《おられる》の敬語
「おられる」の敬語表現
「おられる」は、それ自体が「いる(居る)」の尊敬語としての表現です。「いる」を改まった表現にすると「おる(居る)」になり、そこに尊敬を意味する助動詞「れる」をつけることで、「いる」対象を敬う表現となります。しかし、平成16年度に文化庁が行った「国語に関する世論調査」では、全体の30.3%の人が「おられる」を尊敬語として使用することに違和感を覚えると回答しました。日本人のおよそ3人に1人が「おられる」という表現に違和感を覚える計算になりますから、どうしても気になるならば他の表現に言い換えを試みても良いでしょう。言い換え表現については後述します。「おられる」の敬語の最上級の表現
敬語には、通常の敬語の他に天皇や皇族、外国の王族などの特に身分の高い人物に対して使用される「最高敬語」というものがあります。「おられる」は「いる」の敬語ですが、「いる」には「おはします」および「あらせられる」という最高敬語が存在するため、これが最上級の敬語となるでしょう。なお、日本の古文書の中で「おはします」「あらせられる」が登場する際に、主語が省略されるケースがあります。これは、最高敬語が持つ性質上、主語が明らかに天皇などの身分が高い人物であることが明らかであり、主語をわざわざ記述する必要性がないためです。「おられる」の敬語のビジネスメール・手紙での例文
「おられる」の敬語表現をビジネスメールで使用する場面としては、主に先方の在籍を確認したり、アポイントメントを取ったりするケースが想定されます。例えば、「この件について当時の担当者の方にご相談させていただきたいのですが、現在は御社におられますでしょうか」といった表現になるでしょう。また、「先程貴社にお電話しましたが、現在出張中で社内におられないとのことでしたのでメールにて失礼致します」と言った形で、本来は電話をするところを、相手がいなかったことを理由にメールを出す際にも使うことがあります。「おられる」を上司に伝える際の敬語表現
上司との会話の中で「おられる」を使う際には、上司の予定を聞く際に使うことになるでしょう。「明日は支社の方におられるのでしょうか」といったように、所在地の確認を取る形で使用します。また、「明日のこの時間帯は社内におられるということでよろしいでしょうか」など、上司がいる時間帯を聞いたり、確認を取ったりする際にも使用することが可能です。上司との会話の中で、取引先の特定の人物を話題にする際にも使用できます。「先方の〇〇主任には昔お世話になったのだが、まだ社におられるのだろうか」「○○さんでしたらおられますよ。先週のセミナーの際にお会いしました。名刺もいただきまして」といった形で、取引先の人を話題に出す場合は当人がその場にいなくとも敬語での表現を使うようにしましょう。
「おられる」の敬語での誤用表現・注意事項
一説によれば、「おられる」という語の解釈は、地域によって別れているようです。関西地方では「おる(居る)」は一般動詞のため、尊敬語の「~れる」をつけた「おられる」という語形変化は自然なものであると考える人が多い傾向にあります。実際、西日本では「いる」の代わりに「おる」が使われる地域もあり、方言という形ではあるものの一般動詞という認識が強いと言えるでしょう。一方関東地方では「おる(居る)」は「いる」の謙譲語であるから、尊敬語の「~れる」がつく語形変化は不自然となるという解釈をする人が少なくないとのことです。なお、多くの辞書では「おられる」は尊敬語として紹介しています。また、NHKでは「おられる」という尊敬語に違和感がある人が多いことを考慮し、通常の放送では可能な限り別の表現に言い換えを行っているようです。このように、「おられる」という表現は敬語として間違ってはいませんが、解釈に個人差や地域差があることを踏まえて、別の表現への言い換えを行うようにした方が好ましいでしょう。
「おられる」の敬語での言い換え表現
「おられる」の言い換え表現としては、同じく「いる」の尊敬語表現である「いらっしゃる」がまず挙げられるでしょう。「○○さんはおられますか」という表現を「いらっしゃる」で言い換えた場合、「○○さんはいらっしゃいますか」という形になります。同じく「いる」の尊敬語表現には「おいでになる」があり、こちらも「○○さんはおいでになられますか」といったように「おられる」を置き変える形で使用することが可能です。ただし、「あの人はこう言っている」のように、その場にいない人の行動について言及する表現を敬語にした場合は、「いらっしゃる」「おいでになる」を使用することで回りくどい印象を与えてしまう恐れがあります。その際には、「あの人はこうおっしゃっておられる」といった形で「おられる」を使用するほうが好ましいでしょう。
特定の場所にいる場合に限って使用できる表現もあります。代表的なものを挙げると、家にいることを示す「ご在宅」という表現が挙げられるでしょう。「○○さんは家におられますか」は、「○○さんはご在宅でしょうか」という形に言い換えることが可能です。このように「おられる」には様々な言い換え表現があるため、ケースに応じて最適な表現を選択するようにしましょう。
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