フェラーリ・F60とは? わかりやすく解説

フェラーリ・F60

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/10/01 14:39 UTC 版)

ナビゲーションに移動 検索に移動
フェラーリ F60
カテゴリー F1
コンストラクター フェラーリ
デザイナー アルド・コスタ
先代 フェラーリ・F2008
後継 フェラーリ・F10
主要諸元
シャシー カーボンファイバー ハニカム コンポジット
サスペンション(前) ダブルウィッシュボーン, プッシュロッド, トーションバー
サスペンション(後) ダブルウィッシュボーン, プッシュロッド, トーションバー
エンジン フェラーリ Tipo056 2398cc 90度 V8 縦置き NA
トランスミッション フェラーリ製 7速 縦置き セミAT シーケンシャル
燃料 シェル
タイヤ ブリヂストン
主要成績
チーム スクーデリア・フェラーリマールボロ
ドライバー フェリペ・マッサ
キミ・ライコネン
ルカ・バドエル
ジャンカルロ・フィジケラ
出走時期 2009年
通算獲得ポイント 70
初戦 2009年オーストラリアGP
初勝利 2009年ベルギーGP
最終戦 アブダビGP
出走 優勝 表彰台 ポール Fラップ
17 1 6 0 1
テンプレートを表示

フェラーリF60 (Ferrari F60) は、スクーデリア・フェラーリ2009年のF1世界選手権参戦用に開発したフォーミュラ1カーで、アルド・コスタが設計した。2009年の開幕戦から最終戦まで実戦投入された。フェラーリとしてのコードナンバーは660。

概要

F60

F60は、「1950年F1参戦開始から60年」を意味する。

2009年のレギュレーション改正により、空力デザインが様々な規制を受けることになった。フロントウイングとリヤウイングともに2008年シーズンを走ったF2008とはまったく違うデザインとなっている。フロントウイングは2段式のままで、アッパーエレメントは装着されているが、中央部分はエレメントが1枚のみに制限されているため、F2008のようなノーズとの接合は見られず、翼端板に接続されているのみである。また、ノーズが前方に大きく延長され、ウイングステーも、ノーズから大きくウイングに向かって前方に突き出している。リヤウイングはシンプルな2枚エレメントで、補強のためにリヤクラッシャブルストラクチャーからステーによっても支持されている。後に、レギュレーションで制限を受けていないリヤウイング中央部分にスリットを入れて、擬似的に3枚エレメントのウイングと同等の効果を持たせたものに交換されている。

フロント周りは特にエアロダイナミクス面での制限が厳しいため、F2008まではサイドポンツーン上端からステーを伸ばしてミラーをつけていたが、F60ではサイドポンツーン外側にアンダーフロアから垂直にステーを伸ばす形となっている。そして、そのステーは複雑な形状を描き、ポッドフィンとして空力的に活かせるようにもなっている。サイドポンツーン前端にステーを装着するために、クラッシャブルストラクチャーを収めている部分であるインテークの車体側を除いて縁の部分が途中で一旦後退した形状となっている。その他にも、小さなバージボードも装着されている。このバージボードは厳しい規定の中で装着されているため、従来のマシンよりも小形である。

インダクションポッドは大型化され、正面から見ると縦長の楕円となった。

ウイングレットやチムニーといったパーツがなくなり、シャークフィンが廃止されたので、すっきりとしたリヤカウルとなっている。また、上方排気のためのカバーも完全になくなり、エギゾーストパイプが直接外にむき出しとなっていた。この部分が違法(ボディワークとして扱うことのできるエギゾーストパイプは使用禁止)であると他のチームから指摘されている[1]。その指摘を受けてか、1月22日以降のムジェロテストではパイプが短くなっている。その後、様々なタイプのエギゾーストパイプがテストされた。

KERSマニエッティ・マレリと共同開発したものがF60に搭載されているが、当初は開発の遅れから、開幕戦のオーストラリアGPから使用するかどうかは未定だった。結局、開幕戦からKERSを搭載することが発表された。

発表当日の1月12日に、レースドライバーであるフェリペ・マッサが、ムジェロサーキットでF60のシェイクダウンを行った。

また、この車からカラーリングが2007年モナコGPから2008年ブラジルGPまでのダークメタリックレッドから以前の明るい赤色に近いパールレッドに変更された。

Bスペックの投入

2009年スペインGPでのF60B
キミ・ライコネンがドライブ

ブラウンGPなどが採用しているダブルデッカーディフューザーを搭載し、6kg[2](15kgとも言われている[3])ほど軽量化されたシャーシを使用する改良バージョンである[3]。イタリア・ヴァイラーノで5月1日にテストが行われ、第5戦スペインGPから投入された。

