ハイビジョン・16:9への移行
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「日本のデジタルテレビ放送」の記事における「ハイビジョン・16:9への移行」の解説
当初は標準画質の映像をハイビジョンの電波に乗せただけの(いわゆるアップコンバートの)番組が多かった。撮影段階からHD画質で撮られた映像は、一度ダウンコンバートされたとはいえアナログ放送で見ても画質がシャープで輪郭などがくっきりとしている。一方SD画質で撮られた映像はワイド番組であっても輪郭や画面全体がぼやけて見えるため、アナログ放送でもその差がくっきりと現れている。 2003年12月1日の地上デジタルテレビ放送当初、NHKは以前からBSアナログハイビジョン実用化試験放送やBSデジタル放送にてハイビジョン放送を行っていたので半数以上のテレビスタジオや一部地方放送局がハイビジョン対応(アナログ(MUSE)方式を含む)の設備を所有していたが民放各局では後述するテレビ東京を除きどの局も従来のSDTV(SD。画面比4:3の標準画像)放送専用のスタジオやカメラのみ所有しておらず、ハイビジョン対応の設備はごくわずかしかなかった(現実には既に全スタジオでハイビジョン対応の設備に更新されていた局もあった)。 テレビ東京と日本テレビ・テレビ朝日は送出マスターの切り替え時期がテスト作業や準備の遅れ(すべてNEC製)からか局内のシステムの調整に慎重を期すため本放送開始から2~3ヶ月遅れてようやく地上デジタル放送対応の送出マスターに切り替えられた(TBSとフジテレビは統合型マスターに切り替えられるまでは簡易マスターでハイビジョン放送を送出する事ができた)。テレビ東京は送出マスターの切り替えまではハイビジョン映像はBSジャパンでしか見る事ができなかった。 また、テレビ朝日もBS朝日向けに放送される独自番組と地上波同時放送では2003年9月29日の現社屋に移転した当初から問題なくハイビジョンで放送が行われている。 一方、愛知県のメーテレと中京テレビ、大阪府の読売テレビでは2003年12月1日の地上デジタルテレビジョン放送開始当初から地上デジタル放送対応の送出マスター(アナログ・デジタル統合型、いずれも東芝製)で運用開始したが当初ハイビジョン放送は在京キー局側の新マスターへの移行の遅れからごくわずかだった。 そのため、地上デジタルテレビジョン放送開始当初のほとんどの番組は従来のSD映像の横に黒帯を入れる事で16:9の信号に変換して送るアップコンバート方式の番組ばかりで作過程から実際にHDTV(HD)撮影を行って放送していたのはNHKデジタル総合テレビくらいで、TBSとフジテレビは少数ながらもHD放送があった。この方式の番組でも放送局側が4:3である旨の画角情報を付加すれば視聴テレビが4:3サイズ画面でも16:9画面でも自動的に適した画面サイズに表示される が、現状(2006年初頭)でも画角情報の付加はNHK以外の放送局ではごく一部を除きほとんど行われていない(4:3画角情報を付加している放送局は画角情報の項を参照)。 また民放のアナログ4:3サイズ放送向けに制作した映画番組ライブラリーには作製の段階から上下に黒い帯を入れているものが多く、それらを地上デジタルテレビ向けに放送する際にはそのままアップコンバートしたものを使うため「超額縁放送」と呼ばれる表示状態になるアップコンバートハイビジョンと呼ばれる放送が行われていた。この方式の番組は、アップコンバートせずにSDTVの4:3サイズのまま放送した場合は4:3の画面サイズで表示してもこの方式ではなく単なる額縁放送となる(両者の違いや仕組みの詳細については当該項目を参照の事)。なお、これらのアップコンバートハイビジョン放送は元の映像ライブラリーが既にSD映像画質である事からアップコンバートしたからといって実際の画面の精細度がHDTV並になる訳ではないので一部では「なんちゃってハイビジョン」と揶揄されていた(テレビ東京系の『元祖!でぶや』〈現在は終了〉はこの方法で制作されている)。 しかしその後、デジタルハイビジョンテレビの普及及び受信可能地域が開始当初より格段に広がったため、民放局は急ピッチでHD放送を増やさなければならなくなり、HD対応スタジオやHDカメラへの切り替えを迫られた。これを機に、日本テレビとテレビ朝日は2003年に社屋を移転した(前者は一部業務部署の移転が2003年8月、地上波の送出業務開始が2004年2月29日である(BS(BS日テレ)とCS(CS日本)の送出機能は移転せず、旧社屋のまま残っている)。後者は大半の部署が2003年9月29日に移転したが、アナログ・デジタルでのマスター送出業務開始は2004年2月9日である。但し、BS朝日向けの番組送出は2003年9月の移転当初から実施されている)。 2007年1月には、東京の5大キー局で制作された番組の7割以上がHD制作となった。よって現在はアップコンバート方式で送信していた放送開始当初とは逆に地上アナログテレビジョン放送の方で送信する際にHD映像をダウンコンバーターを通して左右の部分をカットして画質を落としてSD放送にさせるというダウンコンバート(エッジクロップ)方式が採られている。また、HD制作とダウンコンバート方式の番組制作が主流になってからは以前に制作した番組のアーカイブライブラリーを放送する際もサイマル放送でのソース管理の一元化の観点からSD映像ソースを一旦アップコンバートした後にアナログ放送用に再度ダウンコンバートする方法が多く採られる様になった(但し、放送局のHD制作設備や環境の導入度などの事情により多少異なる)。
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