サンゴ礁の生態系
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/21 22:07 UTC 版)
サンゴ礁はきわめて多様な生物が、高い密度で生息している環境である。ちょっと覗いただけでも、色とりどりの魚が乱舞するのが見られる。岩の上にはナマコ類がゴロゴロしており、また、サンゴの隙間や転石の下を見ても、さまざまな無脊椎動物を見ることができる。このように多様な生物が高い密度で生息できる理由として、いくつかの要因が考えられる。 年間を通じて温暖であること。熱帯亜熱帯の、年間を通じて高水温の海域である。一般に、寒冷な季節などの物理化学的条件の厳しい時期がない環境のほうが生物の多様性は高い。 海底を埋めるサンゴの骨格が、非常に多様な底質や足場を供給すること。板状や枝状のサンゴは、さまざまな大きさの隙間を作り、そこが大小さまざまの生物の隠れ家を提供する。また、通常の岩に比べてサンゴの骨格は柔らかいので、さまざまな穿孔性の生物が住みやすくなっている。また、サンゴ礁全体の構造もそれを支えている。 サンゴ礁は透明度の高い、浅い海であるから、太陽の光も強く、そのことが生態系全体を支える生産量を裏打ちしているとも言える。しかしながら、透明度が高いということは、貧栄養であり、しかもプランクトンが少ないことを意味し、このことは生産量を確保する上では不利な点である。しかも、サンゴ礁では大型の海藻があまり見られない。では、サンゴ礁における生産者は何かと言えば、やはりサンゴである。サンゴは動物であるが、体内に褐虫藻を共生させているので、実質的には生産者としての役割をもっている。ただし、サンゴを直接に食べる動物はそれほど多くない。サンゴの骨格ごと齧りとるブダイ類や、オニヒトデがある程度である。外に、チョウチョウウオなどもサンゴのポリプなど、軟体部をつまむように食べるらしい。それ以外には、サンゴを直接食べるものはあまりいない。それではどのように利用されているかと言えば、サンゴが体表から分泌する粘液がかなり利用されているらしい。 生産者による生産量に関する限定要因になるものには、光合成に直接かかわる要因の他に、窒素やリンなど、肥料分の量がある。この点でも、サンゴ礁では、見掛け上、それらの供給が多いとは思えない。窒素については、礁池の砂の表面に生息する藍藻類が窒素固定を行なっているともいわれている。 魚類は種類が非常に多く、チョウチョウウオやブダイ類では近似種が多数あり、それぞれに異なった模様で共存している。視覚的情報で種を見分けているとも言われる。 また、サンゴの隙間にも、さまざまな小型の無脊椎動物が生息している。その中にはサンゴと共生しているものも見られる。 サンゴ礁に住む魚は一般にハデな色彩をしている。本川達雄によれば、限られた空間であるサンゴ礁には、様々な種類がひしめき合っており、水も透明で、ハデな色は魚同士のコミュニケーションの手段であり、その中から自分の仲間や配偶者を識別しなければならないからという。
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