、2011年の監獄経費保障額が2002年より240%増加し監獄経費支出比率の87.9%に達したと報告した。しかし監獄企業の営業利益は経営権が属する監獄管理局に帰属し、同時に監獄管理局は監獄経費の予算編成、監査を行う。つまり監獄管理局をトップとする監獄機構で見た場合、監獄性質と企業性質は依然として結合しており、外部からの監察も乏しいため腐敗の温床となっている。 また、労働改造機関で被収容者が行っている作業は法律で定められている受刑者の権利を蹂躙する過酷なものである。被収容者が関わっている危険な作業場として、ワシントンDCにある人権NGO・労改研究基金(Laogai Research Foundation)は以下に挙げる事例を確認している。保護装置がない石綿鉱(アスベスト)(アスベストは国際機関より発癌性があると勧告されている)、手袋を提供しない希硫酸バッテリー液処理工場、約90㎝の深さがあるタンニン革製造溶液槽に裸体の囚人を入れ、人工的に化学原料の撹拌を強要するタンニン革製造工場。このような作業環境下で、被収容者たちは10時間から14時間時にはそれ以上、作業をしなければならないのである。
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