《おります》の敬語
「おります」の敬語表現
「おります」は、この言葉そのもので敬語表現として成り立っています。「おります」は、「いる」という言葉の丁重語です。丁重語とは何か、の説明の前に、まずは敬語の種類について説明をしていきます。敬語は、丁寧語、尊敬語、謙譲語の3種類に分けられるという考え方が一般的です。敬語をよりこまかく区分すると、丁寧語、尊敬語、謙譲語1、謙譲語2、美化語の5種類に分けられるという考え方もあります。丁重語とは、謙譲語2のことを指します。謙譲語1は、本来の謙譲語と同じ使われ方です。自分に対してへりくだった表現を使うことによって行為の受け手側である相手を高め、敬意を表します。謙譲語2(丁重語)も同じように、自分側に対してへりくだった表現を使いますが、この場合は「聞き手」を高めるために自分側をへりくだっています。例えば、課長と社長が話をしているとします。課長が社長に、「私から部下に申し伝えました。」と言ったとすると、違和感を感じる人もいるでしょう。部下に対して「申し伝える」という敬語表現を使うのは間違いなのでは?と思われるかもしれませんが、この場合の「申し伝える」は部下に敬意を表している敬語表現ではなく、聞き手である部長に対して敬意を表している表現です。
謙譲語1と謙譲語2の明確な区分は難しく、総じて「謙譲語」とする考え方が広く受け入れられていますので、もし分かりくい場合は、謙譲語1も謙譲語2もどちらも自分側に対してへりくだる表現を使うということだけは覚えておきましょう。
「いる」は漢字で「居る」と書き、人がそこに存在しているという意味です。「いる」は、「おります」の他に「いらっしゃる」という尊敬語もあります。
「おります」の敬語の最上級の表現
「おります」の最上級の敬語表現についてですが、「おります」はそれそのもので敬語として成り立っており、この言葉以上の敬語表現はありません。「おります」は、「いる」の丁重語であり、前述の通り「いる」はほかに「いらっしゃる」という尊敬語もあります。丁重語は自分側に対してへりくだった表現を使って相手を高めるのに対し、尊敬語は相手を高める表現をして敬意を表します。謙譲語と尊敬語は、「いる」の主語となる人物が違うだけであって、どちらも同じように敬意を表すことができます。相手によって適切に使い分けましょう。「おります」の敬語のビジネスメール・手紙での例文
取引先とのビジネスメールの例文をご紹介します。「株式会社〇〇
法務部〇〇様
いつも大変お世話になっております。
株式会社〇〇の〇〇(氏名)です。
メールを拝見しました。
契約書をバイク便にて送ってくださったとのこと、ありがとうございます。
本日は終日本社におりますので、届き次第すぐに確認できると思います。
詳細につきましては改めてご連絡いたします。
引き続き何卒よろしくお願い申し上げます。
署名」
続いては、取引先宛の手紙の例文をご紹介します。
「株式会社〇〇
総務部〇〇様
拝啓
盛夏の候、貴社におかれましてはますますご清祥のこととお慶び申し上げます。
平素は格別のご高配を賜り誠にありがとうございます。
さて、アップデートが完了した製品をご返却いたします。
私は当面の間、工場のほうにおりますので、また何かございましたら遠慮なくお問合せください。
今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。
暑さ厳しき折、くれぐれもご自愛くださいませ。
署名」
「おります」を上司に伝える際の敬語表現
「おります」を上司に伝える際の例文をみていきます。例えば、上司から「昨日の雷雨はすごかったね。電車も止まった区間があったようだ。〇〇社からの帰りは大丈夫だったの?」と話しかけられた場合に、「お気遣いありがとうございます。駅は人があふれて中に入れなかったので、しばらく近くの喫茶店におりました。」などと返答することができます。「おります」の元の形は、「いる」です。上司がどこかにいるということを敬語表現で伝える際の例文もご紹介します。取引先の人から上司宛(仮名を佐藤とします)に電話があった際、「申し訳ございませんがあいにく佐藤は不在にしております。本日は終日、福岡支店におります。」のように表現することができます。取引先など外部の人に社内の上司の話をする場合は、自分側の人(身内の人)という扱いで謙譲語を使います。名前も、敬称などは付けません。上司は目上の人だからと丁寧に表現しようとして、「申し訳ございませんがあいにく佐藤部長はご不在でございます。本日は終日、福岡支店にいらっしゃいます。」としてしまうのは間違いですので、気をつけてください。
「おります」の敬語での誤用表現・注意事項
「おります」と似た言葉で「おられる」という言葉を聞いたことがある人がいるかもしれません。「おられる」も、「いる」の敬語表現であり、間違いではありません。「いる」は漢字で「居る」と書き、「居る」はほかに「おる」とも読みます。「おられる」は「おる」の尊敬語です。「部長はすでに会場におられます。」などのように使うことができます。ただ、「おられる」という言葉は現代ではあまり使われることがありません。「おられる」は西日本の人に多く使われている表現です。西日本の地域には、「〇〇ちゃんは公園におったでー!」などのように「いる」ことを「おる」と言う方言があります。「おります」は文法的には正しい敬語表現であっても、丁寧というよりは方言のように感じてしまう人もいます。また現代に不似合いな時代錯誤な感じを受けるということもあり、「おられる」よりも「おります」を使った方が良いでしょう。「おります」の敬語での言い換え表現
「おります」は、「ご在宅」と言い換えることができます。「在宅ワーク」という言葉もあるように、「在宅」は「家にいる」という意味です。「先生はご在宅ですか?」のように敬語表現できます。「おります」は、人がそこに存在している場合に使いますが、人以外の物がある場合には「ございます」となります。「在庫は充分にございます」や「質問はございますか?」などのように使うことができます。- 《おります》の敬語のページへのリンク