予算編成とは? わかりやすく解説

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予算編成


予算編成

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/03/16 03:49 UTC 版)

予算編成(よさんへんせい)とは予算案の立案作成のための作業のこと。

概要

日本では中央政府の予算編成は財務省中央省庁再編前は大蔵省主計局が担当する。

作業は前年度予算案が衆参両院を通過、成立してから始まる[1]。各省庁は5月頃から新規政策の立案作業に入り、6月には各省庁に対応した第一与党政策部会(多くの場合は自由民主党政務調査会)の各部会との調整を行う[1]。7月には翌年度の概算要求基準が閣議決定される[1]。各省庁では政策や予算が課単位から局単位そして省全体へと挙げられ、与党各部会とのすり合わせや他省庁との調整を経て8月末には概算要求を財務省に提出する[2]

9月1日から2、3週間かけて主計局は各省の予算要求をじっくりヒアリングする[3][4]。主査(課長補佐級)は各省庁課長から、主計官(課長級)は各省庁局長から、主計局次長は各省庁次官から説明を受ける[3]。ヒアリングが一通り終わると。主査や主計官が査定作業を始め、数字との戦いとなる[3]。主計官僚のもとには連日にわたって予算要求を出した各省庁は多くの予算が欲しいために説明をし、国会議員や地方自治体や様々な団体などの陳情が来る[5]

10月に入ると、主計局次長が査定側に立って説明側に査定した主計官や主査に立つ「査定局議」が行われる[6]。主計局次長の質問し、主計官や主査は「事項」「前年度予算額」「当年度要求額」「当年度査定額」「対前年度増減額」「説明」が記載された分厚い資料を持って対応する[6]。主計局次長が納得できなければ、主計官や主査は指摘された問題点を再調査して査定案を再構築しなければならない[7]。防衛、公共事業、農水、厚生などの重要な政策に関する担当の主査や主計官は、主計局長に直接説明して納得してもらう「重要局議」にも出なければならない[7]

主計局内の説明、再調査、再説明を経て査定案は12月頃をめどにだんだんと固まっていき、年内の編成が終わって財務省原案(中央省庁再編前は大蔵省原案)を内示するのが原則となっている[8]

財務省原案(中央省庁再編前は大蔵省原案)の内示後は原案に盛り込まれなかった要求について各省庁が復活折衝を求める[9]。各省庁課長から主査への「課長折衝」、各省庁局長から主計官への「局長折衝」、各省庁次官から主計局次長への「次官折衝」が行われる[10]。さらに各省庁大臣から財務大臣(中央省庁再編前は大蔵大臣)・主計局長への「閣僚折衝」や首相官邸で与党幹部を交えた「政治折衝」に持ち込まれ、最終的な予算案が閣議決定される[11]。なお、「閣僚折衝」や「政治折衝」は多くの場合はその前の事務方の折衝で事実上の決着しており政治家に花を持たせるためにすぎないものとされている[12][13]。また、財務省原案(中央省庁再編前は大蔵省原案)は折衝を経た後の最終的な予算案は総額が完全に一致しているが、これは主計官僚が作り上げた予算をまた最初からやり直すのはかなわないので、「各省庁の官房機密費」「退職金のようにすぐに使用されるアテのない費用項目への上積み」「大蔵省の官房機密費」から調整しているとされる[14]

予算案の閣議決定から予算案の国会提出までの約2週間という短い間に予算書と言う印刷物を作成する[15][16]。予算書は全部で数千ページに及び、それに各省各庁所管各目明細書が同じくらいあり、一つの数字が変われば48ヶ所を修正しなければいけないといわれる予算書等を一つのミスもない完璧の書として提出しなければならない[15][16]

その他

  • 主計官僚は予算編成をする例年9月から12月までにかけて「憂鬱の季節」「暗く長いトンネル」と表現している[3]
  • 予算編成の時期に国会が開かれていれば、主計官僚は国会答弁やその準備を最優先しなければならず、査定作業は夜に行わなければならなくなり、泊まり込みや土日無しの連続勤務も行われるようになる[5]。財務省の一室に連日勤務で帰宅できない主計官僚が仮眠を取ることができるベッドがある仮眠室があるが、この仮眠室は「ホテルオークラ」や「霊安室」という別名があった[17]。この仮眠室で寝ることができない大蔵官僚は空いている会議室等でソファーや机の上で毛布やオーバーを被って横になるという[18]

脚注

  1. ^ a b c 川北隆雄 1989, p. 50.
  2. ^ 川北隆雄 1989, pp. 50・52.
  3. ^ a b c d 川北隆雄 1989, p. 52.
  4. ^ 柿沢弘治 1977, p. 12.
  5. ^ a b 柿沢弘治 1977, p. 13.
  6. ^ a b 川北隆雄 1989, p. 54.
  7. ^ a b 栗林良光 1990, p. 48.
  8. ^ 柿沢弘治 1977, p. 15.
  9. ^ 官僚機構研究会 1976, p. 130.
  10. ^ 川北隆雄 1989, p. 56.
  11. ^ 川北隆雄 1989, pp. 56–57.
  12. ^ 栗林良光 1990, p. 63.
  13. ^ 官僚機構研究会 1976, p. 131.
  14. ^ 神一行 1986, pp. 27–28.
  15. ^ a b 栗林良光 1990, p. 64.
  16. ^ a b 柿沢弘治 1977, p. 17.
  17. ^ 柿沢弘治 1977, pp. 15–16.
  18. ^ 栗林良光 1990, p. 50.

関連書籍

  • 川北隆雄『大蔵省 官僚機構の頂点』講談社現代新書、1989年。ISBN 9784061489325 
  • 栗林良光『大蔵省主計局』講談社文庫、1990年。ISBN 9784061846203 
  • 神一行『大蔵官僚』講談社文庫、1986年。ISBN 9784061838611 
  • 柿沢弘治『霞ケ関三丁目の大蔵官僚はメガネをかけたドブネズミといわれる挫折感に悩む凄いエリートたちから』学陽書房、1977年。 
  • 官僚機構研究会『大蔵省残酷物語』エール出版社、1976年。 

関連項目


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