キリスト教・オメガ点
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/12 12:58 UTC 版)
「フランク・ティプラー」、「ピエール・テイヤール・ド・シャルダン」、「トランスヒューマニズム」、および「シミュレーション仮説#フランク・ティプラーのオメガポイント」も参照 フランス人のカトリック司祭(イエズス会士)で古生物学者・地質学者でもあるピエール・テイヤール・ド・シャルダンは著書『現象としての人間』において人類の機械化や自動化の開発、「すべてを試す」「最後まで考える」ことを止めることはできず、神によって引き起こされた(宇宙の)進化は科学的現象であり、科学と神は相互に関連し、互いに作用し合っていると定義した。テイヤールは本の締め括りで、これらの進化はキリスト教でありながら完全な汎神論でもあると主張した。テイヤールは「宇宙的な精神的中心」を神的なものとして同定し「神はすべての中にある」という言葉を頻繁に用いており、テイヤールの構想は汎神論に適していた。物事の中心に神があり、すべての存在が完全に一体であるという確信を表明したが、テイヤールは彼が「真の汎神論」と呼ぶものを除いて、あらゆる形態の「汎神論」を否定した。 (オメガ点理論は)……正当な汎神論である。なぜなら、最後の手段として、世界の反映的中心が事実上「神と一体」であるとすれば、この状態は同一化(神がすべてとなる)ではなく、愛の分化と伝達の作用(神がすべての人の中にすべている)により得られるものだからである。そしてそれは本質的に正統派であり、キリスト教的である。 — Le phénomène humain(邦題『現象としての人間』)、ピエール・テイヤール・ド・シャルダン 1962年、イエズス会はスペインのイエズス会司祭フランシスコ・スアレスの人間に関する哲学から離れ「テイヤール的進化的宇宙発生論」を支持するようになった。テイヤールのキリストは、啓示の「宇宙的キリスト」あるいは「オメガ」である。彼は物質でできた神の発露であり、この世に生まれ死ぬことによって進化の本質を経験した。死からの復活は天国ではなく、すべての霊性と霊的存在の収束領域であるノウアスフィアで、キリストは時の終わりにそこで待機しているのである。地球がオメガ・ポイントに到達するとき、存在するすべてのものが神性と一つになるとした。テイヤールの著作はローマ教皇ベネディクト16世を含むローマ・カトリックの思想家たちによって支持された。 オメガ点はその後フランク・ティプラー (1994)、デイヴィッド・ドイッチュ (1997) などの著作で展開されている。フランク・ティプラーによると物理学の法則が矛盾しないためには、知的生命体が宇宙のあらゆる物質を支配し、最終的に宇宙を崩壊させることが必要であるという。その際、宇宙の計算能力は無限大となり、その計算能力でエミュレートされた環境は無限に続き、宇宙論的特異点へと到達する。この特異点がティプラーの言うオメガポイントである。ティプラーは計算資源が無限大に分岐することで、遠い未来の社会では、代替宇宙をエミュレートして死者を復活させることができるとしている。ティプラーの考えでは、オメガポイントは、ユダヤ教やキリスト教等の伝統宗教が主張する神の特性の全てを備えているので、神と同化している。オメガ点理論は反証可能な物理理論であり、現代の物理的宇宙論とコンピュータ科学に由来するもので、科学的唯物論(実体一元論)に由来するとした。 ルター派出身の神学者ヴォルフハルト・パネンベルクはアメリカの数理物理学者フランク・J・ティプラーのオメガポイント理論の神学を擁護している。
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