任意の取り調べ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/14 08:35 UTC 版)
事件直後に駆け付けた巡査に対して「酒を飲んで寝ていて何も聞いていない」と答えた輿掛は、その直後、騒ぎに気付いて顔を出した201号室の住民に殺人事件があったことを伝えている。そして、輿掛は巡査の許可を得て公衆電話に行き、恋人の実家に電話を掛けた。電話に出たのは恋人の母親であったが、恋人はすでに寝ているとのことだったので、恋人の母親に事件のことを伝えて電話を切った。また、みどり荘に戻る途中で新聞社の記者からの取材を受けている。 その後、部屋に戻った輿掛を、大分県警察本部刑事部捜査第一課強行犯特捜係長のT警部補が訪ねて任意同行を求めた。これに応じた輿掛は、4時30分ころから6時30分ころまで大分警察署(現大分中央警察署)で事情聴取を受けた。輿掛の供述によれば、恋人が部屋を出て行ったあとは、「肉とキャベツ、ウイスキーを買いに行って肉野菜炒めを作り、これをつまみにナイターを見ながらビール1本とウイスキーを飲んだ。ウイスキーは水割りにしてボトルの1/3ほどを飲んだ」「そのまま寝てしまい、気付くとナイターは終わっていたので、ステレオで長渕剛のレコードをいつもより大きな音でかけた」「聞きながらまた寝てしまい、次に気付くとレコードは終わっており、テレビは映画をやっていて、酒場やドイツの軍人が螺旋階段を下りてくる場面だった」ということであった。事情聴取の最後に、体に傷がないか入念に調べられ、T警部補は輿掛の首と胸、左手甲の傷を見咎め、何の傷か問いただした。輿掛の答えは、首の傷については覚えがなく「虫に刺されて引っ掻いたのかもしれない」、胸と左手甲の傷については「仕事中にビールラックを運ぶ時についた傷だと思う」というものであった。帰宅した輿掛は、心配しておにぎりを手に駆け付けた恋人に昨夜からのことを説明し、早出勤務を13時の定時出勤に変更してもらい、ひと眠りして職場に出勤した。夕方には職場をT警部補が訪れ、改めて輿掛の傷を確認したほか、恋人から実家に帰った経緯、他の同僚から仕事中の怪我について話を聞いている。 T警部補は、翌々日の6月30日にも再度任意の事情聴取を行った。この日の聴取は10時から22時に及び、午前中にポリグラフ検査を行い、毛髪4本を任意提出させた。この事情聴取を受けて、大分合同新聞はこの日の夕刊で、匿名ではあったが「重要参考人を呼ぶ-若い会社員を追及」と報道した。この報道によって、輿掛は勤務先から「一応預かりだから」と辞職願を書かされた上で、休職扱いとなって自宅待機を命じられている。 その後も、7月11日・7月12日・7月15日とT警部補による任意の事情聴取が続けられたが、輿掛は「酒を飲んで寝ていたので何も覚えていない」と繰り返すだけだった。7月11日の事情聴取では左手甲の写真撮影と当日着ていた下着等の任意提出、7月15日には毛髪10本を任意提出させている。しかし、次いで7月末ころに行った事情聴取の場で輿掛がこれ以上の聴取に応じることを拒否したため、これ以降、任意の取り調べができなくなってしまった。それでも9月14日には、身体検査令状と鑑定処分許可状に基づいて陰毛10本を提出させるなど輿掛への捜査は続いていた。しかし、逮捕に結びつくような直接的な証拠を得ることはできなかった。なお、事件後、輿掛と恋人は同棲を解消してそれぞれ親元に戻り、7月11日にはみどり荘の部屋を引き払っているが、二人の交際は続いていた。
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