ブダイ科とは? わかりやすく解説

ブダイ科

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/04/17 08:36 UTC 版)

ブダイ科
生息年代: 中新世現世
Є
O
S
D
C
P
T
J
K
Pg
N
アオブダイ属の一種 Scarus ferrugineus
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 条鰭綱 Actinopterygii
: スズキ目 Perciformes
亜目 : ベラ亜目 Labroidei
: ブダイ科 Scaridae
英名
Parrotfishes

ブダイ科学名Scaridae)は、スズキ目ベラ亜目に所属する魚類の分類群の一つ。ブダイアオブダイなど少なくとも10属99種が属する[1]

分布・生態

すべて海水魚で、大西洋インド洋太平洋など世界の熱帯亜熱帯域に広く分布する[1]。同じベラ亜目に属するベラ科などと並び、サンゴ礁魚類の代表的なグループの一つである。

近縁のベラ類が肉食性であるのに対し、本科魚類は一般に草食性で、死んだサンゴに付着した藻類を削り取るように摂食する[1][2]。ブダイ類はをもたず、齧りとったサンゴを発達した咽頭歯で細かくすりつぶすことで、藻類のみを効率よく摂取している[3][4]。一部の種類は海草を主食としているほか、カンムリブダイのように生きたサンゴを食べる種類も知られている[1][4]

ブダイ科魚類が摂食する死サンゴは1個体あたり年間1トン以上に及び、サンゴ礁の死滅と再生のサイクルに深く関与すると考えられている[5]。ブダイ類は死んだサンゴの群落を速やかに除去し、新たなサンゴの生育場所を提供することで、サンゴ礁の生態系維持に貢献しているとみられる[5]。咽頭歯ですりつぶされたサンゴは細かい砂となって環境中に戻されるため、本科魚類はサンゴ礁における砂の供給源としても重要な役割を果たしている[6]

すべて昼行性で、夜間はサンゴや岩陰に身を潜め休息する[4]。一部の種類は体表から粘液を分泌し、寝袋のように体を包むことが知られている[1]。ベラ科魚類と同様に、本科の仲間もほとんどが性転換をする[1]。多くは成長につれて雌から雄に変化する雌性先熟であるが、雌を経ずに直接雄として成熟する、いわゆる「一次雄」をもつ場合もある[1]

一般に鮮やかな斑紋と色彩をもつ。生時の体色は重要な分類形質であるが、死後は速やかに褪色するうえ、性別や成長時点による差異も大きい[1]観賞魚としての価値は高いが、歯板が成長し続けるために、水槽内での維持は難しい[6]。食用魚として漁獲対象となる種類も多く、日本の沖縄では貝塚から本科魚類の咽頭骨が出土するなど、古代から利用されていたとみられる[4]

形態

やや左右に平たく側扁した、いわゆる鯛型の体型をもつ。一般にベラ類よりも大型で、最大で1mを超える種類もいる[3]。顎の歯は癒合して一枚の歯板となり、オウム状となっていることが本科魚類の最大の特徴である[1]。ベラ類とは異なり、口を突出させることはできない[1]は大きく円鱗で、側線鱗は22-24枚[1]

背鰭は9本の棘条と10本の軟条で構成される[4]。腹鰭と臀鰭はそれぞれ1棘5軟条および3棘9軟条で、尾鰭の分枝鰭条は11本[1]椎骨は24-26個[1]

分類

Nelson(2016)の体系において10属99種が認められている[1]。かつては2亜科(Scarinae および Sparisomatinae)に細分されたが、分岐学的な解析によりその妥当性は否定されている[1]。FishBaseでは100種が認められている[6]。一部の研究者はブダイ科を認めず、ベラ科ブダイ亜科とすることもある。本項では和名のある種を挙げる。

