テーマ・モチーフ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/05 09:25 UTC 版)
「パーフェクトブルー」の記事における「テーマ・モチーフ」の解説
今にオファーがあったときには、すでに『パーフェクトブルー』というタイトルと「B級アイドルと変態ファン」という設定が決まっていた。今は原作を全く読まず、原作に近いとされる映画の最初のラフプロットだけを読んだ。そして、彼はこの脚本を映画の中で一切使わなかった。元々の小説には劇中劇もなければ、夢と現実の境界の曖昧さというモチーフもなかった。その初期のプロットは、「アイドルの女の子が彼女のイメージチェンジを許せない変態ファンに襲われる」という内容で、映画よりももっとストレートなスプラッター・サイコホラー物だった。出血の描写も大変多く、特にホラーやアイドルが好きではない今には向かない内容だった。今も、自分がもし自由に企画を立てられる立場だったらそのような設定を考えることはあり得ないと語っていた。そのようなジャンルは、『セブン』『氷の微笑』『羊たちの沈黙』など様々な作品で既に扱われている手垢のついてしまったものであり、またアニメが不得手とする分野でもあった。そしてその手のジャンルの作品は、そのほとんどが「加害者である犯人がいかに変態であるか、あるいはどれほど狂っているか」に重きを置いているように見えるので、今はその裏をかいて「ストーカーに狙われることによっていかに被害者である主人公の内面世界が壊れていくか」に焦点を当てた。ただし劇中劇『ダブルバインド』については、すぐにハリウッドの流行に便乗して安直な物真似ドラマを作る日本のテレビドラマ業界への批判を込め、ストレートなサイコホラー、というよりもむしろパロディに近い内容にした。 今が監督を引き受けることにしたのは、初監督の魅力に抗えなかったことと、映像化にあたって原作者から「主人公がB級アイドルであること」「彼女の熱狂的なファン(ストーカー)が登場すること」「ホラー映画であること」という3点さえ守れば、好きなように話を作り替えても構わないという許可を得たからである。そこで彼は、原作から日本特有の存在とも言うべき"アイドル"、それを取り巻くファンである"オタク"、それが先鋭化していった"ストーカー"、といったいくつかの要素を取り出し、それらを使って全く新しいストーリーを作るつもりで脚本家の村井さだゆきと可能な限り様々なアイディアを出していった。 また、映画にはその核となるモチーフが必要で、それは脚本家や他の誰かではなく、監督である今自身が見つけなければならなかった。そこで彼は、原作小説を自分が面白いと思える内容に翻案しようと思案し、その中で「虚実を曖昧にする」という方法論が出てきた。そして以前脚本を書いた短編映画「彼女の想いで」(オムニバス映画『MEMORIES』より)や、中断していた自分の漫画『OPUS』から、「夢と現実」「記憶と事実」「自己と他者」といった本来「境界線」があるはずの物同士がボーダーレスとなって溶け合うというモチーフを思いついた。その内に、主人公である「私」の周囲の人間たちにとっては「現実/現在の私」よりも「私」らしいと思える存在が、主人公本人も知らないうちにネット上で生み出されている、というアイディアが出てきた。その存在は主人公にとって「過去の私」であり、ネット上にしか存在しなかったはずのその「もう一人の私」が、外的要因(「あんな風であってほしい」と願うファンの意識)と内的要因(「過去の方が居心地が良かったかもしれない」という主人公の後悔の念)によって実体化し、その存在と主人公自身が対峙するという構図が生まれた。そこで初めて、彼はこの作品が「映像作品」として成立するという確信を持てた。そして今は、原作の「アイドルの女の子が彼女のイメージチェンジを許せない変態ファンに襲われる」とという話を、「アイドルの女の子が周囲の環境が急激に変化し、ストーカーに狙われる内に彼女自身が壊れていく」という風に解釈することにして、村井と一緒に全く新しい脚本を書いた。 脚本のプロセスは、まず村井が今のモチーフをもとに第一稿を上げて、それに今がアイディアを付加あるいは削除する形を取った。その際、彼らは多くの話し合いの時間を持ち、そこから生まれてきたアイディアも多数あった。次に原作よりも一捻りも二捻りも加えられた脚本を元に全カットの絵コンテを今が描き起こし、そこで各シーンやセリフなどの変更も行った。作画作業も並行して進めていった。 作品の中で今は「犯罪に走る極端なオタク」は登場させたが、「オタク」に限らず、物事に極度に熱中する人間は往々にして「自分と他者」や「夢と現実」の境界を曖昧にしてしまう、と描きたかっただけで、特に批判的意図はないと語っている。最後に主人公がミラー越しにセリフを言うのは、今自身による解釈では、すべてが嘘だったからではなく、人生とは苦難を乗り越えれば完全に成長できるという単純なものではなく、何度も同じことを繰り返して成長するものであり、正面から捉えてしまって確定してしまうことを避けるという意図があるという。ただ、どんな解釈があってもいいとも語っている。
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「テーマ モチーフ」の例文・使い方・用例・文例
- 1つのテーマをあらゆる面にわたって討議する
- 彼の著作に共通するテーマ
- 彼は指導教授と協議して卒論のテーマを決めた
- そのテーマパークに行ったとき,4人の中で私がいちばんたくさんお金を使った
- 今日の主要テーマ,平和の問題に移ろう
- その作家独特のテーマ
- 彼はテーマ遊園地を設計した
- 研究テーマ
- 園芸がテーマの新聞記事
- 今夜の話のテーマは軍縮です
- 彼の作品にはテーマの統一性がない
- 彼はそのテーマに関心を持った
- 彼がXをテーマにしました
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- 彼がXを自分でテーマに決める
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- 今日の議題のテーマを決めましょう。
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- この本は、それぞれにテーマを持つ、いくつかのセクションに分かれており、読みやすく有益で、Kate Herseyという人物の特徴である、影響力のある表現力とユーモアにあふれている。
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