コクヌストモドキ
体長3~4mm、赤褐色で細長く、ヒラタコクヌストモドキに似るが、触角の先端3節が特に膨大する。また腹面から見ると、複眼が横長で、左右の複眼の間がより狭い。幼虫は6mmに達し、尾端に1対の棘状突起がある。薄黄色で、頭部と尾端の突起は黄褐色。卵は乳白色、球形で直径約0.1mm、蛹は体長3~4mmで、乳白色で微端に1対の長刺がある。
ヒラタコクヌストモドキとともに、小麦粉の大害虫として世界的に著名な種類。完全な穀粒には直接加害せず、穀粉や穀類屑等から発生する。トウモロコシやコメの粉のほか、乾燥果物や乾燥野菜、加工品の製菓類(ビスケット等)からも発生する。食品に混入する被害も多い。また家屋に多数発生することもあり、その量や臭いが原因で不快害虫となることもある。
臭いの主成分はキノン類で、本種が多数発生したペットフードを食べた犬がキノンによる中毒になった例もある。
成虫は飛翔することができ、発育に適する温度は25~35℃。餌の種類や温度、湿度の条件によって発育期間は大きく変動し、通常年2~4世代発生するが、条件が良ければさらに回数は多くなる。27℃で全粒粉砕小麦で飼育した場合には、卵期5~6日、幼虫期30日、蛹期10~15日。精白コムギで飼育すると幼虫期間は約88日となり、卵から成虫までは1.5~3.5ヶ月を要する。発育零点(発育が可能な温度)は17~18℃。成虫で越冬する。成虫は寿命が長く通常の室温で200日、547日生存した雄個体の記録もある。雌は毎日2~3個ずつ産卵し、生涯産卵数は500~1000個程度。
コクヌストモドキ
この群のグループ
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特徴
コクヌストモドキ類は甲虫目ゴミムシダマシ科に属する昆虫で、コクヌストモドキとヒラタコクヌストモドキの2種が特に食品害虫として重要な種類です。 両種の形態は酷似しており、体長3~4mm程度、細長く銅色で光沢があります。両種は触角の形状、複眼間の長さなどで区別できます。これらは小麦粉などの穀粉、ビスケット、チョコレートなどの菓子類、パンなどの2次加工品を加害する害虫として世界的に知られ、ヌカ、粉ミルク、煮干なども食します。コクヌストモドキは木材は加害しません。しかし、新築間もない一般家屋で大量に発見されることもあります。この場合には、食品がない場所で多数見つかることから、建材の種類が関係しているのかも知れませんが、原因についてはまだ良く分かっていません。 このほか比較的近縁な種類で、穀粉上で見られるものとしては、ヒメコクヌストモドキ、コヒメコクヌストモドキ、オオツノコクヌストモドキなども知られています。これらは体長および複眼や頭部の形状で区別できます。 |
コクヌストモドキ
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擬穀盗
擬穀盗人
コクヌストモドキ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/06/19 16:59 UTC 版)
コクヌストモドキ | |||||||||||||||||||||
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分類 | |||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||
Tribolium castaneum (Herbst, 1797) |
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英名 | |||||||||||||||||||||
red flour beetle |
コクヌストモドキ(擬穀盗[1]、Tribolium castaneum)は、ゴミムシダマシ科の甲虫である。世界中で穀物等の貯蔵食物にとっての害虫であり、動物行動学及び食品安全研究のモデル生物である[2]。
形態
体長3 - 4ミリメートル、全体に赤褐色で、光沢は少ない[3]。頭部には点刻が密布しており、その両側は眼の前で左右に少し広がり、眼の前半を上下に分ける。触角は先端から3節が横長になっている。前胸部背面では両側には点刻が多く、皺があるように見え、中央では少ない。 幼虫の体長は6 - 7ミリメートルで淡黄色。腹部の末端に黄褐色の突起が2本ある[4]。
この種は、近縁種のヒラタコクヌストモドキと非常によく似ているが、それぞれの触角の末端に3つの棒状の構造が付いている点が異なる。
生態等
コクヌストモドキは、インド-オーストラリア起源で、野外ではヒラタコクヌストモドキと比べて長く生きられない。両種とも温暖環境では世界中に分布するが、本種はより南に分布する。成虫は長命で、3年以上生きることもある。かつては比較的定住性の昆虫であると考えられていたが、分子生物学的、生態学的研究により、飛翔によってかなりの距離移動することが明らかとなった[5]。 年に2 - 3回発生し、卵から成虫になるまでには27℃の環境で約50日かかる[4]。メスは一生の内に約330個の卵を産卵する。幼虫は高温選好性で、乾燥にも強い。気温の高くなる春に活動を開始し、秋季まで繁殖し、冬季には成虫のまま越冬する[4]。
コクヌストモドキは、小麦、シリアル、パスタ、ビスケット、豆、ナッツ、砕米、糠等の貯蔵された穀粉を好み、損傷を与える[4]。コメなどの穀類をコクゾウムシなどが加害し、穀粉が溜まった場所に二次的に発生する場合もある。寒さや炭酸ガス、外部からの接触刺激に反応して発癌性のあるキノンを分泌する習性があり、食害や食品に異物として混入する他にも、食品のキノン汚染による被害の例が極めて多い[4]。また、本種は縮小条虫の中間宿主であり、本種の消化器から放出された六鈎幼虫を経口摂取すると腹痛や不眠などの健康被害を受ける[4]。
出典・参考文献
- ^ “コクヌストはコクヌストモドキではない”. 今村太郎(国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構). (2018年1月10日) 2021年8月15日閲覧。
- ^ Grunwald, S., et al. (2013). “The Red Flour Beetle Tribolium castaneum as a Model to Monitor Food Safety and Functionality”. Adv Biochem Eng Biotechnol 135: 111-122. doi:10.1007/10_2013_212. PMID 23748350.
- ^ 以下、記載は中根他(1963),p.227
- ^ a b c d e f 松崎沙和子・武衛和雄『都市害虫百科』普及版 朝倉書店 2012年 ISBN 978-4-254-64040-3 pp.54-55.
- ^ Ridley, A., et al. (2011). “The spatiotemporal dynamics of Tribolium castaneum (Herbst): adult flight and gene flow”. Molecular Ecology 20 (8). doi:10.1111/j.1365-294X.2011.05049.x.
- 中根武彦他『原色昆虫大圖鑑 (第2巻)』、(1963)、北隆館
外部リンク
- Tribolium castaneum genome. Beetlebase.
- Tribolium species comparison.
- Confused and red flour beetles. University of Florida IFAS.
関連文献
- Granousky, T. A. 1997. "Stored Product Pests". In: Handbook of Pest Control, 8th Ed. Hedges, S.A. and D. Moreland (editors). Mallis Handbook and Technical Training Company.
「コクヌストモドキ」の例文・使い方・用例・文例
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