アミメブダイ(雄型) Scarus frenatus (アオブダイ属)。青緑色の尾柄部が特徴の種類。通常は藻類を食べるが、生きたサンゴを摂食する姿も観察されている[4]
ナガブダイ(雌型) Scarus rubroviolaceus (アオブダイ属)。体の前後で二分された体色をもつ。本種は一次雄をもたず、雄の個体数は少ない[4]
イロブダイ(雄型) Cetoscarus ocellatus (イロブダイ属)。成長に伴う体色の変化と、雌雄差がともに著しい種類[4]
ハゲブダイ(雄型) Chlorurus sordidus (ハゲブダイ属)。琉球諸島では最もありふれたブダイ類で、夜間は粘液に身を包んで眠る[4]
  • アオブダイ属 Scarus
    • アイボカシブダイ[7] Scarus coeruleus
    • アオブダイ Scarus ovifrons
    • アカブダイ Scarus xanthopleura[8]
    • アミメブダイ Scarus frenatus
    • イチモンジブダイ Scarus forsteni
    • イトヒキブダイ Scarus altipinnis
    • オウムブダイ Scarus psittacus
    • オグロブダイ[9] Scarus fuscocaudalis
    • オビシメ Scarus obishime
    • オビブダイ Scarus schlegeli
    • カメレオンブダイ Scarus chameleon
    • カワリブダイ Scarus dimidiatus
    • キビレブダイ Scarus hypselopterus[10]
    • スジブダイ Scarus rivulatus
    • シロオビブダイ Scarus spinus
    • ダイダイブダイ Scarus globiceps
    • ツキノワブダイ Scarus festivus
    • ナガブダイ Scarus rubroviolaceus
    • ニシキブダイ Scarus prasiognathos
    • ヒブダイ Scarus ghobban
    • ヒメブダイ Scarus oviceps
    • ブチブダイ Scarus niger
    • レモンブダイ Scarus quoyi
    • ヤイチブダイ[11] Scarus collana
  • イロブダイ属 Cetoscarus
    • イロブダイ Cetoscarus ocellatus
  • カンムリブダイ属 Bolbometopon
  • キツネブダイ属 Hipposcarus
    • キツネブダイ Hipposcarus longiceps[12]
    • ハリドキツネブダイ[13] Hipposcarus harid
  • ハゲブダイ属 Chlorurus
    • オオモンハゲブダイ Chlorurus bowersi[14]
    • オカメブダイ[9] Chlorurus bleekeri
    • オニハゲブダイ Chlorurus frontalis
    • コブブダイ Chlorurus oedema
    • シジュウカラ Chlorurus japanensis
    • ナンヨウブダイ Chlorurus microrhinos[15]
    • ハゲブダイ Chlorurus sordidus
    • ヒナブダイ[16] Chlorurus enneacanthus
  • ブダイ属 Calotomus
    • タイワンブダイ Calotomus carolinus
    • チビブダイ Calotomus spinidens
    • ブダイ Calotomus japonicus
  • ミゾレブダイ属 Leptoscarus
    • ミゾレブダイ Leptoscarus vaigiensis
  • Cryptotomus
  • Nicholsina
  • ムナテンブダイ属 Sparisoma
    • ムナテンブダイ Sparisoma chrysopterum
    • ヤエバブダイ[16] Sparisoma cretense

出典・脚注

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o 『Fishes of the World Fifth Edition』 pp.429-430
  2. ^ 『日本の海水魚』 pp.464-519
  3. ^ a b 『The Diversity of Fishes Second Edition』 p.312
  4. ^ a b c d e f g h i 『日本の海水魚』 pp.520-535
  5. ^ a b 『The Diversity of Fishes Second Edition』 pp.382-383
  6. ^ a b c Scaridae”. FishBase. 2025年4月4日閲覧。
  7. ^ 荒俣(2021) p.373
  8. ^ Scarus atropectoralisシノニム(FishBase)。
  9. ^ a b 日本産魚類の追加種リスト”. 日本魚類学会. 2010年12月26日閲覧。
  10. ^ Scarus javanicus はシノニム(FishBase)。
  11. ^ 荒俣(2021) p.372
  12. ^ Scarus longiceps はシノニム(FishBase)。
  13. ^ 荒俣(2021) p.368
  14. ^ Scarus bowersi はシノニム(FishBase)。
  15. ^ Scarus gibbus はシノニム(FishBase)。
  16. ^ a b 荒俣(2021) p.369