軽量化したモノコックは、まず、マッサよりも体格が大きいキミ・ライコネンのマシン(シャーシナンバー279)として投入された。スペインGPから第7戦トルコGPまでのマッサ車は、モノコックは従来と同じままにエアロダイナミクス面でのアップデートのみが施された[4]。F60BもKERSは搭載している[2]第8戦イギリスGPから、マッサ車にも軽量化したF60Bのモノコック(シャーシナンバー277[5])が投入された[6]

2009年トルコGPでのF60

F60からの変更点としては、フロントウイングの翼端部分が持ち上がったことと、フロントウイング翼端板の形状変化、サイドポンツーン形状見直し、エンジンカウルの形状変更、ダブルデッカーディフューザーの搭載があげられる[4]

フロントウイング翼端板はブラウン BGP001のような二重構造となっている[4]ほか、エンジンカウル後端(フィアットマールボロストライプ〈バーコード〉)付近に細長いエアアウトレットが設けられ[4]、エギゾーストパイプ周辺も再び形状が見直されている[4]。このエンジンカウル後端のマールボロストライプ付近のエアアウトレットは、次戦の第6戦モナコGP以降は採用されていない[7]。サイドポンツーン後端にもエアアウトレットが設けられ、ラジエターからの熱気などはここから排出される[4]

第7戦トルコGPではリヤウイング翼端板上方に切り欠きが設けられた。第8戦イギリスGPでは、マシンの重量配分をより前方に移動させ、フロントタイヤにグリップを増加させることを念頭に、フロントサスペンションの形状が見直され、ホイールベースを若干短縮した[6][8]。また、軽量化したKERSも新たに投入された[6]

KERS

第2戦マレーシアGPの金曜フリー走行では、KERSのトラブルによりライコネンのマシンのコクピット内が白煙に包まれ、ピットに戻ったライコネンがあわててマシンから飛び降りるという一幕があった。大雨の決勝レースでも絶縁体に浸水してKERSが故障した[9]。続く第3戦中国グランプリでは搭載を控えたが[10]、それ以外のレースではシーズン最終戦まで使用され続けた。

チーム代表のステファノ・ドメニカリは6月の時点でKERS導入が失敗だったと認め、KERSに費やした予算をマシン開発にまわしていれば結果は違っただろう、と語った[11]

他チームがKERSの搭載を取りやめ、第8戦イギリスGPではフェラーリ勢の2台だけとなってしまったが、マッサはKERSの使用を継続するだろうと述べた[12]。F60のパッケージはKERS搭載を前提にしているためであるが[12]、2011年以降KERSが必須の装備になることが決定的で実戦でのノウハウが必要だったためでもある[13]

第12戦ベルギーGPではライコネンが上り勾配のケメルストレートでKERSを有効に使ってジャンカルロ・フィジケラフォース・インディア)を抜き、そのままトップを守って優勝した[14]

スペック

シャーシ

エンジン

2009年シーズン

2009年シーズン前半、KERSを搭載するチームは軒並み苦戦し、KERS非搭載組のブラウンGPレッドブルが選手権をリードした。F60は開幕3戦ノーポイントに終わり、予選最終ラウンド (Q3) に進めないこともあった。チームはKERSの開発を継続しながら、ダブルデッカーディフューザーの導入にも追われた。

第10戦ハンガリーGPの予選では、前走車からの落下物がマッサのヘルメットを直撃。マッサは頭部の負傷により残りレースを欠場することになった。代役としてミハエル・シューマッハの現役復帰が話題になるが、コンディション不良により実現せず、ルカ・バドエル(2戦)、ジャンカルロ・フィジケラ(5戦)は1ポイントも獲得できなかった。第11戦ベルギーGPでライコネンが挙げた勝利で、16年連続のシーズン1勝以上という記録を保つことができたが、終盤戦はアップデートを止め、次モデルF10の開発に移行した。

ライコネンは「ドライブしづらかったけれど、2008年よりは2009年のマシンの方が好きだった」と述べ、「でもフィジケラは2戦の間に10歳も老けちゃったね!」と冗談を飛ばした[15]

シャーシナンバー一覧

[16][17]

No. ドライバー 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17
AUS
MAL
CHN
BHR
ESP
MON
TUR
GBR
GER
HUN
EUR
BEL
ITA
SIN
JPN
BRA
ABU
3 マッサ 275 275 275 275 275 276 276 277 277 277
バドエル 280 280
フィジケラ 280 280 280 280 280
4 ライコネン 276 276 276 276 279 279 279 279 279 279 279 279 279 279 279 279 279

成績

No. ドライバー 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 ポイント ランキング
AUS
MAL
CHN
BHR
ESP
MON
TUR
GBR
GER
HUN
EUR
BEL
ITA
SIN
JPN
BRA
ABU
2009 3 マッサ Ret 9 Ret 14 6 4 6 4 3 DNS INJ INJ INJ INJ INJ INJ INJ 70 4位
バドエル 17 14
フィジケラ 9 13 12 10 16
4 ライコネン 16 14 10 6 Ret 3 9 8 Ret 2 3 1 3 10 4 6 12

