制作中のエピソード
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「うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー」の記事における「制作中のエピソード」の解説
押井は本作にてテレビ版の主要スタッフを採用し、本作の制作に注力した。本作の制作の前に、押井は宮崎駿と対談している。宮崎は、「クソッという形で開花するから、押井さんの場合でも、次はもっといい条件を取れると思うんですよ。スケジュールとかスタッフとか。それはなるべくもぎ取った方がいいですね。いざとなればスタッフにも遠慮しないで、死屍累々でもいいから……(笑)。」と、押井を励ましている。押井は、前作では自分のやりたいことをやれず不満であり、本作では一本目を作る気持ちでリターンマッチをする心積もりを語っていた。 プロデューサーの落合茂一と押井によると、劇場版第2作の脚本は当初原作者である高橋留美子に依頼し、ストーリーが提出されたものの、脚本を起こすまでには至らなかった。次に首藤剛志が執筆することになったが、押井は首藤のシナリオに難色を示し、結局首藤は降板した。代わって当時テレビシリーズの構成を担当していた伊藤和典が登板したものの、落合がプロット段階で劇場版にはそぐわないと判断し、キャンセルとなった。脚本段階で二転三転する内に製作時間が足りなくなり、進退窮まった所に押井が提示したのが本作の原案(ただし落合によれば実際の映画とは全く異なる内容だったという)であった。これは、前作を経験した押井が、自己の企画を通すために時間稼ぎをした作戦であるといわれている。 制作に入ると、押井は自室にて絵コンテ切りや制作指示に没頭した(絵コンテから開始されたため、本作には脚本準備稿が存在しない)。並行して放映中だったテレビシリーズは自室にて資料をチェックし、現場にはほとんど顔を出さなかったといわれる。落合は上がってきたコンテが当初の説明と全く異なる点に驚愕し、修正指示を掛けたが、時間的に間に合わず、映画は完成に至った。落合は「コンテが完成した時点でそれを抱えてキティを辞めたくなった(笑)」と、当時置かれていた立場と心境を回想している。 名曲喫茶にてサクラと温泉マークが語るシーン(テーブルを中心にカメラが回るパンシーン)では、2人が画面から消えた状態でのセリフが多く、また徐々にカメラの動きが速くなりながら時折2人が映るという演出だったため、声を当てるのが困難なシーンだったとコメントしている。また、このシーンはリテイクがなされたため、当初予定していたタイミングに若干のずれが生じたという。 終盤の白い帽子とワンピースを着た少女の声は、当初ラムの声優である平野文が演じていた。しかしネタばれしてしまうので、最後の一言を除き島本須美の声に替えられた。なお、島本はノークレジットである。 キャラクターデザイン・作画監督のやまざきかずおは、押井が絵コンテで書き下ろした夢邪鬼を採用した。そのため、原作やテレビシリーズ「目覚めれば悪夢」に登場する夢邪鬼とは異なる外見となっている。 夢邪鬼を関西弁で演じたのは藤岡琢也(兵庫県姫路市出身で京阪式アクセントには堪能)である。夢邪鬼とラムが水族館で初めて出会い、夢邪鬼から名刺を貰ったラムが「夢邪鬼さん? うちラムだっちゃ」と言った際、それを聞いた夢邪鬼が「らむだっちゃさん? ああ!ラムさんか」と答える台詞は、夢邪鬼の声を演じた藤岡琢也のアドリブだという。 荒廃後の町をメンバーが楽しむシーンは、「ぎゃろっぷの巨匠」が描いたと語られている。これは、ぎゃろっぷ所属でスタッフロールにも名前を列ねている丹内司のことと思われる。事実、ぎゃろっぷは本作の制作協力をしており、丹内はぎゃろっぷで作画をしていた。 しのぶが登校途中、無数の風鈴に囲まれるシーンで、しのぶをアパートの窓から見下ろす男は、海外版DVDの押井によるオーディオコメンタリーでは「この世界の外側で見てる誰か、つまり僕のことですけどね」とコメントしている。演出担当の西村純二は「あれは『しのぶという『観客』を見ている押井守』という感じで描いた」とコメントし、また「押井監督からは『しのぶをアパートから見下ろす男がいて、キャラクター設定は無い』と伝えられた」とコメントした。 キティ・アニメーションからリリースされたレーザーディスク版『劇場版うる星』(5作品を収む、初販1991年)に、押井守によるインタビューと絵コンテが収録されているが、それによると、タイトルは絵コンテの段階では「REMEMBER DREAM」であった。また押井守はインタビュー中で、この映画の中で一番気に入っているシーンは、ラムとしのぶとサクラが給湯室で雑談をしているシーンだと語っていた。
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