参考文献

  • Joseph S. Nelson 『Fishes of the World Fifth Edition』 Wiley & Sons, Inc. 2016年 ISBN 978-1-118-34233-6
  • Gene S. Helfman, Bruce B. Collette, Douglas E. Facey, Brian W. Bowen 『The Diversity of Fishes Second Edition』 Wiley-Blackwell 2009年 ISBN 978-1-4051-2494-2
  • 岡村収・尼岡邦夫監修 『日本の海水魚』 山と溪谷社 1997年 ISBN 4-635-09027-2
  • 荒俣宏(2021)『普及版 世界大博物図鑑 2 魚類』平凡社

ブダイ科

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/16 08:09 UTC 版)

ベラ亜目」の記事における「ブダイ科」の解説

ブダイ科 Scaridae にはブダイ・アオブダイなど1088種が記載される熱帯浅海幅広く分布し岩礁サンゴ礁生息する草食性で、死んだサンゴ生え藻類をかじりとるように食べる。歯が融合して嘴状となっていることが、ベラ科との重要な鑑別点である。 ベラ科との類似点多く、すべて昼行性で、ほとんどの種類は雌から雄への性転換をする。また体色ベラ科同様、多様性に富む。色のパターン重要な分類形質となるが、死後急速に褪色し性差成長差も大きいため、種の同定難しいことも多い。 体はタイのように左右に平たく側扁し、円鱗大きい。口を突き出すことはできない。胃をもたず、咽頭歯発達するアオブダイ属 Scarus イロブダイ属 Cetoscarus カンムリブダイ属 Bolbometopon キツネブダイ属 Hipposcarus ハゲブダイ属 Chlorurus ブダイ属 Calotomus ミゾレブダイ属 Leptoscarus 他3属

※この「ブダイ科」の解説は、「ベラ亜目」の解説の一部です。
「ブダイ科」を含む「ベラ亜目」の記事については、「ベラ亜目」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「ブダイ科」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ

「ブダイ科」の例文・使い方・用例・文例

Weblio日本語例文用例辞書はプログラムで機械的に例文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「ブダイ科」の関連用語


2
100% |||||

3
100% |||||

4
100% |||||

5
100% |||||

6
100% |||||

7
100% |||||

8
100% |||||

9
100% |||||

10
100% |||||

ブダイ科のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



ブダイ科のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのブダイ科 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaのベラ亜目 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。
Tanaka Corpusのコンテンツは、特に明示されている場合を除いて、次のライセンスに従います:
 Creative Commons Attribution (CC-BY) 2.0 France.
この対訳データはCreative Commons Attribution 3.0 Unportedでライセンスされています。
浜島書店 Catch a Wave
Copyright © 1995-2025 Hamajima Shoten, Publishers. All rights reserved.
株式会社ベネッセコーポレーション株式会社ベネッセコーポレーション
Copyright © Benesse Holdings, Inc. All rights reserved.
研究社研究社
Copyright (c) 1995-2025 Kenkyusha Co., Ltd. All rights reserved.
日本語WordNet日本語WordNet
日本語ワードネット1.1版 (C) 情報通信研究機構, 2009-2010 License All rights reserved.
WordNet 3.0 Copyright 2006 by Princeton University. All rights reserved. License
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
「斎藤和英大辞典」斎藤秀三郎著、日外アソシエーツ辞書編集部編
EDRDGEDRDG
This page uses the JMdict dictionary files. These files are the property of the Electronic Dictionary Research and Development Group, and are used in conformance with the Group's licence.

©2025 GRAS Group, Inc.RSS