脚注

[ヘルプ]
  1. ^ バセロンもフェラーリの違法性を指摘(F1-Live.com)
  2. ^ a b “フェラーリ、スペインGPでF60BにKERSを搭載”. F1-Gate.com. (2009年5月6日). http://f1-gate.com/ferrari/f1_3511.html 2009年5月7日閲覧。 
  3. ^ a b “フェラーリ、「F60B」をコースデビュー”. F1-Gate.com. (2009年5月2日). http://f1-gate.com/ferrari/f1_3483.html 2009年5月7日閲覧。 
  4. ^ a b c d e f 『オートスポーツ2009年5月28日号(通巻1206号)』三栄出版、2009年、pp.14 - 15。
  5. ^ 『オートスポーツ2009年7月9日号(通巻1212号)』三栄出版、2009年、p.71。
  6. ^ a b c “マッサ、ついに軽量シャシーをゲット”. Gp Update. (2009年6月18日). http://jp.f1-live.com/f1/jp/headlines/news/detail/090618120012.shtml 2009年6月19日閲覧。 
  7. ^ “Ferrari F60 - rear-end packaging”. Formula1.com. (2009年5月24日). http://www.formula1.com/news/technical/2009/810/660.html 2009年7月5日閲覧。 
  8. ^ “Ferrari F60 - revised weight distribution”. Formula1.com. (2009年6月20日). http://www.formula1.com/news/technical/2009/813/669.html 2009年6月21日閲覧。 
  9. ^ "ライコネン、KERS故障していた". STINGER.(2009年4月9日)2013年4月29日閲覧。
  10. ^ “フェラーリ、中国GPではKERSを使用せず”. F1-Gate.com. (2009年4月16日). http://f1-gate.com/ferrari/f1_3303.html 2009年6月20日閲覧。 
  11. ^ "ドメニカリ、KERSは失敗". STINGER.(2009年6月23日)2013年4月29日閲覧。
  12. ^ a b “Ferrari to keep KERS in '09 - Massa”. onestopstrategy.com. (2009年6月24日). http://www.onestopstrategy.com/dailyf1news/nieuw/article/8048-Ferrari+to+keep+KERS+in+%2709+-+Massa.html 2009年6月30日閲覧。 
  13. ^ 2010年はチーム間の紳士協定で、KERSの搭載が控えられることになっていた。
  14. ^ "【F1ベルギーGP】ライコネンがフィジケラとのマッチレースを制す". レスポンス.(2009年8月31日)2013年4月29日閲覧。
  15. ^ "「F60に乗ったらフィジケラは2戦で10歳も老け込んだ」とライコネン". オートスポーツweb.(2010年1月7日)2013年4月29日閲覧。
  16. ^ “season stats”. f1technical.net. (2009年7月2日). オリジナルの2009年7月7日時点によるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20090707024649/http://www.f1technical.net/articles/12613 2009年7月3日閲覧。 
  17. ^ “F1日本GP シャシーナンバー”. F1速報. (2009年10月2日). http://img2.blogs.yahoo.co.jp/ybi/1/98/61/f1sokuho_editors/folder/576510/img_576510_7775774_0?1254479933 2009年10月2日閲覧。 

「フェラーリ F60」の例文・使い方・用例・文例

Weblio日本語例文用例辞書はプログラムで機械的に例文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。



固有名詞の分類


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「フェラーリ・F60」の関連用語

フェラーリ・F60のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



フェラーリ・F60のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのフェラーリ・F60 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
Tanaka Corpusのコンテンツは、特に明示されている場合を除いて、次のライセンスに従います:
 Creative Commons Attribution (CC-BY) 2.0 France.
この対訳データはCreative Commons Attribution 3.0 Unportedでライセンスされています。
浜島書店 Catch a Wave
Copyright © 1995-2025 Hamajima Shoten, Publishers. All rights reserved.
株式会社ベネッセコーポレーション株式会社ベネッセコーポレーション
Copyright © Benesse Holdings, Inc. All rights reserved.
研究社研究社
Copyright (c) 1995-2025 Kenkyusha Co., Ltd. All rights reserved.
日本語WordNet日本語WordNet
日本語ワードネット1.1版 (C) 情報通信研究機構, 2009-2010 License All rights reserved.
WordNet 3.0 Copyright 2006 by Princeton University. All rights reserved. License
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
「斎藤和英大辞典」斎藤秀三郎著、日外アソシエーツ辞書編集部編
EDRDGEDRDG
This page uses the JMdict dictionary files. These files are the property of the Electronic Dictionary Research and Development Group, and are used in conformance with the Group's licence.

©2025 GRAS Group, Inc.RSS