オメガ点
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/09/04 16:00 UTC 版)
「フランク・ティプラー」の記事における「オメガ点」の解説
1994年、ティプラーは議論を醸した本 The Physics of Immortality(不死の物理学)を出版した。それによると、ティプラーは物理学の既知の法則と矛盾しない形でコンピュータ知性によって不死性と死者の復活のための機構を提供できると主張し、これをオメガ点(英語版)と名づけ、神と同じとした。この主張の元となる考え方は、知的な種の発展によって科学の進歩が指数関数的に加速され、最終的には可能な限り大きなスケールで宇宙を制御可能になるだろうということである。ティプラーは、そのプロセスが全能の知性によって最高点に達するだろうと予測する。その知性の計算速度とストレージの成長は指数関数的であり、宇宙の崩壊速度を超える。それによって「経験的時間」が無限に生じ、その宇宙の歴史にかつて存在したあらゆる知的生命体のコンピュータシミュレーションを実行できるようになる。このバーチャルリアリティのエミュレーションを指してティプラーは「死者の復活」と称している。 最近ではティプラーは、既知の物理法則の侵害を避けるにはオメガ点の存在が必須だと主張している。 ネイチャー誌上でのジョージ・エリスの書評によると、ティプラーのオメガ点に関する本は「疑似科学の傑作…科学や哲学の規範の一般的制約に制限されない豊かな想像力の産物」とされた。マイケル・シャーマーは著書 Why People Believe Weird Things(何故人々は超自然的なことを信じるのか?)で1つの章を割いてティプラーの説の欠陥を列挙した。一方オックスフォード大学の物理学教授であるデイヴィッド・ドイッチュ(1985年、量子計算のアルゴリズムを定式化した量子コンピュータ研究のパイオニア)は、ティプラーのオメガ点は物理学的には基本的に正しいと認めた。しかし1997年の著書 The Fabric of Reality でドイッチュはティプラーのオメガ点の概念を中心に据えながら、ティプラーがオメガ点を神であるとしたことは支持しなかった。だが、ドイッチュはオメガ点に近い社会では無限の計算リソースが利用可能であり(すなわち、任意の有限な時間で追加のリソースが継続的にオンラインとなる)、(死者の復活も様々な可能世界も含めて)任意の環境をエミュレート可能であることには合意したが、これは論理的には矛盾しない。 1986年のジョン・D・バロウとの共著 The Anthropic Cosmological Principle では、目的論の歴史を概観し、人類の存在が可能となるような多数の物理学的偶然があることを示し(人間原理)、宇宙の終焉を考察している。これはオメガ点理論を記述した最初の著書であった。 2007年の著書 The Physics of Christianity は、オメガ点理論とキリスト教神学との整合性を分析している。同書でティプラーはオメガ点をユダヤ教・キリスト教的神であるとし、特にキリスト教神学の教義と一致しているとした。また、新約聖書に描かれたイエス・キリストが行ったとされる奇跡が、我々がシミュレーテッドリアリティの中にまだ入っていないとしても、既知の物理法則に違反せずに行える可能性を分析した(シミュレーテッドリアリティの中にいるなら、奇跡は容易に起こせる)。ティプラーはインテリジェント・デザインの支持者である。 ここ数年、ティプラーは神学者ヴォルフハルト・パネンベルク(Wolfhart Pannenberg)と有意義な議論を行ってきた。 「シミュレーション仮説#フランク・ティプラーのオメガポイント」も参照
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