マハトマ(偉大な魂)・大師(マスター)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/18 09:16 UTC 版)
「神智学」の記事における「マハトマ(偉大な魂)・大師(マスター)」の解説
「マハートマー書簡」も参照 神智学協会の主張によると、宗教、神秘主義、オカルトの奥義は、歴史の黎明以来ひそかに受け継がれてきたもので、それが支配する力の大きさや危険性から、どの時代においても一部の選ばれた少数の人間にのみ伝授され、守られてきたものであるという。神智学協会の創立者たちは、自分たちがそれを託された最後のものだと主張し、自分たちの使命は全世界のそれを知らしめ、その「ヴェールを脱がせる」ことであるとした。 こういった奥義を継承する「見えざる師」というコンセプトは、17 - 19世紀の西洋の秘儀伝授を特色とする団体のほとんどにみられる。宗教、神秘主義、オカルトに関する知識は、自分自身の内的な認識、超感覚的知覚、神秘体験、霊覚、直接的な観察などによって得られるとされるが、宗教、神秘主義、オカルトの思想家たちは、古代のエジプトやインドの賢者たちも含めて、外部の様々な現象を分析し客観性や合理性を重視する実証主義的な現代の科学者たちよりもある意味では優れた認識や理解を得ているという。 そうした、宗教、神秘主義、オカルトの教義に精通し、神秘の奥義を伝授されている人間は、「秘教の秘伝への参入者」と呼ばれるが、その中でも特に奥義を体得している者たちは、様々な超常的な力(物質化、テレパシーなど)を有していたり、肉体を通常よりもかなり長い期間にわたって維持していたり、宇宙の諸現象の理解や人類への愛の面で卓越していたりするという。ブラヴァツキーは、チベットでそれらの参入者たちに師事して教えを授かったと主張している(しかし、ブラヴァツキーがチベットを訪問したという証拠はない)。当時チベットは外国人の立ち入りを厳しく禁じており、チベットに関することは検証不可能であったため、当時この話は非常にもっともに見えた。 ブラヴァツキーはインドに渡って以降、自らの思想が、「大師(マスター)」「マハトマ(偉大な魂)」と呼ばれる霊的熟達者(秘儀参入者)に由来するとした。マハトマは大賢者としてゴータマ(釈迦)から伝わる大宇宙の秘儀に通じているとされた。マハトマは複数存在し、チェラ(弟子)にその秘儀を継承していくと考えられた(マハトマ・モリヤのチェラがブラヴァツキーであるとされる)。彼らはヒマラヤに住んでいるとされ、「グレート・ホワイト・ブラザーフッド(大白色同胞団)」という秘密結社を形成し、古代の叡智を受けついでいるとされた。かれらの本拠地はゴビ砂漠にあるシャンバラであるともされた。 秘密裏に世界を支配しているというその組織のメンバーは、アブラハム、モーセ、ソロモン、孔子、ブッダ、老子、ソクラテス、プラトン、イエス、ヤーコプ・ベーメ、フランシス・ベーコンなど、万人に知られた哲学者や宗教の開祖たちである。ブラヴァツキーは大師たちと超自然的な方法で交信しているとして、大師からの手紙「マハトマ書簡」を空中から取り出すという奇跡をしばしば実演した。マハトマ書簡の出現の仕方は、多くの場合、いつの間にか机の上などに置かれているというものであったが、それはアポートによるものであると解釈された。 ブラヴァツキーとアルフレッド・パーシー・シネット(英語版)は「マハトマ書簡」で、オカルトの達人の名前として、モリヤ、クートフーミ、ヒラリオン、ジュワル・クール(英語版)などの名前を挙げている。ブラヴァツキーと彼女に続く神智学徒たちは、モリヤとクートフーミから啓示を受けていると明言するようになった。チャールズ・ウェブスター・レッドビータの著作『人間 - どこから、どうやって、そしてどこへ』(1913年)や『大師とその道』(1925年)は、イエスも大師のひとりに挙げている(イエス大師)。 マハトマは〈神智学〉の根本にある思想であるが、当初から存在自体が疑問視されていた。霊的存在で不可視であるなら見えないことも道理であるが、そうは考えられておらず、ブラヴァツキーは地上でしばしば目撃されると述べており、インドのヒンドゥー教改革団体で一時神智学協会と提携していた「アーリヤ・サマージ」の設立者ダヤーナンダ・サラスヴァティー(英語版)と同一視されたこともある。フレデリック・ルノワールは、「見えざる師」たちを引き合いに出したことが、神智学協会の成功を保証したのは間違いないが、謎めいた実在が立証できない指導者たちの実在を基盤に協会の全機構を打ち建てたことは、協会のアキレス腱ともなったと指摘している。 ブラヴァツキーの死後、オルコットとアメリカ支部長のウィリアム・クアン・ジャッジ(英語版)の間で熾烈な権力闘争が起こり、モリヤは無条件でオルコットを支持しているとし、ジャッジはオルコットの解任と自身のトップへの就任を促すクートフーミの手紙を示したことで、信奉者たちにとってマハトマの反目という深刻な事態を引き起こした。
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